第9話 一反木綿─イッタンモメン─
この時期にもなり、未だにマフラーをしている人を見た。
半袖でもちょうどいいくらいなのに。
その人は、次の日もその次の日も同じ電車に乗っていた。
しかし、ある日から見かけなくなってしまったのだ。
気にかかっていたところ、近くに座ってた女子高生たちの話を耳にした。
─マフラーおばさんしってる?
─ああ、こんなあったかいのにマフラーしてた人でしょ?有名じゃん。
─その人、事故で亡くなったらしいよ。
─まじで!?どんな事故?
─なんでも、電車にマフラーが引っかかって、それに気付かずに電車が出ちゃって、首が締められて……。だって。
─うっわぁ、悲惨……。
祖父曰く。
時代とともに姿形を変えた怪異が多い話はしたが、これもその一種さ。
特に、手編みなんていかにも念がこもってそうだろ?
怨念がよ。
しばらくして、別の駅で見てしまった。
マフラーをした女性。
それは明らかに人ではない。
僕は魅入られたようにその場を動けずにいる。
そして。
目の前でその女性は、電車に引っかかり、死んでいく。
そしてまた、元に戻っては電車に引っかかり、また死ぬ。
そう、死んでいるのに死に続けているのだ。
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