123bit HORROR GAME


 「真衣ちゃんって、普段何をしているの?」


 MANIACの部屋で四人が団らんとしているとき、雛乃が真衣に尋ねた。


 「……ゲームをよくする」


 「ゲーム! 真衣ちゃん強そう! ねね、どんなゲームをするの? RPG? それともアクション系? あ、シューティングゲームとか! ゾンビをバンバン撃っていたりして」


 「……じゃあ、雛乃もゲーム、やってみる? 私、けっこう強いけど」


 「え、いいの?! やるやる! 糸っちと英美里ちゃんもやろー!」


 と言ったはいいものの……。


 「もーいーかい?」


 「もーいーよ」

 「もーいーよ」

 「もーいーよ」


 まさか、こんなにもレトロなゲームだったとは。


 いや、これってそもそもプライベートに一人でやるゲームじゃない気が……。


 まぁでも、やりたいって言っちゃったのは私の方だし……。


 しかも、隠れていいエリアが……。


 「ご注文はお決まりですか?」


 「あ、えっと、これをお願いします」


 雛乃はメニューの画像を指さした。


 「かしこまりました」


 店員が戻っていくのを確認し、雛乃は再びスマホの画面に視線を戻す。


 つい先ほど電話で送った合図によって、真衣ちゃんが私たちを捜しに行っただろう。


 しかし、さすがにそんな短時間で見つかるはずがない。


 だって、かくれんぼの範囲が『街全域』なのだから。


 というわけで、私はここでしばらくのんびりとくつろぐことにするよ。


 雛乃はきたての豆が香る空気を胸いっぱいに吸い込んだ。


 オープンしてから間もないカフェなだけあって、内装もインテリアも清潔感があり、木彫りの小動物が場の雰囲気を和ませている。


 雛乃はすっかり落ち着いてしまった。


 「あ、英美里ちゃん新しい動画あげてるじゃん」


 雛乃はえみりりの動画を観て、十分弱の時を過ごした。


 そして、動画が観終わったちょうどそのころ……あれはやってきた。


 「お待たせ致しました。 季節限定のモンブランケーキでございます」


 テーブルに置かれたスイーツに、雛乃の心は一瞬で奪われた。


 プロパティシエが作るケーキ……じゅるり。


 ではさっそく……。


 雛乃はフォークを片手に持つ。


 「いっただー……」


 ……あれ、ケーキを運んでくれた店員さんの声、どこかで聞き覚えが……。


 というか、いまだに店員さんがテーブルのそばに立っていて……。


 雛乃はおそるおそる視線をケーキから店員へと動かす。


 視線が顔に辿たどりついたとき。


 「みーつけた」


 鬼がニコリとほほ笑んだ。

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