第275話残された時間

スミスは余った果実を見つめてブツブツと何かを呟いている。


「あの…スミスさんは大丈夫ですか?」


ローズがこちらに関心が無くなったスミスを見つめると


「ああなると中々帰ってこないから放っておこう」


気にするなと言われると


「それより…ローズ足は本当に治ったのか?」


ロイが聞くと


「はい、痛みも全然無いし…ちょっと立ってみますね」


ローズは椅子から立ち上がると


「ほら!」


両足で立ってみせる。


「やっぱり大丈夫です!片足でも立てるかも!」


怪我をしていた方の足で立つと…


「あっ!」


使っていなかったせいかバランスを崩して倒れそうになると…


「ローズ!」


カイルがまっさきにローズを支えた。


「大丈夫か!?」


カイルが心配してローズの顔を覗き込むと…すぐ間近で驚くローズの顔があった。


「は、はい…」


ローズはカイルの腕に手を掛けさせて貰い立ち上がると…


「ありがとう…ございます」


サッとカイルから手を離そうとすると…


ガシッ…カイルが思わずその手を掴んで止めた。


「あ、あの…」


ローズはカイルを見ると


「これだから目が離せない…」


カイルはじっとローズの瞳を見つめた…


「おっほん…さてローズ嬢は足はすっかりと治ったようだね。ただ筋力がまだ戻って無いようだから無理はしないように」


レインが咳払いをしてローズに話しかけると


「は、はい。貴重な実を本当にありがとうございました」


ローズはサッとカイルから離れてレイン陛下に頭を下げる。


「いや…怪我の落ち度はこちらにあるからね。この検証はどちらにとってもいい結果となった」


レインが笑うと


「若いお嬢さんを被験者にしてしまい申し訳無かったね」


「いえ!無事治りましたし…問題ないです」


ローズが笑うとほっとして後ろに立つチャートと目を合わせた。


チャートは複雑そうな顔をしていると…


「じゃあこれでローズが王都ここにいる意味はなくなったな」


チャートが答えると


「「えっ…」」


ローズとカイルが同時に反応する。


「それですが…まだ婚約者候補の最後の審査が終わってないんですよ。出来ればローズには最後まで付き合って貰いたいんだが…」


ロイが困った顔でローズを見ると


「まだキャリー嬢とのデートが終わってないんだ…彼女の為にもローズにはもう少しいて欲しいんだが…」


ロイが聞くと


「キャリーが…」


ローズが少し考えると…


「私がいて…役に立つでしょうか?」


「そりゃ君らは親友だろ?キャリーの悩みを聞けるのはローズだけじゃないのか?」


「キャリーの役に立てるなら…」


ローズはこくっと頷くと


「ローズ?」


チャートが驚いて顔を覗き込むと


「お父さんごめんなさい…もう少しだけ」


ローズがチャートを伺うように見ると


「チャートだってもう少し王都に居られるんだろ?」


レイン国王がチャートに確認すると


「まぁ…そうだが…」


「よし!ならもう少し王都にいてもらおうかな」


レインが嬉しそうにチャートの肩を叩いた。

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