白雷のルシウス
がおがお
幼少期編
はじめての魔術書
前世の記憶を思い出したのは三歳の頃だった。
異世界? ホントに? 魔法とかマジか。ファンタジーじゃんここ。それに俺の見た目が白髪に赤目とかアルビノかっての。一瞬自分に見とれたわ。しかも記憶継続とか主人公フラグ完璧にたってんじゃん。まぁ仲間パターンとか敵パターンもあるけどさ、まあそこは俺の動き方次第だよな。
さて、記憶を思い出したところですることといえば一つしかない。勿論魔法修得だ。日本に住む男子ならば誰しもが一度は思ったことがあるはずだ。魔法を使ってみたいと。それがすぐ手の届くところにあるのだ。我慢などできようはずもない。
幸い我が家は男爵家で小さいながらも書庫がある。記憶が戻った今すぐに行くしかないと、行きたいと考えている。しかしこの世界の本は安くない。印刷技術がなく量産できないから仕方ないのだが、だからこそ貴重で小さい子供が触ることはあまり許されていないことが多い。それは我が家も同じである。
ならばこそ忍び込むのだ。幸い三歳の体は小さく隠密には向いている。大人なら体がはみ出るであろう棚や花瓶に身を隠しながら書庫へ向かう。そしてついに書庫へたどり着いた。鍵がかかっていた。
ですよねー。貴重なんだから鍵くらいかけるわなー。不覚だ。いや、鍵がかかっているという情報を得たのだ。収穫はゼロではない。まずは鍵を探すところからやり直せばいいだけだ。
「ルシウス様? 何していらっしゃるのですか?」
ギクゥ! どうやらメイドのミーアに見つかってしまったようだ。いやしかし焦るのはまだはやい。まだ挽回できる範囲だ。
「ミーア! 僕ここに入りたいの」
必殺上目遣いだ。この年頃のかわいらしい男の子のこの攻撃力をなめてはいけない。よく読んでるラノベでも似たようなシーンを見てきたのだから間違いない。
「うっ、だ、ダメですよ。そこは当主様の書庫ですから……」
「本読みたいの。ねぇ、だめ?」
まだ諦めるのは早い。粘るのだ俺! 頑張れ俺! ちょっとだけ三歳っぽく舌っ足らずな感じを出すんだ!
「く……少しだけですよ?」
よしやったぞ。これで魔法書を探してハッピー魔法ライフを満喫する人生だ。ふははは。
「ミーア、魔法書はどこ?」
「ルシウス様はもう魔法に興味があるのですか? ルシウス様にはちょっと早いかもしれませんね」
「お願い。ミーア?」
必殺上目遣い攻撃だ。ミーアは大体この攻撃に陥落するのだ。
「はぁ……ルシウス様は本当に三歳なのでしょうか。わかりました。初級の本だけですよ。汚さないでくださいね?」
「うん! ありがとうミーア!」
こうして俺は無事に魔法書を手にすることができた。
とりあえず初級の本で勉強してまずは何でもいいから魔法を覚えるぞ。
ふむふむ、まずは体を巡る魔力を感じること、か。定番だな。それにしてもやり方も瞑想とかテンプレか。でも抜け道もあるみたいだな。上級者に魔力を流してもらうと魔力を感じやすくなるみたいだな。まぁこれは今は期待できないので瞑想をしてみよう。半年から一年程かかるらしいが、まぁなんとかなるだろ多分。
お? んー? なんか今まで感じたことがない感覚が体の中にあるな。いやでもさすがに早すぎないか?まだ数分瞑想ってか目を瞑ってただけだぞ。まぁとりあえず動かしてみるか、動かせれば多分これで当たりだろ。
「むーむー」
唸りながら魔力らしきものを動かそうとイメージしてみる。魔力、魔法の基本はイメージなのだ。教本は勿論ラノベである。
「お?」
そして意外にもその通りだったらしい。体の中をゆっくり揺蕩っていただけの魔力がスムーズに体全体を循環していくのが分かる。
「ル、ルシウス様? え? 魔力? え? 何かしてますか?」
おぅ、どうやら魔力を動かすと周りからも分かるらしい。と思って目をあけてみると俺の体が青くぼんやりと発光していた。いつから俺は発光できる不思議生命体になったのだろうか、って違う違う。これは多分あれだ。魔力を関知したことで魔力自体を視認できるようになったんじゃないだろうか。
そしてミーアも魔法を使えるので当然魔力が見える。さっきまで揺蕩っていただけの俺の魔力が突然スムーズに体を巡り始めたのが見えて驚いた、と。多分そんな感じだろう。そんなに外してはないと思う。
「ていうか字が読め……いやそんなことより! だ、旦那様ー!」
我が父上を呼びにいったようだ。ふふん、俺の才能に震えるがいい。大体ラノベだと小さい頃は魔法について隠して修行してたりするが、どうせなら早く知ってもらってちゃんとした先生でもつけてもらったほうがいいに決まっている。まぁこの世界の魔法の理解自体が間違ってる可能性もあるから鵜呑みにする気はないけどな。
◆
「ルシウス、まさかとは思うが魔力を感じられるのか?」
「この動かせるやつのことですよね」
ちょっと話し方が流暢すぎるかもしれないがいいのだ。神童とでも言われたりするだけで大したことはない。0歳で話し始めたらさすがに気味が悪いかもしれないが三歳ならセーフなのだ。
「そうか……リエル、どう思う?」
「そうですね、驚く程スムーズな魔力循環ですね。正直その辺の魔法使いにやらせてもこんなにスムーズな魔力循環はできないでしょうね」
「そんなにか……それだけの才能、今バレるのはまずそうな気がするな」
「ええ。どこぞの貴族が押し寄せてルシウスを夫にしようと画策してくるでしょうね。まだ魔力循環だけとはいえ目を疑う程ですもの」
母のリエルは魔法使い、父は剣士だ。父は正確には身体強化の魔法は使っているらしいが。そして母の魔法使いとしての腕はなかなかだと言っていた。
「なら外から教師を呼ぶのも難しいか」
「それなら私とミーアで教えましょう。それなら外に漏れる心配はありません」
「ふむ、それがいいか。しかしリエルは私と出ていることもあるだろ?」
「ええ。そのために私とミーア二人なのです」
「ミーアか。確かにミーアなら問題はないか。ミーアはいいか?」
「勿論でございます」
「そうか。なら当面は二人に頼もう。王都の魔術学園に入る頃にはかなり形になるんじゃないか?」
この日から母さんとメイドのミーアが俺の師匠となったのだった。
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