貧乏領主の娘は王都でみんなを幸せにします

第118話虚言

ローズはジュリアからの鈍い攻撃にヒラっと身を翻して避けると、ジュリアは対象物を無くして派手に転んでしまった。

「きゃあ！」

ガターン！とそばにあった置物を倒すと大きな音に人が集まってくる。

「何事だ！？」

カイルも音を聞きつけ兵士を引き連れてやってきた。

ローズと床に飛び散った置物の残骸と転んでいるジュリアを見ると…

「ローズ…何があったんだ？」

心配そうにローズに駆け寄ろうとする。

その様子にジュリアはムッとすると

「痛ぁ～い！」

ジュリアがわざと大声で足を抑えている。

カイルは痛い痛いと身を捩るジュリアを見ると…

「大丈夫ですか？」

仕方なく声をかけた…するとジュリアは

「カイル様！私立ち上がれません…どうか手を貸して下さい」

ウルっと目をうるませてカイルを上目遣いに見上げる。

カイルはゾクッと背筋が寒くなる…逃げ出したくなるが無下にも出来ずにぐっと気持ちを抑え、手を差し出してジュリアを抱き起こした。

するとジュリアはバランスを崩してカイルに抱きついた！

「ご、ごめんなさい…足が痛くて立っていられなくて…」

ジュリアがギュッとカイルの服を握りしめると

「では、家の者に変わりましょう」

カイルはサッと離れようと従者を見ると

「いえ…私ではお嬢様を落としてしまうかも知れません…どうかそのままお嬢様を運んで頂けませんか？」

従者が申し訳なさそうにカイルに頼み込む。

「いや…私は…」

カイルがちらっとローズを見る。

ローズはジュリアを抱きしめているカイルから思わず目をそらすと…

「では、私はこれで…」

なんだか見ていたくなくてローズはその場から逃げ出した。

「ローズ！」

カイルが呼び止めようとすると…

「痛っ！」

動いた拍子にジュリアが声をあげた。

抱きついてくるジュリアのおかげでカイルはその場から動けずにローズが見えなくなるまでその背中を追っていた…

ローズの姿が見えなくなると…

「仕方ない…おいリプス！ジュリア嬢を医務室まで運んで差し上げろ」

カイルは衛兵の一人に声をかけると

「はい！」

衛兵のリプスがカイル達に近づこうとすると…

するとキッとジュリアがリプスを鋭い目付きで睨みつけた…

「えっ…」

リプスは思わず立ち止まると…

「カイル様…私他の殿方に触られたくありません…どうかこのままカイル様に運んでいただけないでしょうか？」

ジュリアは潤ませた瞳から一粒涙を流すと…

「カイル…様」

リプスが気まずそうに後ろに下がってしまう…カイルは、ため息をつくと仕方がないとジュリアを抱き上げた。

「では急いで運びますから」

カイルが医務室に向かおうとすると

「はい！」

ジュリアはギュッとカイルに抱きついた。