第12話 結婚式後の国王陛下夫妻と王太子は……

 初夜にジュリアスが逃げ回っているその頃、別棟にある貴賓室では、国王夫妻とチャーリー王太子の話し合いが行われていた。


 問題の内容は、神聖なる結婚式を穢す行為をしたこと。

 更に、教会の掟を何故、王太子であるチャーリーは知らなかったのかと言うこと。

 更に言えば、あれだけの国賓を招いた場での婚約破棄からのアルジェナを王妃にすると言ってのけたチャーリー王太子の今後の進退について。



 教会は国と同レベルの格があり、尚且つそこの本部にて今回の騒動を報告されてしまうのだから、チャーリー王太子は次の国王には不向きとして、教会からの支持は一切得られないであろうと言う厳しいものだった。

 それなのに――チャーリー王子は自分の何が悪いのか理解していなかったのである。



「父上もお解りでしょう!? 私は悪くない、私は被害者です!」

「何度も言うが、被害者面をするな! お前の言動は自分の首を何度も絞めてきている事を何故解らない! 教会の力を得られなければ、お前は国王にすらなれぬのだぞ!」

「教会など知ったことか! 王となるのはこの私だ!」

「チャーリー!!」



 何度、我々騎士団はこのやり取りを見てきただろうか。

 被害者面したアホと、何度も説明を繰り返す国王……王都は最早地に落ちたといって過言では無いだろう。

 自分達の進退についても、改めて考え直さなくてはならい様だ。



「そもそも、父上だってクリスタルの意思を背いて国王になったではありませんか!」

「それは……仕方なかったのだ。当時母上……お前のお婆様が」

「そうやって言い訳をするのはやめて下さい! そもそも叔父上の母親とお婆様は違うではありませんか! 第二妃の子である父上の見目麗しい姿こそが国王に向いているという理由で国王になっただけに過ぎないのでしょう!?」



 そんなツマラナイ理由で、王都は傾きかけているのか。

 聞き耳を立てていた兵士は溜息を吐き、一人は目線だけ上を見つめ、一人は呆れた表情で3人を見ていた。

 確かに、王都では見目麗しい者こそ正義であり、見目麗しい者こそが神に愛されし者だと言われている。

 だが、教会はそうではない。

 見目麗しくなくとも、人は皆平等であると言う考えを昔から変えていないのだ。

 何故王都ではその様な考えになったのかは、先の王太子の言葉どおり、当時の第二妃の立場が強すぎたのが理由の一つである。


 自分の見た目に絶対の自信を持ち、生まれた国王も美しく、本来の王妃の子であるジュリアス様は、前国王に似て厳しい顔立ちを為さっておられました。

 それを、見目麗しくないと感じた王妃は、たったそれだけの理由で当時王太子であったジュリアス様を王族から除籍したのです。

 そして、見目麗しくない人間達が集う辺境の土地へと追いやり、さぞ喜んでいたであろう第二王妃は――罰が当たるように顔面に火傷を負い、城から飛び降り自殺しました。


 城で密かに囁かれた言葉があります。


【クリスタルの怒りに触れたのだ……】と。


「そうだとも、私は国王などには向いていない……私こそ、いや、私達こそ、国王や王太子と言う器では無かったのだ」

「なんと言う事をいうのですか父上!」

「仕方ないのだ、クリスタルは今にも燃え上がりそうなほど真っ赤に染まり、お怒りになっている……それもこれも、私が不甲斐ない所為でもあり、また、チャーリー、お前のその自己中心的な態度を改めないからだと推測している」

「私は自分に素直なだけです!」



 モノは言い様だな。

 最早呆れて溜息しか出ないが、王が代わるというのならやはり直径の血筋を持つジュリアス様こそが国王に向いているという証だろう。

 例え妻となった相手が悪役令嬢と名高い相手だとしても、彼女の商売の手腕は素晴らしいものがあると王都の一部では絶賛されている。

 また、彼女の商会で働いていた女性達は、多額の退職金を貰い、尚且つ次の仕事先の斡旋までして貰っていたのだ。

 正に至れり尽くせり、彼女がジュリアス様の隣で領地運営をすると言うのなら、王都はこの辺境領に移るのでは無いだろうかと思っている程だ。



「そもそも、我が友人等と……いや、友人とも最早呼べない奴らと寝て、誰の子かも分からない妊娠をしたアルジェナなど、私には相応しくありません!」

「確かにそれはそうだが、何故お前はその事に一切気がつかなかったのだ?」

「巧妙に隠れて逢引していたのでしょう。彼女は何時も私だけだと囁き、その言葉は嘘だった!! リコネルこそ私の妻に相応しいのに……叔父上なんかと結婚しやがった!」



 それは、貴方が盛大な婚約破棄を言ってのけたからだろう……と思ったものの、それを何度説明しても彼の頭からは零れ落ちるようで、記憶に残らないようだ。



「この私を騙し、国王及び国を騙した罪は重いと思います!」

「アルジェナは庶民に落とす、男爵家も無しとすると、何度も言っているではないか。何度も同じ話をさせるなチャーリー!」



 王の叫び声に王妃は泣き、チャーリー王太子はふてくされた表情で椅子に腰掛けると、「どうすればリコネルを取り戻すことが出来るのか考えなくては」と口にしている。


 向こうは今日結婚式を上げたばかりの新婚夫婦。

 ましてや、誰の目から見ても解る程、リコネル様はジュリアス様にゾッコンのようだった。

 それを別れさせると言うのだから、本当にチャーリー王太子にクリスタルからの罰が落ちるのでは無いかと、もう一人の兵士と顔を見合わせた。



「そうだ、今からリコネルに会いに行こう!」

「馬鹿を言うな! 結婚したばかりのリコネルとジュリアスだぞ!」

「だからこそです! 今ならまだ私の元に戻ってこれるはず!」

「いい加減にしないか!!」

「何故止めるのです父上!! 意味が変わりません!」



 俺達はアンタの頭の中がどうなってるのか意味が分かりません!

 ――と、喉まで言葉が出そうになったのを何とか飲み込んだ。



「此処からならリコネルの部屋まで直ぐでしょう!? 退け貴様ら! リコネルに会いに行く!」

「騎士達! チャーリーを部屋の外に出すな! 一歩たりともだ!」



 こうして、朝までチャーリー王太子が暴れるのを何とか押えながらの……長い夜になった。



=========

後、もう一話UPします。

そこで一応一区切りです。



チャーリー王太子の悪あがき、今後何処まで突っ込んでくるのかお楽しみに!



そして、本日整体に行ってきて体をほぐして貰いました(ノ´∀`*)

育児疲れが吹き飛びます。

保育園お迎えまでの間に明日の執筆頑張ります。



そして、コメントでの応援……ありがとうございます!

体に無理の無い範囲で執筆していくので、応援宜しくお願いします/)`;ω;´)

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