第26話 メリーさん─メリーサン─
夜中にかかってくる電話に、ドキリとさせられた人は多いだろう。
僕はここ最近ずっとそうだ。
通話ボタンを押していないのに。
スマホの電源を切っていたとしても。
電話がかかってくるのだ。
『もしもし?私メリーさん。今駅前にいるの』
最初は駅前。
『もしもし?私メリーさん。今、◯丁目のコンビニの前にいるの』
それは、電話がかかってくるたびに近づいてくる。
祖父曰く。
科学が発達すりゃあ、それに合わせた怪異が発生するもんよ。
電話ができりゃあ、電話を使った怪異が。
スマホができりゃあ、スマホを使った怪異が出来上がる。
人の心から恐怖心がなくならない限り、怪異も進化するのさ。
そこで僕はふ、と思う。
進化することはあるとして、退化することはあるのだろうか?
例えば、今の10代の子供達に、スマホや携帯の無かった話をしてもピンとこないだろう。
それと同じように、妖怪も新しく生まれた怪異は、古い時代のことはわからないかも知れない。
どうせメリーさんが僕の家までたどり着いたら、怪異が起こるのだ。
試せることは試してみよう。
そう思って僕は試しに、スマホのGPS機能を切った上で機種変をし、電話番号もメアドも全部変えて、古いスマホを山に置いてきた。
それから、メリーさんからは電話はかかってこなかった。
後日、山へ様子を見に行くと、スマホはなかった。
人かメリーさんか、どちらかが持って行ったのか。
ふと下を見ると、紙が落ちていた。
何気なく拾って中を見てみると、赤黒い文字でこう書かれていた。
『私メリーさん、GPSもgoogl◯マップでも探せなくなって、迷子になったから諦めるの……』
やはり妖怪も、便利な物に頼り切ると、古いやり方ができなくなるらしい。
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