第60話「【タイマー】は、和解する(後編)」
「え?」
名前がない……?
「それは旧時代に風習とかそういう……」
「んなわけないでしょ。ガンネルに意識を共有するときに一度リセットしているせいかしらね。ま、どうでもいいわ。好きに呼んでちょうだい」
えー。
そんな適当な……。
「じゃぁ、ガンコ───」
「略したらぶっ殺すわよ」
あ、さーせん。
何か知らないけど、ガンネルコマンダーを略したらエラク怒られた。
「でも、呼びにくいですね、ガンネルコマンダーじゃ───あ、」
「そうね……。ん? なに、どーしたの??」
「ちょっとすみません」
ルビンはガンネルコマンダーが持たれかかっている棚に刻印されている古代文字に目を付けた。
幸いにもルビンにも読める文字だ。
「えっと……エーベルト?」
「ん?…………あぁ、武器のメーカー名よ。『エーベルト工廠』、良質の武器を作るドワーフたちの技術の結晶を集めた軍事合弁会社。見た目のごつさに限らず、宣伝も得意な会社でね。CMに出てくる女の子が可愛いのよ」
CMが何のことか知らないけど、そう一方的に言うと懐かしそうに目を細めて、棚に刻印されたエーベルトの名前を撫でるガンネルコマンダー。
何か、ルビンたちにも知れない遠い過去があるのだろう。
「…………いいわ。エーベルトで結構よ。エリカ・エーベルト。「エリカ」の名前の由来はこの武器のCMソング「エーリカ♪」から、どう可愛いかしら?」
そう言って、棚から取り出したゴッツイ武器を手にニコリと笑う。
どこからともなく、件のCMソングとやらが流れてきそうな気がした。
エーーーリカ♪
エーーーリカ♪
そうして、ガンネルコマンダー改め、「アタシの名前は、エリカ・エーベルト」と改めてルビンに名乗るのだった。
いや、可愛いっていうか───。
「……可愛いかしら?」
二回目。
「…………え?」
「…………へ?」
この人は何を言っているのだろう?
「───可・愛・い・か・し・ら・ん?」
三回目。
「あ」
「う」
ニッコリ。
「───可・愛・い、」
「……………………あ、はい」
「……………………あ、うん」
何だろう凄い圧を感じて取りあえずコクコク頷く。
ルビンとレイナは返答に困って曖昧に笑って誤魔化す。
「あはは。ありがとう。それでは改めまして、エリカ・エーベルトと申します。以後お見知りおきを───
そう言ってルビンの手を取るエリカ。
「─────────は?」
「え?」
「え?」
レイナとエリカが首を傾げる。
レイナは意味が分からず。
エリカも意味が分からず。
「今、なんか変なこと言いませんでした?」
ルビンが一番意味が分かっていない。
「………………私の主ですよね?」
「…………だれが? 誰の?」
エリカは不思議そうに自分を指さし、その指をルビンに向ける。
アナタは私、私はアナタ───。
「え?」
「え?」
「え?」
コノヒトハナニヲイッテルンダロウカ??
…………。
「「「ええええええええええ?!」」」
驚愕するルビンとレイナ。
そして、エリナ──────って、なんでやねん!!
何でお前が驚いとんねん?!
「あんた、何言ってんの? バカなの、死ぬの?!」
「は? え? バカじゃないし、死なないけど?!」
いーや、バカだ。
まごうこと無きバカだ。
死なないのは事実かもしんないけど、バカだ!!
「絶対バカでしょ? あんた、さっき俺に顔面に大穴開けられたんだぞ? そして、俺も体中に穴を!!」
「穴、穴いわないでよ、いやらしい」
「え? お兄さん、エッチなの?」
エリカが厭らしいとばかりに体を抱えてルビンをジト目で睨む。
そんでもって、何故かレイナまでルビンをジト目……。
「いや、なんでやねん!! なんでそんな目で見られなあかんねん!?」
つーか、レイナちゃんは空気読め!!
そんで、エリカ。
「ばーか。お前バーカ」
「んな!?───この超絶美女に向かってなんて口を! もう、時空魔法について教えてあげまないわよ?!」
「あ。そー言うこと言うんだ? あーそう。へーそう」
いいよ?
別にいいよ?
「どうせ大したこと知らないんでしょ? 何年前の知識だか~」
へへーん。
と、ルビンはエリナをおちょくるようにしてさっさと部屋を後にしようとする。
もういいや、ここ。
調査終了。
ギルドには残念な女が一人眠っていたと言っておこう。
そして、再封印。
そして、二度と開けない─────────ガシィ!!
「待って、ちょっと待ってぇぇええ!!」
ガバチョと腰に抱き着かれるルビン。
この人、エリカは女性なのに、凄いパゥワーです。はい!
「ふんぎぎぎぎぎぎぎ……! 待たぬ。待たぬぞぉぉ」
「待て、待てって言ってんでしょぉぉお!」
ギリギリギリ……。
時の神殿奥地で、低レベルな攻防が続く。
レイナはそれをオロオロとして見守るばかり。
エリカのガンネルですらそれには手を出せず───……。
「あ……ど、どーも」と、目が合ったような気がしたレイナとガンネルがペコリと挨拶をしあっていたとかなんとか……。
「一緒に連れてってぇぇええええええ!!」
「……………………ほ、他を当たってくれぇ!」
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