冴えない村人の復讐譚〜【限界突破】で成長限界のない俺は、日常を壊したあいつらに復讐する〜

一葉

長い長いプロローグ

第1話 幼少期 1

「おはよう!」


 僕は、どこにでもあるような、何気ない家の中で、お母さんとお父さんに向かって声をかける。


「おはよう、カエデ。」


「おはよう。ご飯できているよ、イスに座って待っていてね。」


 すると、起きてきた僕に気づいたようで、お母さんとお父さんは、いつものように挨拶を返してくれた。


「はーい!」


 そして、僕がイスに座ると同時くらいに、お母さんが両手に料理を持ちながらこっちに向かってきて、その料理を机においた。


「「「いただきまーす!」」」


 そう言うとともに、僕は僕の前においてある朝ごはんを食べ始める。


 食べ始めて数分もしないうちに、お母さんとお父さんが話しかけてきた。


「そういえば、今日だったよな。カエデに職業やスキルが与えられる鑑定の儀。」


「そういえば、そうね。」


 子供の年齢が10歳になると、教会で鑑定の儀というものが行われる。


 その儀では、職業とスキルが1つずつ与えられて、ステータスというものが見られるようになる。


「やったー!なんの職業になるかな?僕は、やっぱり勇者がいいかな?」


「ははっ、何になるんだろうね?きっと勇者だろう!」


「ふふっ!」


「お父さんは剣士で、お母さんは回復術師だったよね?」


「おぉ!」


「そうよ。」


 そんな感じで、いつもと同じように楽しく。でも、話の内容はいつもとは違うもので笑いながら、朝ごはんを済ませた。


 楽しみだなー!


 その後に僕は、そう感じながら、もうちょっと先にある鑑定の儀で、僕が勇者になる夢を見ながら、教会に行く用意を済ませたのだった。


「おーい、カエデ。教会に行く用意を済ませたか?そろそろ行くぞー。」


「はーい。ちゃんと済ませたよ!」


 そう言いながら、家の外から聞こえたお父さんの声をたどって、僕も家の外に出る。


「わぁ、すごいね。馬って、僕は初めて見たよ。」


 外にあったのは大きな馬車だった。家が小さいからか、馬車が家と同じくらい大きいんじゃないかと感じてしまう。


「そうか、そうか。じゃあ、馬車に乗ってくれ。」


「はーい。」


 そして、馬車に乗ってそこから風景を眺める。……まぁ、場所が同じこともあってほとんど変わらないけど。


「それじゃあ、出発!」


「イェーイ!」


 その後に、馬車は出発した。


「ねぇねぇ、鑑定の儀をしたら、ステータスっていうのが見られるようになるんだよね?」


「あぁ。」


「そうね。」


「それってどんなふうに見えるの?」


「おっ、お父さんのステータスを見てみたいか?《ステータスオープン》」


「じゃあ、お母さんのステータスも見せてあげるわ。《ステータスオープン》」



名前…オリバー

性別…男性 年齢…35歳

職業…剣士

レベル…50

攻撃…89

防御…77

俊敏…62

器用…63

魔力…61

スキル…【剣術】



名前…エミリア

性別…女性 年齢…33歳

職業…回復術師

レベル…42

攻撃…58

防御…73

俊敏…57

器用…75

魔力…131

スキル…【治療】


「へぇ……!すごいね!」


「あぁ、すごいだろ?」


「いやいや、別にすごくはないでしょう。だって、これくらいが村の冒険者の平均くらいなんだから。」


「でも、これだけレベルを上げるってすこいね!」


「ありがとうね。」


 その後も、ステータスのことについて話したりしていると、教会についたようで、馬車が止まった。


「おっ、ついたようだね。いよいよだね。」


「うん!」


 僕たちは馬車から降りると、目の前にある教会の中に入っていった。


「うわぁ……!」


 教会の中には、僕と同じく10歳になった人であろう子供が、何十人と集まっていたのだった。


「……すごいなー……。」


 そして、何分か経つと、白い服を着た男の人が、教会の前に立った。


「では、早速ですが、鑑定の儀を始めます。これは、ここに来てくださった順番に鑑定を行います。並んでください。」


 そして、列に並んだ。運が良かったのか、並び順で色々となにかでもめることはなかった。


 静かに並んでいると、1番前の人が、早速鑑定の儀を終えていて、喜んでいる様子のようだった。


「《ステータスオープン》……やったー!俺の職業は魔剣士だぜ!そして、スキルは剣術と魔法の2つだ!」


「「「「おー……!」」」」


 すごいなー……。スキルが2つの人ってレアなんだよね。僕も2つもらえたりするかな?


「《ステータスオープン》……よしっ。私は神官だわ!そのおかげで治療、応急手当の2つのスキルを獲得できたわ!」


「「「「おぉ……!」」」」


 また2つのスキルを持っている人が出たのか……?2つのスキルって、10,000,000分の1の確率だったよね?


 そして、僕の番になった。


「……ふぅ。お願いします。」


「はい。」


 手を合わせて、教会の前のところにあるある大きな人形の像に向かって、手を合わせて祈る。


 きっと、いい職業になるんだ!


「……す、《ステータスオープン》」


 そこに書いてあったのは、僕の期待を簡単に裏切るような文字が書いてあった。



名前…カエデ

性別…男子 年齢…10歳

職業…村人

レベル…1

攻撃…1

防御…1

俊敏…3

器用…2

魔力…1

スキル【農業】



「なに、これ……?」



 村人、なの?



 あの……この世で1番低い能力と呼ばれた、職業……?



 僕は、何も言わず、ただ歩いてお母さんとお父さんのところへ戻った。


 お母さんとお父さんは、僕の表情から、なんの職業なのかわかったとはいかなくとも、弱い職業になってしまったことは伝わったらしく、何も言わず、馬車で静かに帰っていった。


 僕は、自分の部屋に戻ると、大きな声で泣いた。何も、変わらないんだけど、それでもなにか少し楽になると思って。


 その後、いつの間にか泣き続けて眠ってしまったようだった。










村人…………


 この世で1番ステータスの基礎能力が弱いと呼ばれている職業。【農業】【微火】【微水】【微風】【微雷】【微氷】【微光】…………などのスキルからランダムで1つ手に入る。成長限界は10レベル。



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