第152話クリス

見習いと言った子が書き写した書類をスピアは確認すると


「間違いは無いね…字も綺麗だし、うん問題無い。このまま続けてくれるかい?」


「はい!」


クリスが続きをしようと書類を受け取ると


「ちょっと俺にも見せてくれ」


他の仕事をしていた人達が見たいと群がってくる。


「おお!本当に暗記してるよ…凄いな」


「なんか…字もスピアさんの筆跡に似てませんか?」


「父の手伝いで書類を書くことはしていたので…」


クリスは恥ずかしそうに頭をかくと


「ほらほら、確認はそれくらいにして作業に戻ってくれ」


スピアさんがみんなを散らせるとクリスも席に戻る。


スピアさんの了承ももらいクリスは次から次へと書類を書き写していると


「使えそうな子が来ましたね」


スピアの隣に座る男が笑って声を落として話しかけてくる。


「まだわからないがあの暗記力は凄いね、しかも若いし…どこの子だったかな?」


書類を確認すると


「クリス・タウンゼント…タウンゼント男爵のご子息かぁ…タウンゼント!」


いきなり大声で名前を呼ばれてクリスが顔をあげてスピアを見ると


「はい、なんでしょうか?」


立ち上がりそばに行こうとすると


「あ、ああ大丈夫!そのまま続けてくれ」


スピアはクリスを座らせ直す…


「タウンゼント…って他にもいたかな?まさか姉弟…」


ボソボソと呟きながらチラッチラッとクリスを見つめていると


クリスがスクッと立ち上がりスタスタとスピアの元にくる。


「あの…スピアさん、もしかしてローズ・タウンゼントをご存知ですか?」


「えっ!あっ!やっぱりそうなの?」


スピアがびっくりして思わず指をさしながら…


「あれ?…声聞こえてた?」


スピアが口を抑えると


「すみません…僕耳がいいもので…」


「そ、そうなんだ…」


スピアが唖然としていると


「スピアさんは姉さんの事ご存知なのですか?僕…王都に来たのも姉さんに会えるかと思いまして…」


「いや、私も会ったことはないんだが話は聞いた事があるよ。その書面の内容も君の姉君の考えだと聞いているよ」


「えっ!これが?」


クリスは書面をみつめて驚いていると


「姉に会う事は可能でしょうか?」


「それは…姉弟だし問題ないと思うけど…その前にこの仕事終わらせるの手伝って欲しいな」


積まれたまっさらな紙を見せられる…これ全て写すのだと言われると


「わかりました!」


クリスはガバッと白紙の紙を大量に掴むと机に向かう…


「ど、どうしたの?」


スピアが心配そうに声をかけると


「少し筆跡の質は落ちますがスピードを重視して書き写します!」


先ほどの倍の速さで仕上げてると書類を見せる。


「文字は確かに私の筆跡じゃないけど十分綺麗だから問題無いね」


クリスはほっとすると書類を書き写すことに集中した!

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