現役JKアイドルさんは暇人の俺に興味があるらしい。【書籍化】
星野星野@2作品書籍化作業中!
第1話 JKアイドルさんはゲームセンターに興味があるらしい。01
【オーバーラップWEB小説大賞銀賞受賞し、書籍化が決定しました】
【書籍版はキャラの設定や話の内容が大幅に加筆・変更されていますので、お楽しみに】
イラスト担当は、人気イラストレーターの
『千種みのり』先生です!
——————
彼女は輝いていた。
現役JKアイドル、"ラズベリーホイップ"の桜咲菜子。
歌って踊って、可愛らしく微笑む彼女に誰もが引き込まれていた。
そんな、みんなのアイドル桜咲菜子と俺は、果たして一緒にいていいのだろうか。
一緒にゲーセン行ったり、飯食ったりするのが、俺でいいのだろうか……。
俺の人生は、彼女の輝きによって全く違うものになっていった。
それも全て、彼女と出逢ったあの職員室での出来事から始まったのだ。
✳︎✳︎
「おい閑原、なんだこのふざけた点数は?」
高校入学からまだ1ヵ月だというのに、俺、
原因は定期テストで解答用紙に名前を記入し忘れて、1教科0点になったことだった。
担任は名前の書き忘れという事情を知らず、数字だけ見て「俺が0点を取った」と腹を立てたらしく、昼休みに校内放送で呼び出してきやがった。
「お前はもう高校生だぞ? 義務教育が終わり、自主性が求められるっていうのに。部活は入らないし、勉強はこの点数。ったく、先が思いやられる」
なんと理不尽なのだろうか。
俺はあまり強く言える人間ではないので先生の説教に対し、なんとなく頷いてスルーしていた。
あぁ、早く昼メシ食いたい。
「おい、聞いてるのか閑原!」
先生の怒号が職員室に響き渡った、その時だった。
「先生、頼まれてたノート回収して持ってきました」
突然、横槍を入れるように透明感のある声が聞こえる。
その声の主が近づいてくるやいなや、むさ苦しい担任の臭いが爽やかな香水の香りに浄化される。
このオーラは。
「あぁ、わざわざありがとうな桜咲」
「いえいえ、日直なんで」
担任にノートの山を渡す1人の女子生徒。
彼女は同じクラスの
現役JKアイドルとして絶大な人気を博しており、一番の特徴はその愛らしい性格とキャラクター、そしてそれとは反対に華奢な体から繰り広げられるキレのあるダンスパフォーマンス。
そのギャップが多くのオタクの心を射抜き、現在彼女は自分のグループ内でトップの人気があるとか。(ネット情報サイトからの引用)
「じゃあ、失礼しまーす」
桜咲はそう言って踵を返した。
小さな体の内に秘められた絶対的オーラを間近で感じた。
俺の生きてる世界とは次元が違うのではないかと思うくらい、圧倒されてしまった。
「おい、閑原。お前も桜咲くらい活動的になれ」
「……はい」
活動的……ねぇ。
あんな次元の違う人を引き合いに出さないでいただきたい。
一頻り怒鳴られた後、先生の説教は終わった。
俺はぐったり肩を落としながら職員室を出る。
さっさと購買に寄ってパン買ってから戻る……か、な?
職員室の引き戸を開けた途端、さっきも香っていた、爽やかな香水が再び鼻腔を擽る。
この匂い……桜咲の。
「やっと、出てきた」
引き戸の隣にある、掲示板に背を預ける桜咲の姿がそこにあった。
肩まで垂れ下がったサイドテールをクルクルと弄りながら、その真っ直ぐな瞳でこちらを見つめてくる。
「桜咲……さん?」
「君ってさ、もしかして暇人?」
「……突然なんですか」
「暇人でしょ?」
「まぁ部活も入ってないですし、学校外活動もしていないので暇人ですけど」
なんだ? 暇人の俺を嘲笑いにでも来たのか?
「昨日の夕方、駅前のゲーセンにいたよね?」
「昨日……あぁ」
確かに、昨日の放課後は暇つぶしに駅前のゲーセンに寄ったのだった。
しかし、何故それを彼女は知っているのか。
「ゲーセン、楽しかった?」
「いや、暇つぶしのために寄っただけだからなんとも」
「ふーん。じゃあ、質問を変えるけど、ゲーセンってわたしでも楽しめるかな?」
「……まぁ、娯楽施設なんだから何かしら楽しめるものはあるかと」
「例えば?」
おいおい、質問責めかよ。
そもそもなんでそんなどうでもいいこと聞いてくるのかを俺は問いたいのだが。
「ねぇっ! 例えばー?」
ったく、可愛い顔して面倒な女だな。
「そんなに興味があるなら自分で行ってみればいいと思いますけど?」
「あ、そっか、じゃあ今日にでも行こうかなぁ」
はい解決。さっさとパン買いに行かないと売り切れ、
「よし。君って暇人なんでしょ? 放課後一緒に行こうよ」
「は?」
なんでそうなる?
「聞こえなかった? 放課後一緒にゲーセン」
「いや、行かないですけど」
「えぇ? 何か用事あるの?」
「……いや、ないですけど」
「なら一緒に行こ?」
……面倒だ、無視しよう。
早くしないと購買のパンが、
「今から購買?」
俺は小さく首を縦に振った。
「じゃあ、わたしが奢ってあげるから放課後一緒に……」
「あの、俺急ぐんで」
俺は早歩きで彼女を振り切る。
面倒ごとに巻き込まれるの困る。
正直、俺自身は彼女に興味が無い。
「ちょ、待ってよ!」
✳︎✳︎
学食の一番奥の席で俺はなんとか買えたパンを食す。
なんとなく昨日から始めたソシャゲを開く。
ログインボーナスを貰ったら今度は見聞を広めるために新聞社のアプリを開いて記事を流し見した。
「へぇ、君って結構大人びてるね」
「あの、なんでここにいるんです?」
向かいの席に座っているのは先ほどから金魚の糞みたいについてくる現役JKアイドルさん。
周りの生徒はこの異様な光景に驚き、ありもしないことを囁いているようだった。
まったく、迷惑でしかない。
「わたしもさっき君が開いてたソシャゲやってるよー」
「はぁ……それで?」
「フレンドになろっ?」
「……まぁ、それくらいなら別にいいですけど」
「あと放課後一緒にゲーセン行こ?」
「流れ作業みたいに本望付け足してきたなこの人」
俺はさっきのソシャゲを再度開く。
そして、フレンドIDをお互いに交換した。
「えぇ、君まだランク3じゃん! ざっこー! ぷぷっ」
「よし、フレンド解除っと」
「あー! ごめんて」
……もうメシも済ませたし、教室戻るとするか。
七海沢(ななみさわ)に勉強手伝うって約束もしたしな。
「じゃあ、俺はこの後用があるからこれで失礼します」
「ちょ、ちょっと待ってよ」
桜咲は俺の袖を弱々しく引いた。
「放課後、やっぱりダメかな?」
「……俺みたいなクズ陰キャじゃなくて、別の人に頼めばいいじゃないですか」
「……それは」
「有名人なんですし、それで解決ですよね。じゃあ俺は先に戻るんで」
あー、なんかスッキリした。
桜咲と別れ、学食を出てすぐのところにある階段を上り、2階の教室へと向かった。
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