オルデンブルク帝国vsアウグスト連邦2
「それでは三将、前へ」
次は一人だけ日本人っぽくなかったやつだ。人数合わせかと思っていたが、三将戦に出るということは違うのか?
「三将戦----はじめ!」
開始と同時に金髪が動いた。
『
詠唱破棄での身体強化、それなりにはやるようだ。ただの人数合わせじゃないってことか。
「古の大地を閉ざす氷柱よ。槍と成りて--」
相手はここまでの試合を見てきて、更に目の前の相手が身体強化を既に使っているのに、まだノロノロ詠唱して、しかも身体強化じゃないとか何を考えているのだろうか。
……ほら見ろ。詠唱なんか待たずに突っ込んでくるに決まってるじゃないか。なんで焦るんだよ。分かり切ってたことだろ……
あいつは剣士か。レウスの剣を剛の剣とすると、あいつのは柔の剣ってとこか。無駄な動きがなく、相手の急所を的確に攻撃しているようだ。レウスはその辺大ざっぱだからな。
「三将戦勝者----ギルベルト=ライアン!」
ただの人数合わせじゃないのは分かったが、今のは相手が弱すぎて、全く実力を出していなかった。今のところ未知数だな。一応見ておくか。
『
ギルベルト=ライアン
職業=剣士
魔力=96800
もう少しで10万か。前の二人ほどじゃないけど、出会った頃のエリーより高い。ただ、周りに勇者がいるならこいつもまだまだ強くなる気がする。
「それでは中堅戦をはじめる。中堅は前へ」
次は女の子か。多分周りと同い年くらいなんだろうけど、随分小さいな。150センチもないんじゃないか?
凜とした雰囲気は感じるが、あの小ささとアンマッチで不思議な感覚だ。
『
また聖属性? ちょっと気になるな。見せてもらおう。
『
藤堂 雫
職業=聖騎士
魔力=206000
なるほど、聖騎士か。初めて見る職業だが、多分盾役ってところか。……あの体格で? 確かに魔法があるから元の体格はそこまで関係ないとはいえ、見た目的にあの子が攻撃をガンガン受け止める姿に違和感しか感じないな。ていうか体が小さいせいで盾がもの凄く大きく見える。
『
さすがに相手も身体強化を使ったか。藤堂は……待ちの姿勢のようだ。タンク役だからだろうか。確かに聖属性の身体強化のタンクとかいい仕事をしそうだ。個人的にタンクをするなら地か聖属性だと思っているしな。
身体強化した後、そのまま魔法を詠唱しているようだな。回避とかのために身体強化を使って、攻撃は遠距離ってことかな?
相手が今は待ちの姿勢だから悪くはないな。ただ、そう動けば相手も当然動かざるおえなくなるだろうけどな。
『
藤堂が盾を構えたまま、悠然と歩いていく。炎の槍は盾に直撃し小規模な爆発を起こした。しかし予想通り藤堂にダメージはなく、動きは止まらない。
「くそっ!」
その後も多分得意なのであろう炎の槍を連発していたが、その全てが盾に阻まれてダメージを与えることはできていなかった。恐らく直撃しても大したダメージにはならないだろうが。
藤堂が動きを止めて、メイスを天に掲げている。何をする気だろうか。
『
瞬間--藤堂の掲げたメイスに天から光が注がれた。その光はそのままメイスに宿り、かなりの魔力が圧縮されている。
あれは、かなり痛そうだ。ただの壁役じゃなく攻撃手段もしっかり持っているか。
そしてそのままメイスを舞台へ叩きつけた。舞台をメイスが割り砕き、そのまま相手まで地割れが続いていく。
「くっ! この程度!」
敵も危険を察知して逃げようとするが、地割れが爆発して礫に吹き飛ばされた。大きな威力こそなく、退場はしていないようだな、数秒倒れているというのは致命的だ。
起きあがろうとした時には、既に藤堂がすぐ側でメイスを振り上げていた。
「ひぃ!?」
「ふん!」
そして逃げる間もなくメイスで殴打。そのまま強制退場だ。この聖騎士はなかなか厄介だな。ちゃんと壁役として機能されると攻めあぐねるかもしれない。
まぁ対抗戦は一対一だからいいが、もし別の場所で戦うことがあれば、気をつけないといけないな。
「中堅戦勝者----藤堂 雫!」
会場もしっかり盛り上がっている。決めようと思えばいつでも決められたんだろうが、俺たちに見せたかったのか? まさか勇者一行が今更スカウトなんて期待しているわけもないしな。
あの割れた舞台はどうするんだろ……ってあれも直るのか。結界すげえな。
「それでは副将、前へ」
なんだあいつゴツすぎだろ。まぁでもここじゃ体格はそんなに意味はない。相手は剣士か。
『
梔 武
職業=剣聖
魔力=192800
やっぱり転移組は全員平均的に高いな。って刀!? マジかよ。あのガタイで刀とは想像してなかった。絶対に西洋剣で押しつぶすタイプだと……
「それでは副将戦----はじめ!」
「舞え、疾く速く。その体は何より強く」
『
『
どちらも普通の身体強化だ。梔はあえて相手の詠唱を待っていたようだ。恐らく身体強化もあえて属性をつけなかったんだろう。同じ条件でいざ尋常にってか? 数値は違うけどな。
「うおお!」
斬りかかる相手に対して、梔は半身だけ身をかわした。正に紙一重で避けると、そのまま距離をとる。
どういうことだ? 確実に決められるタイミングだったが……
「何故斬らなかった?」
「あん? ガキに本気なんか出せるかよ」
なるほど。地球の感覚ならそりゃそうだろう。むしろこれまでのやつらが普通にブチのめしまくってたのが不思議だ。
「馬鹿にするな!」
「馬鹿にしちゃいねぇよ。ただの事実だろ」
「それが馬鹿にしてるっていうんだ!」
「そうか。なら少し本気で相手してやるよ」
その瞬間、梔から殺気が漏れ出した。なるほど、これは確実に
「うっ……」
相手はそれだけで動けなくなっている。まぁあれだけの殺気をぶつけられたら仕方ないだろう。いくら才能があったとしても殺気を向けられた経験なんて無いだろうからな。
「ほら見ろ。そんなんで戦えるかよ」
さっきまでの圧迫感が消え去り、相手の剣士は止まっていた呼吸を思い出したかのように再開した。
「じゃ終わらせるぜ」
梔の姿が一瞬ブレて、次の瞬間には剣士の背後に立ち、鞘に刀を収めるところだった。速いな。身体強化を使っているということも勿論だが、この男は素でも強い。
相手は何も分からずに気づいたら強制退場させられていただろうな。
「副将戦勝者----梔 武!」
これは本当に……思っていたより楽しい戦いになりそうだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます