第248話ウィルモット家
「どういう事でしょう!母上はローズのご両親の事を知っているのですか?」
ロイが問いただすと
「知ってるも何も私はそこのローズさんのお母様のクラウディアと親友だったんだもの」
「え!母と?」
ローズも初耳だったのか驚いている。
「ええ、じゃあチャートくんを待つ間に少しだけ昔話を…」
「おい、やめた方が良くないか?」
レインが止めると
「大丈夫よ、二人の恥ずかし話はしないから…」
ラーラはにっこりと笑う。
「まぁ簡単に言うとチャートくんがクラウディアに一目惚れしちゃったのよね、でもその時クラウディアはローズさんの様にタウンゼントの貧乏な令嬢で王都には勉強に出てきていたのそこで私と会って意気投合。それ以来の親友よ」
ラーラは愛おしそうにローズとクリスを見つめる。
「あなた達が生まれた時もこっそりと会いに行ったのよ」
「全然知りませんでした…」
「まぁバレないようにしていましたから…でもクラウディアが病に倒れて…私も駆けつけたかったのだけど止められて…ごめんなさいね」
ラーラは悲しそうに笑った。
「あなたの剣舞を見た時は胸が躍ったわ、まるでクラウディアが踊ってるみたいで…彼女の踊りを見てチャートくんは一目惚れしたのだから」
「そうなのですか…」
確かに父の前で舞うと嬉しそうにしていたなぁ…ローズは父の顔を思い出す。
「でもチャートくんはウィルモット侯爵家の長男でクラウディアはタウンゼント男爵家の長女…クラウディアもチャートくんの事が好きだったけど周りは認めてくれなかったの」
「あの時のチャートは凄かったからな、部隊兵の隊長を若くして務め彼のおかげで戦争も領土を奪われずにすんだものだ」
「あの父が…」
クリスは顔を曇らせる、聞けば聞くほど父のイメージとは合わなかった。
父は家では何も出来ずに姉さんや僕に怒られていてそれを嬉しそうにニコニコと笑っている人だった…でも確かに戦うとなると頼りになる人でもあったが…
「それで国から褒美を貰うことになったんだけど…チャートくん何を貰ったと思う?」
「まぁクラウディア様…ローズの母上をですか?」
「それがクラウディアはタウンゼントを出る気はないからって断っていたのよ…そしたらウィルモット家を出てタウンゼント男爵を名乗らせてくれって…あの時のみんなの顔…今思い出しても笑えるわ」
くすくすとお腹を抱えて目に涙を浮かべる。
「もちろんウィルモット侯爵はお怒りで…他の大臣や国の者達からは絶対に了承出来ないと大反対だった」
「ええ、でもその時に国王だったフリード様の鶴の一声で無事チャートくんはタウンゼント男爵になれたのよ。そしてその時の恩を感じてずっとあの領土を守ってくれているの」
「そうだったんですか…知らなかった」
ローズとクリスは顔を見合わせる。
「そのチャートくんが久しぶりに向こうから声をかけて来たのよね、余程あなた達が心配だったのね」
ラーラがローズとクリスを見ると
「彼がここに向かっているなら大丈夫、何も取りこぼす事なんてないわ」
ラーラとレインが頷き合うと…
「えっちょっと待ってください…チャート・ウィルモット…ってあのチャート・ウィルモットですか!?戦火の中でスチュアートさんと同じく敵を殲滅した!」
「私は彼の半分ほどしか倒しておりませんよ…さすがに彼ほど若くなかったですからね」
スチュアートさんが苦笑すると
「ローズ…お前の父親…とんでもないな…」
ロイとカイルが恐ろしげに見つめる。
「ええ?そうですか?父は下着も洗えない人なんですけどねぇ…」
「やめてくれ!チャート様のそんな姿を想像したくない!」
カイルが耳を塞ぐ。
「チャート様って…」
ローズが呆れると
「軍人や武を志す者に取ってチャート・ウィルモットは伝説だ!まさかまだご存命だったとは…」
「チャートくんの要望でウィルモット家の記録は抹消して欲しいって言われていたからね」
「その彼がここに来る!」
カイルはもちろん兵士達もその到着を心待ちにしていた。
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