第197話憤怒

ロイは部屋に戻ると


「クソ!」


着ていた服を床に叩きつけ怒りを露わにする。


「あの野郎!いちいち嫌味ったらしくいいやがって!絶対あの遺体は何かあるに決まってる!」


ロイが怒鳴ると


「落ち着け、ロイらしくもない。あんなやつの挑発にのるな」


カイルがロイが脱ぎ捨てた服を拾うとサッと片付けた。


「せっかくのデートは邪魔されるし、斥候は見つからねぇし最悪だ!」


ロイはバフンッ!とベッドに倒れ込んだ!


「そういやローズとはどうだったんだ?」


カイルはロイの機嫌を戻そうと話を逸らして、ローズとの事を聞く…自分も少しばかり気になっていた。


「まぁ…なんだ…いつも通りだった」


ロイが素っ気なく答えた。


「そりゃ上手く交わされたって事か?」


クスリと笑われる。誰でもないカイルに笑われた事に腹を立てて言い返す。


「じゃあお前なら上手く出来たのかよ!」


「…いや…自信はない」


「だろ?ローズって本当に俺の事を雇用主としてしか見てない感じなんだよな…」


ロイが腕を組んで悩むと


「まずはそこの壁を壊すところからかな…」


「でも王宮にいる限りローズは仕事だって割り切ってる感じだよな」


「確かに…」


「この騒ぎに片がついたらどっか遠くにでも誘ってみるかな」


カイルがそんな日を思い浮かべて微笑むと…


それを見ていたロイが笑いながらカイルの思考を読んで答えた。


「なんでカイル様と行く必要が?…なーんて言われるのがオチだろ」


「そうだな…」


ロイを励ますはずが自分がガックリと肩を落としてしまった…


トントン…


すると部屋にノック音が響く…


カイルが出てみるとそこにはバルトを肩に乗せたスチュアートさんがいた…


「少しよろしいですか?」


スチュアートはにっこりと笑って二人を見つめていた。


二人は頷くとスチュアートを部屋に招き入れる。


「まずは今日はお疲れ様でございました。先程ローズ様から少しお話を聞きましたよ」


スチュアートの言葉にロイは気まずそうにすると…


「なんだろ…つまんなかったとかですかね?ろくな事出来ませんでしたから…」


途中で放り投げてしまった事を考えていると…


「いえ、とてものんびりとした時間で楽しかったと言っておりましたよ。もう少しお茶を楽しみたかったと…」


「本当か!?」


思わぬ答えにロイがスチュアートに詰め寄る。


「近い!」


バルトがシッ!と手を払う。


「それとこれを…お疲れのお二人の為にと調合したお茶でございます。僭越ながら私が入れさせて貰いますね」


スチュアートは笑ってお茶の準備を始めた。


お茶を待ちながらロイとカイルがスチュアートに話しかける。


「そういえばスチュアートは何処に言っていたんだ?会議の場にいなかったよな」


「私は…少し頼まれ事がありまして、バルトさんとちょっと…」


言葉を濁す。


二人の前にお茶を差し出すと…


「先程国王から聞きました、明日はデートの続きだそうですね?」


「はい…」


スチュアートさんの言葉に上がってきた気持ちが一気に下がる。


「それも大切なお勤めです、頑張って下さい」


「それって…誰の言葉ですか…」


ロイがローズが言いそうな言葉にスチュアートを見つめると、スチュアートは何も答えずにニヤッと笑った。

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