163bit 恋い焦がれる
「糸ちゃん! 正解! 正解だよ!!」
「これで糸の勝利が確定した」
両隣の英美里と真衣が糸の顔を覗きこみながら喜んでいる。
しかし、当の本人である糸はまだ実感が掴めておらず、オロオロとするばかりだった。
「どうして……、どうしてわかったの……」
雛乃は俯いた状態で呟いていた。
雛乃の両腕は力なく、だらんと下がっている。
「雛乃ちゃんが問題を出したとき、絶対に勝負が決まるって言ったよね。 それでもしも私が勝つとしたら、Koiちゃんは間違えているということ。 でも、Koiちゃんが間違えることなんてあるのかなって考えたら、ふと雛乃ちゃんの言葉を思い出したの。 AIは選択肢同士を比較して、最善のものを選ぶ。 それはつまり、Koiちゃんは友情か愛情かのどちらか一方しか選べないんじゃないかなと思った。 だからあえてKoiちゃんが選べないような答えにしたんだ」
糸は隠すことなく正直に話した。
「なるほどね……」
「それに、雛乃ちゃんなら友情も愛情もどっちも大切にしている。 だからこそ、どちらかだけなんて、選びきれないと思った 」
「それで何も書かれていない……か」
どうやら私は、ずっと勘違いをしていたらしい。
すべての問題において、最適解はひとつだけ。
最適解以外の答えはすべて間違い。
私はずっとそう思って生きていた。
けれど、問題によってはそうじゃないのもある。
比較できないものを無理やり比較して、どちらか一方だけを正解にしようとするのではなく、どちらも正解にしたっていい。
正解の選択肢は、ひとつだけじゃない。
最終問題を出す直前、私はやっと気づけた。
その認識に誤りがないことを、最終問題で確認してみたかっただけ。
だから、勝負はもうおしまい。
だから、Koiに
「みんな……」
雛乃はそう言いかけると、次の瞬間膝からガクッと崩れ落ちた。
「雛乃ちゃん?!」
糸が声を発し、三人は急いで雛乃の元へ駆けた。
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