十五
退院してからの半月、この半月は、人生で最も食事に想いを寄せた日日になりました。主な食事は腹部を切開して取り付けた管から取るようになり、経口からは気持ちを満たすための飲食に限るようになったからです。体外と胃の中をつなげた管から直接食事を流し込むことが出来るので、逆流しない限り誤嚥はなく、液体状の栄養剤をゆっくりと時間を掛けて流し込んでゆきます。使われる道具もプラスチックのボトルとチューブといった簡単なもので、ボトルに栄養剤を入れ、ボトルから伸びる長いチューブを腹部の胃瘻に繋げるだけです。そして、点滴筒(点滴でよく見るポタポタと液体が落ちる部分)がチューブの途中に付いているので、そこを見ながら流れる速度を計算し、食事の長さを調節します。
ポタ、ポタ、ポタ。おばあさんは今日の昼食を少し早めに始めました。なぜなら今夜はみんなと一緒に夕食を行う日だからです。
「おば様!」
賑やかな台所から夢が出て来ました。夢が首から掛けている、大きなタコの絵が刺繍された黒いエプロンも賑やかです。
「お腹の調子はどうかしら? 早くないかしら?」
夢がそう聞くと、おばあさんは両手で上半円の弧を描くように胸元から前へ動かしました。これは「背中が熱いからベッドから浮かしてほしい」というおばあさん独自のジェスチャーです。
「フフ、分かったわ!」
夢は掛けていたタコのエプロンを外し、サイドレール(ベッドの柵)に掛けました。ベッドの横に立った夢は足に力を入れ、抱擁するように両腕をおばあさんの背中に入れました。これだけでも気持ち良さそうな表情になるのですが、夢はそこから自分の体でおばあさんを支えながら引き寄せ、背中をベッドから離します。さらに背中側の服をパタパタパタと浮かして風を通すと、おばあさんはとても気持ち良さそうに笑います。
「あとちょっとね。疲れたでしょ? 終わって少し経ったら横になれるわ」
半分になったボトルを見つめていたおばあさんは、笑顔で頷きました。液体の栄養剤なので食後はすぐに横になれません。胃から逆流してしまうと誤嚥し、そのまま肺に入り肺炎を起こす可能性があるからです。それを防ぐためにおばあさんは食事中と食事後しばらくは座った状態か上半身を起こした状態で過ごします。
介護生活ではその時の状況に合わせてベッドを動かしたり体位変換を行ったりします。その時に大事なのは、より自然な姿勢に近付けるということです。夢はその自然な姿勢を見出すため、自らベッドに乗り体験しました。リモコンを使いベッドの上部を起こしてゆくと、背中の皮膚は不自然に引っ張られて違和感が生まれました。どんなに綺麗な姿勢でいたとしても、ベッドを動かしてゆけば不自然な姿勢になってしまうのです。だから夢はベッドの上部を起こした後、体の緊張状態を解くためにおばあさんの背中や足を一度浮かせるようにしました。さらに重要だったのが、ベッドの角度を水平にした状態で先に姿勢を整える事でした。先に体を起こしてしまうと、ずれた姿勢を直すのに相当な力が必要になるからです。また、そのずれが原因でベッドから転落してしまう事もありえるのです。また、服による錯覚にも気を付けます。着ている服が整っていると、体がねじれていても真っ直ぐになっているように見えてしまうからです。特に夢達は腰のねじれを毎回確認するように心掛けました。座った時はおしりと腰が支点になるので、そこがずれると疲れてしまうからです。そして上半身を起こした後、きつくなったおむつを少し緩めます。
そうやって重なり始めた夢達の意識は、横になった時の姿勢にも向けられました。まず気になったのが腕の位置でした。姿勢によっては体に乗せた腕の重さが負担になってしまいます。その圧を分散させようと、腕の下にタオルや布団を挟むようになりました。
次第に夢達は体の構造にも目を向け始めました。例えば肺は、それ自身で膨らむ事は出来ません。周りの筋肉が関与し膨らみ、そして収縮時は肺自身の性質によって縮みます。呼吸は上半身の状態に大きく依存するので、ベッドで横になった時は背中の筋肉にも意識を向けるようになりました。ただ、おばあさんの筋力は弱って行きます。肺を膨らます事が出来なくなるのです。人工呼吸器はその点をフォローしてくれるのですが、そもそも人体の構造上、空気を送り込み肺を膨らますという事は正常なことではありません。
沢山の現実に触れた夢達は、それでも変わることのない想いがある事を知りました。
「姉さん寝ちゃったね。あたしらもちょっと休憩しようかね、夢」
「うん。オッカさんもありがとう」
夢は今、おばあさんの家に同居しています。ケンシが帰って来るまで一緒にいる事になったのです。そのケンシの荷物も少しずつ増えてゆき、いつ来てもスムーズにバトンタッチ出来るようになりました。後は、夢達が学んで来た事、そして三日後に学ぶ事を伝えるだけです。明日、おばあさんは入院します。そして三日後、人工呼吸器を使うため、気管切開の手術を行います。人工呼吸器を使う間は経口からの飲食や発声する事が出来なくなります。おばあさんが食事を取れるのも、味を感じるのも、声を出せるのも、今日で最後になるのです。
でもいつの日か、また元に戻れるのだと、夢達は心の底から信じているのです。
広い部屋のいつもの卓袱台に、今日は土鍋が乗っています。その隣に置かれた竹のざるには水菜や白菜や葱等の新鮮な葉物野菜、青く潤う魚介類に、見るだけで食感が生まれ歯茎が震える鶏肉豚肉牛肉が綺麗に並べられています。男達が最高の食材を町中から集めてきたのです。
おばあさんは昼食後、少しの時間だけ昼寝をしました。そして元気な子供達の声で目が覚めると、ケンジにお願いをして屋内の車椅子に移動しました。今はフミとリッキーの変なダンスを楽しそうに眺めています。
「足らなかったら冷蔵庫にあるよ」
オッカはそう言いながらぽん酢しょうゆを卓袱台に置くと、台所へ戻って行きました。オッカが持ってきたのは、ゆずで有名なクイナの町の隣にある村のぽん酢です。上あごを抜けるゆずの香り、舌で踊るほのかな酸味、まろやかに甘く広がる醤油、ぽん酢と言ったらクイナの町ではこれなのです。
「ケンジ、食えるまで将棋すんぞ」
夕食の支度風景を眺めていたフクがケンジに戦いを挑みました。縁側であぐらを組みながらガラス戸の向こうに見える蜜柑色の空をミーナに見せていたケンジは腰を上げて部屋の中に入って行くと、床には広げられた折畳式の将棋盤がありました。ケンジはフクの前に座り、結局寝なかったミーナを抱きながら、箱から出した駒をガラガラガラと崩して並べ始めました。
台所の暖簾が開き、忙しそうにオッカが小皿を持って出てきました。
「ミゲロは?」
ケンジは駒を並べながらオッカにそう話し掛けました。
「さっき電話があったよ。もうすぐ来るさ」
オッカはそう言うと、また暖簾をくぐり台所に戻って行きました。
ケンジは駒を並べていた手を止め、考え込んでしまいました。
「どうした?」
ケンジの様子が気になったフクがそう聞きました。
「最近配達行ってもおらん事多いねん」
ケンジの話に宙を見つめたフクは、ふと昔の事を思い出しました。
「前にもあったな。あん時夫婦喧嘩だけどな、ばあちゃん?」
フクがそう言うと、ミーナを眺めていたおばあさんは、うんうん、と頷きました。
「まあええわ」
ケンジはそう返事をしたのですが、言葉とは裏腹にどこか腑に落ちませんでした。
「いくぞ?」駒を並べ終えたフクがそう声を掛けました。
「おう」ケンジの声は少し暗かったのですが、おばあさんには笑顔を向けました。ただ会えなかっただけ、ケンジはそう思うようにし、抱いた違和感から離れようとしました。
すると突然、おばあさんの部屋から大きな笑い声が聞こえました。三人が振り向くと、フミがリッキーをおばあさんのベッドに上げて遊ばせていたのです。リッキーは楽しそうにゴロゴロゴロと転がっていました。
「ばあちゃん?」
ケンジがそう声を掛けると、おばあさんは嬉しそうに笑っていました。
「こら!」
その声に驚いた三人が振り返ると、お盆を持ったオッカが起こった顔で立っていました。おばあさんとケンジとフクは将棋盤に視線を落とし、この部屋の空気になりました。オッカは眉間にしわを寄せ、フミを鋭い目つきで見つめました。
「ベッドが壊れたらどうすんだい。それにこれからは子供達はきちんと見ておくんだよ」
そう声を上げたオッカは、介護ベッドの扱い方はこうだとフミに注意しました。
介護ベッドは一人で横になる事を前提として作られているので、上部や膝の部分を上げた状態で乗ってしまうと故障の原因になります。リハビリの時もおばあさん以外の人が座る場合はベッドの膝の部分はしっかりと水平に戻してから行っています。ただ、介護ベッドは故障だけでなく、事故が起こる可能性もあるので注意が必要です。サイドレールの間に手足が挟まったままリモコンでベッドを上下させ圧迫してしまったり、ベッドの下に子供やペットが居ることに気付かずベッドごと下げてしまったりするのです。自動で操作出来る分、操作している間の人の意識は別の所へ行きやすくなるのです。
一通り説教が終わるとオッカはお盆に乗せた空のコップを卓袱台に並べ、フミを一睨みして台所へ戻って行きました。フミは静かになったリッキーを抱え、そっとおばあさんの横に座るとため息を一つつき、オッカの将来を憂えながら呟きました。
「ばあちゃん、あんたの若い頃にそっくりだよ」
ケンジとフクは思わず笑ってしまいました。
「ガキみたいに怒られて、大体お前何才やねん!」
ケンジは笑いながらそう声を上げました。ただ、ケンジ自身も心の中ではフミに同感していたのです。少年時代は別の街に住んでいたケンジは、クイナの町へ帰省するたびに同い年のフクとフミと遊んでいました。その頃にあったおばあさんとの戦いの記憶が、今のオッカと重なって見えたのです。ケンジはフミに笑みを向け、同感の意を伝えました。
「あん時から変わんないんだよ、あんた達は」
突然台所から突き抜けるように響いたオッカの声に驚いたフミは、おばあさんの陰にスッと隠れ、暖簾から顔を出すオッカに視線を寄せました。
「余計な事して姉さんを困らせるんじゃないよ!」
オッカはそれだけ言うと、威圧感だけを残し暖簾から顔を引っ込めました。台所からはクスクスと笑う夢達の声が聞こえてきました。
パチ。部屋の空気を変えようと、フミは駒を指して将棋盤を鳴らしました。フミの最初の8四歩は、ケンジが指した最初の一手の7六歩への返答でした。
そしてパチ、パチ。もう何事も無かったかのように対局は始まりました。
「あ、ばあちゃんあれ好きじゃなかった? ゆずのジュース」
少しの間将棋盤を眺めていたフミが思い出したようにそう話し掛けました。おばあさんはゆずのジュースに懐かしさを感じ、温かい気持ちになりました。そして喜びながら何度も頷きました。ゆずのジュースはオッカが持ってきたぽん酢の産地と同じで、両方とも有名な特産品です。柑橘類のキリッとした酸味と、ゆずやはちみつや炭酸の甘みが特徴的で美味しいので、観光客のお土産としてよく買われています。クイナの町では駄菓子屋にも置かれているので、子供達の定番にもなっています。
「わしも」ケンジが将棋盤に視線を落としながらそう言うと、フクは親指の爪で歩の駒をかきながら空いている手を上げました。フミは「はいはい」と呟きながら腰を上げ、「よし、行くかリッキー!」とリッキーに声を掛けました。そしてフミは、何かを買ってもらえると期待した眼差しを向けるリッキーを抱き上げました。
「ばあちゃん、ちょっと行ってくる」
おばあさんは手を合わせて「ありがとう」と言い、笑顔で二人を見送りました。
その様子に気づいたハツエは玄関に向かい、「もう外は寒いから」とリッキーに小さなカーディガンを着せました。いつの間にか季節は寒くなり、町の中も少し静かになりました。
カタカタカタ。縁側のガラス戸は夜の風に打たれ、その向こうにある空や町の夕日の色は夜の色と混ざり始めました。昼間と少し空気が変わってきたようです。
卓袱台には水と昆布が入った鍋、たこ焼き、コロッケ、ジュース、酒、みんなの食べたい物飲みたい物が並んでいます。後は少しの料理とメンバーが揃えば乾杯の時間です。残りのメンバーというのはミゲロとカッチとジフィです。ミゲロはこっちに向かっていて、カッチとジフィは配達を終えた後に来るそうです。
「この魚は?」ざるに盛られた切り身を凝視しながらフクが聞きました。「ふぐだよ」オッカがそう答えると、「美味ぇよな、ふぐ」とフクは喜びました。オッカは自慢げに「当然」と答えると、また台所に戻っ行きました。入れ違いで夢が台所から出てくると、切りそろえた野菜が盛られたざるを卓袱台に置きました。既に用意されている食材と合わせると結構な量になります。
「美味そうだな、ばあちゃん」
フクの笑顔におばあさんは嬉しそうに頷きました。
「ばあちゃん!」
部屋の空気を裂くように玄関からフミの大きな声が響くと、同時にカチャカチャと瓶の音も聞こえてきました。
「ばあちゃん見て!」
暖簾から顔を出したフミは、おばあさんを喜ばせたくて白いレジ袋を掲げました。おばあさんはフミに手を合わせ、とても大きな笑顔になりました。フミの心は嬉しさと恥ずかしさでいっぱいになりました。
「リッキーは?」
ケンジはリッキーの姿が見えないのでフミにそう聞きました。
「ミゲロと一緒。途中で会ったんだ」
フミはそう答えながら、隣の暖簾から顔を出したオッカにレジ袋を渡しました。
すると、玄関の方から扉の開く音とミゲロの声が聞こえてきました。ケンジは「ちょっとタンマ」と一旦将棋を止め、すぐに玄関へ向かいました。
「靴履かせてねぇから下ろせねぇんだ」
ミゲロはリッキーを抱っこしながら、玄関にやってきたケンジにそう声を掛けました。おばあさんの家へ向かって歩いていたところに、リッキーとレジ袋で両腕が一杯になっていたフミに偶然会ったそうです。
ミゲロはリッキーを家に入れ、靴を脱ごうとしました。
「ちょっとええか?」
「どうした?」
ケンジは何も答えないまま、外に出てしまいました。
いつの間にか夕日の色はほとんどなくなり、薄白く光る電気の色が目立つようになっていました。二人が歩く道は自動車が一台通れるほどの幅で、人影はなく静かで、ポツポツと光がもれる店から僅かに人の気配がするくらいでした。おばあさんの家から少し歩くと空き地があり、その前には古い木造の待ち合い所の付いたバス停がありました。場所柄からしてバス停に人が居る事はあまりありません。
ケンジはバス停の前まで来ると立ち止まり、すっと後ろに振り返りました。
ケンジは真剣な目をミゲロに向け、そして問い質しました。
「痩せたな」
ケンジはふざける事なく、ミゲロの心を見通すような目を向けました。
ミゲロは腕を組み、何も話さず次の言葉を待ちました。
「最近店でお前見いひんねん。草履があるから家におる事は分かっとんねん」
ミゲロは小さく何度も頷きました。
「そおか。そおか。でも教える代わりにお前に頼みがある」
ケンジは表情を変えないまま、話出したミゲロから目を離しませんでした。
ミゲロは少し間を置いて、また小さく頷き、話し始めました。
「俺はもう長くねぇ」
何かあればそれしかない、だからこそ聞きたくなかった言葉がケンジの耳に入ってきました。眉間に力が入ったケンジは、ミゲロが話し終えるのをジッと待ちました。
「俺もお前もよう飲むしな。酔わねぇからって気を付けねぇとな。ケンジ」
さらに眉間に力が入り、それでもミゲロが話し終えるのをジッと待ちました。
ミゲロは腰に手をやり、話を続けました。
「腎臓が悪いんだと。薬がねぇとしょんべんも出ねぇ」
そう言うと、ミゲロは小さく笑いました。オッカ以外の誰かにも話しておかなければいけない、ミゲロはずっとそう思っていたので、ケンジに話せた今、心が解放されたような、そんな笑顔になれました。
「ケンジ、誰にも言うなよ」
ケンジはうつむき、歯を食い縛り、自然と閉じた唇に力が入りました。ケンジの頬に、一筋の涙が流れました。
「ケンジ。いつも通りでいい。いつもと変わらねぇ、いつも通りのこの町で生きるんだ」
ケンジは、それがミゲロの幸せなんだと、ずっと昔から、ちゃんと分かっています。クイナの町とのありふれた日日、仲間とのありふれた日日、家族とのありふれた日日。ケンジは涙がこれ以上溢れないようにと瞳を閉じ、浅くなった呼吸を静かに落ち着かせました。
ミゲロは視線を落とし、ケンジの声を待ちました。
町の音と混じるように秋の風が擦れました。
ケンジは顔を上げ、力のない声で言いました。
「頼みは」
「何だ?」
ミゲロはケンジの声を聞くのに精一杯で、言葉の意味が頭に入ってきませんでした。
「頼みって? オッカか?」ケンジはもう一度聞きました。
「夢の事だ」
「夢?」
思ってもいなかった名前に、ケンジは思わず聞き返しました。
「オッカとは何度も話してるから覚悟は出来てるよ。でも夢は違う」
ミゲロの気持ちを理解したケンジは小さく頷きました。夢と過ごした時間が長いからこそ、理解し合えた不安でした。
「俺が居なくなると、あいつは悲しむ。俺が自分で言えるくらい、あいつはそうやって生きてきた」
そう話したミゲロは夢の居る方へ少し視線を寄せました。そして一呼吸し、また前を向くと、ミゲロは笑顔を見せました。
「お前達は親友みてぇに仲良いだろ。こうやって頼めんのはお前しかいねぇんだ」
ミゲロはそう言うと、言葉が出なくなったケンジに歩み寄りました。そしてその大きな手のひらで、強く、優しく、ケンジの頭を撫でました。優しい重みで頭が下がったケンジは、ふと、幼い頃の風景と感覚に触れました。そしてその懐かしさは、熟れた果実が弾けるように、ジワッと胸の奥で熱く広がりました。
「俺はもう充分なんだ。お前達に会えて、俺は幸せもんだ」
ミゲロのその言葉は、堪えていたケンジの涙をポロポロ溢れさせました。優しく微笑んだミゲロは涙を流すケンジの頭を、優しく、ポン、ポン、と触れました。ケンジは袖で涙を拭って鼻をスッとすすると、クシャクシャになった顔を上げ、ミゲロに笑顔で伝えました。
「わかったミゲロ。けど一言だけ言わせてくれ」
「どうした」ミゲロも笑顔で言いました。
ケンジはスーッと息を吸い、空気を肺一杯に入れました。
「クソッ! ふざけんなッ!」
ケンジの大きな声に吹き出してしまったミゲロの笑い声は段段段段膨らみ、大きな笑顔になりました。いつも以上に元気なケンジに、ミゲロは思わずいつもの調子に戻されてしまったのです。そしてケンジもミゲロの大きな笑い声で、全てを受け入れ納得させられてしまいました。
心の強い人は、周りの人の心も強くしてくれます。おばあさんとミゲロは、その自らの命を燃やし、みんなを成長させてくれるのです。そして自らも大きく成長して行きます。炎が消えるその瞬間まで、人は成長出来るのです。炎が消えてもなお人は、人を成長させることが出来るのです。
「ケンジ、あかん、行くぞ」
ミゲロの声でケンジが周りを見渡すと、ちらほら人が家や店から出てきていました。二人の大きな声に何事かと思われたようです。ばつが悪くなった二人は、逃げるようにしておばあさんの家へ戻って行きました。
「遅ぇ! ケンジ!」
ミゲロとケンジが部屋に入ると、将棋の次の手を待つフクがすぐに声を上げました。夕食の支度は終わっていて、ジフィとカッチ以外のみんなは部屋に集まっていました。
「俺の番か」
ケンジは見下ろしながらそう言うと、将棋盤の前に座りました。ミゲロはオッカの隣に座り、卓袱台の上に並んだ食材を見渡しました。
「ケンジのこれか?」
ミゲロが牛肉に目をやりながらそう聞きました。
「あぁ、美味そうやろ」
「腹減ってなくても美味そうだな」
ミゲロが笑みを見せながらそう言うと、ケンジは頬を上げました。
パチ。ケンジが将棋を再開させると、オッカと夢は立ち上がって台所へ向かいました。ハツエはカセットコンロのつまみをカチッと回して点火させました。
「おーい!」
突然玄関の方から声が聞こえ、その声が耳に入った瞬間ケンジは眉間にしわを寄せました。台所から出て来た夢とオッカは冷蔵庫から出してきた食材を床の上に置きました。
「おーい!」
ケンジは手に持っていた将棋の駒を床に放り投げ、鬱陶しそうに頭を掻きました。
「ッたく。誰呼んどんねん。早よ入れ!」
ケンジがそう声を上げると、ハツエはクスクス笑いながら玄関へ迎えに行きました。そこに居たのは配達を終えてやって来たジフィとカッチで、ハツエの姿が目に入るとカッチは白い箱を二つ掲げて見せました。
「ケーキや」カッチは持って来たケーキをハツエに渡し、中に入って行きました。
「銭湯行って汗流してきたわ」ジフィもハツエにそう声を掛け、中に入って行きました。ジフィの手には和の模様が描かれたナイロン製の大きな手提げ袋がありました。その手提げ袋には洗面器やタオルや洗剤類にクシ、そして着替えた衣類が入っていて、この手提げ袋を持っているだけで銭湯に行ったと分かるケンジ達のいつものスタイルです。
「お兄さんがケーキって」
部屋に戻ったハツエがそう言ってみんなに白い箱を見せると、ケンジはそれをジッと凝視しました。
「あぁ、近所んとこの余りもんや。タダでくれんねん」
ケンジ達は近くにある食品工場の工場長と仲が良く、クリスマス前になると作った試作品を時時分けてくれるのです。
「まるまるやぞ。わしは食わんからみんなで食い」
カッチはそう言うと、ケンジの隣に座りました。
「偉そうに」ケンジは隣に座ったカッチに卓袱台の端へ追いやられながらそう呟きました。そしてケンジとカッチが詰めて空いた場所にジフィが腰を下ろしました。
ケーキを受け取ったハツエは台所に入り、八号と書かれた箱からケーキを取り出しました。慣れた手つきで扱うハツエは若い頃、ケーキ屋で働いていました。
「うわぁ、すごい」
箱の中に入っていたのはホイップクリームを使ったデコレーションケーキでした。もう一つは同じサイズのチョコレートケーキで、八号はそうそう見るサイズではありません。
「やっぱり」
美味しそうなケーキに始めは喜んでいたのですが、冷蔵庫のドアを開けた瞬間困った表情に変わりました。冷蔵庫の中は今日の分の食材で一杯になっていました。食材を大きくまとめて整理すれば一つ分ぐらいは空きそうです。
「みんなのお土産だね」
ハツエはそう呟くとチョコレートケーキはそのままテーブルに置き、生クリームケーキは箱ごとラップに包んで冷蔵庫に入れました。
「乾杯!」
ビールや酒は後にして、まずはゆずジュースで乾杯です。おばあさんとリッキーと夢以外はソーダ入りのゆずジュースを選びました。
「懐かしいわ。飲めるかしら?」
夢が喜びながらそう言うと、頷いたおばあさんもジュースの瓶に懐かしさを感じました。
「じゃ、おば様」
夢はそう声を掛けると、ゆずジュースの入った吸い飲み(急須の様な形をした介助用品)をおばあさんの口元に近付けました。零れてもいいようにと夢はおばあさんの口元にティッシュを添えました。
「いくわ、ゆっくりね」
夢はゆっくりと吸い飲みを傾け、おばあさんの口に少しずつ流し込んでゆきました。おばあさんは飲む事に集中しながら慎重にゆずジュースを飲み込みました。
「んん」
懐かしさと美味しさで声を上げたおばあさんは、笑みを浮かべ頷きました。
「ほんと? じゃあ私も!」
夢は、そんなおばあさんの笑顔に嬉しい気持ちになりました。
「うん、懐かしいし美味しいわ!」
おばあさんと夢は顔を合わせ、いっぱいの笑顔になりました。
「ねえ、昔から炭酸入ってた?」
ハツエは手に持った瓶を眺めながら夢にそう聞きました。
「ううん、昔のはなかったわ」
「そっか。でも私こっちが好きだね。おばさんも飲んでみて」
ゆずジュースに喜んだ三人は話に花を咲かせました。
そんな温かい空気に触れながら、オッカはふぐの切り身を鍋の中に並べてゆきました。煮立てた黄金色の綺麗な出汁が具材を熱してほぐしてゆきます。
「ほら、ゆっくり飲んで」
ケンジはリッキーが持つコップに手を添えながらそう言いました。しかしリッキーは気にもせず、コップの中に少しだけ入れたゆずジュースを飲み干すと、止めていた息を勢いよく吐き出しとても満足そうな顔を見せました。コップを卓袱台に置いたリッキーは、そうすると決めていたかのようにバタバタバタと走りだしてミゲロの膝に飛び付きました。
「いてててて! このやろ!」
大げさに痛がったミゲロはリッキーを抱え上げ、そっと膝の上に座らせました。
キャッキャと笑う高い声や表情や感情、人の心そのものを表す子供という存在は、大人の心にそれぞれの音を響かせます。ミゲロも今、持つことが出来なかったその存在に心を慰められています。
生まれてからほんの僅か数年しかないその大切な時間。子供は世界の希望となり、大人はその希望を守るのです。子供を守るという事は、未来の世界を守るという事です。そのためには子供の心を綺麗にし、優しさの意味を教え、思いやれる力を与えなければいけません。やがて子供は大人になり、世界を知り、現実を知り、心を揺さぶられるのです。子供の頃に居た優しい世界と大人になって知った現実世界とのギャップを感じ、そのギャップが罪悪感や理不尽さを生み、そしてそれが正しい道へ導いてくれるそれぞれの指針となるのです。しかし人は成長します。例え子供でなくても、心を奮わすなにかに出会えば、良くも悪くも変わるのです。夢達も今、そうやって生きているのです。
「おば様、ふぐが食べ頃よ」
「夢、どうやそのシャツ?」
ケンジが話したのは、夢の着ているねずみ色のTシャツのことでした。
おばあさんと夢はとても嬉しそうに顔を向け合い、笑みを浮かべました。
「ケンちゃんもありがとう。大事にするわ」
「おう。今度ばあちゃんの買う時付いてきてな」
「どうしてプレゼントの話を本人の前でするのさ」
鍋に豆腐を入れながらオッカがそう言いました。
「ホントだわ、ふふ。でもその方が良いかも。そうだおば様、たこ焼き食べるかしら?」
夢がそう言うと、おばあさんは思い出したような表情をして頷きました。夢はたこ焼きを小皿に移し、ほぐしてから小皿ごとおばあさんの口元へ運びました。
「夢、俺にさせてくれねぇか?」
思いもしなかったミゲロの言葉に夢は驚いてしまいました。でも、おばあさんの笑顔を見た夢は頬笑み、そしてミゲロに小皿とフォークを渡しました。ミゲロは小皿とフォークを受け取るとおばあさんの隣へ移動し、小皿のたこ焼きをほぐし始めました。オッカはスッと立ち上がり、足りなくなった食材を取りに台所へ行きました。
「はい、おばさん、ゆっくりな」
ミゲロはフォークに乗せた少しのたこ焼きをおばあさんの口の中へ運びました。おばあさんはほぐしたたこ焼きを「んーん、んまむにゃ」と声をもらしながらゆっくり丁寧に咀嚼し、そして力を込めてゆっくり慎重に飲み込みました。
「うまいか? おばさん。おう、そうだ、ふぐ食べたか? 俺の店のふぐだ」
おばあさんが笑顔で頷くと、ミゲロは煮立った出汁につかるふぐをフォークで取り、白身と骨を綺麗に取り分けました。
「いくぞ、おばさん」
ミゲロは出汁で膨らんだ白身を、おばあさんの口の中へ運んでゆきました。
そこにあったのは、夢達が見たこともないような、やわらかなミゲロの頬笑みでした。
「んーん、んーん、んん」
美味しそうに声をもらしたおばあさんは白身が食べやすかったようで、飲み込むのも楽そうでした。
「おいひい」
「そうか! おいしいか!」
卓袱台の上の食材もほとんど無くなり、床に置いているざるも空になりました。みんなは座る場所を縁側まで広げ、のんびりとした食後を楽しんでいます。
横になっていたフミがスッと腰を上げて鍋の中を覗くと、ちょうど良い感じの出汁が出来上がっていました。
「ケンちゃん、この後おじやにしよ」
フミがそう言うと、鍋の最後の一杯を食べていたケンジが顔を上げました。
「ちょっと休憩したらやろか。後で卵貰ってきといて」
「了解、葱と塩も」
フミは言葉だけを台所に持って行き、そのままゴロンと寝転びました。もちろんケンジは初めから当てにしていません。
「おーい! おーい!」
ケンジが台所にいるハツエを呼びました。ハツエは夢とオッカと余った食材について相談をしていました。
「はいはい!」
ハツエは二人に笑みを向け、台所の暖簾から顔を出しました。
「何?」
ケンジは取り皿の中身を出汁ごとかきこみ、口を一杯にしながら「おじやするから卵と塩と葱ちょうだい」とハツエに注文しました。すると縁側で横になっていたフミが顔を上げ「ゆずのジュース炭酸なし」と、同じように縁側で横になっていたフクが「ビール」と言いました。
「誰だい!」
突然暖簾の隙間から勢いよく顔を出したオッカが怒鳴ったので、驚いたフミとフクは急いで座り直しました。ケンジは吹き出しそうになった口を押さえ込み、堪えるように笑いました。オッカが顔を引っ込めるとハツエは楽しそうに笑いながら「そういう事」と言葉を残し、暖簾をピシャリと閉じました。
そんなやり取りをしていると、玄関の方から声が聞こえました。
「ケンジ! 頼む!」
散歩に行っていたおばあさんとミゲロが帰ってきたようです。おばあさんは食事が一段落ついたところでベッドで少し休み、その後ミゲロと散歩に出掛けていたのです。おばあさんの肩には毛布、足には膝掛け、防寒対策は万全です。
呼ばれたケンジが玄関へ向かうと、フクとフミも起き上がりました。
「ばあちゃん」
駆け寄ったフクとフミが嬉しそうにそう呼び掛けました。おばあさんと笑顔を交わしたフミは玄関に置いていた車椅子を動かし、上がり框の手前で止めるとブレーキを掛けて固定しました。
「お帰り。楽しかったか?」
ケンジはおばあさんとミゲロの顔を見ながら、にこやかにそう聞きました。おばあさんはみんなに手を合わせて「ありがとう」と笑顔になりました。ケンジは片足だけ草履を履き、車椅子の横に体を付けました。ミゲロはおばあさんの毛布と膝掛けを取ると、車椅子のブレーキを掛けて固定し、ハンドルを握りました。
「また頼むな」ケンジはそっとミゲロにだけ聞こえるようにそう言うと、おばあさんの腰と膝下に手を回しました。「おう」とミゲロの声が聞こえたケンジはニカッと笑みを浮かべました。
「いくで!」
ケンジが合図を出すとおばあさんが「んん」と返事をしました。ケンジはおばあさんをスッと抱き上げ、屋内の車椅子にそっと下ろしました。おばあさんの姿勢を綺麗に整えたケンジは車椅子を押して部屋に入って行きました。
「中に入ってて」
フミはミゲロに笑顔でそう言うと、フクと一緒に車椅子を拭き始めました。
「ありがとうな。頼んだ」
ミゲロはそう言葉を掛けるとフクの背中にポンと触れ、部屋に入りました。
「ばあちゃん一回休憩するか?」
おばあさんがいつもの場所に落ち着くと、ケンジはそう話し掛けました。おばあさんは顔を左右に振り「大丈夫」と伝えました。
「喉渇いてないか?」
ケンジは気付いた事を一つずつおばあさんに聞いてゆきました。おばあさんが「大丈夫」と顔を左右に振ると、ミゲロとケンジは「よし」と言い、元の場所にあぐらを組んで座りました。
箸と小皿を手に取ったケンジは、ふと横で寝ているリッキーに視線を寄せました。何かを枕に寝ていたので覗いてみると、介護で使うおばあさんの三角柱のクッションでした。
「ごめんばあちゃん、よだれが」
そう言ったケンジは、重力に逆らえずに伸びるリッキーの顔が可笑しくて笑ってしまいました。おばあさんはそんないつもの光景に、笑みを浮かべました。
ティッシュ一枚を手に持ったミゲロは、口とクッションに付いたリッキーのよだれを拭き取りました。
「あれだけ遊んだら眠いだろうな」
ミゲロはリッキーの顔を眺めながら、そうつぶやきました。
「ケーキ出たらまた起きるわ」
ケンジがそう言うと、三人は温かく笑い出しました。
卓袱台には蓋で閉じてある鍋と、残りの食事をまとめた皿が一つありました。
「二人は?」ミゲロがたこ焼きを食べながらケンジにそう聞きました。
「親父の事?」ケンジはコロッケを食べながらミゲロにそう聞き返しました。
ミゲロはたこ焼きをもう一つ口に放り込むと、「おう」とこもった声で答えました。
「二回目の配達行った。またこっち来るらしいわ」
ジフィとカッチは仕事をしに工場に戻っていました。二人が運ぶのは甘酒で、毎年神社から大量の発注が来るのです。一日に何度も配達をし、しかもそれが数日は続きます。その神社はオレンジ通を更に奥に進んだ山にあり、普段の参拝はほとんどが町の住人なのですが、行事があれば他の町から沢山の人が参拝に訪れ、参道に並んだ露店も活気付きます。なのでこの時期になると木製のケースに入った甘酒を荷台に沢山乗せたトラックをよく見かけます。ジュースの瓶とは違い、手のひらほどの小さな瓶に甘酒は入っていて、トラックが大きく揺れるとカチャガチャと心地よい音が鳴ります。参道は丘に沿って少し坂になっているのでトラックは一気に露店を走り抜けて行きます。
「ケンちゃんそれ大丈夫?」
車椅子を綺麗にし、部屋に戻ってきたフミが聞きました。配達は小一時間ほどで終わるので、カッチは「俺の分のてっさは置いとってや」とケンジに声を掛けていました。しかし、てっさを肴に焼酎を一杯、というカッチの楽しみは楽しみのまま、静かに消えてゆきました。
「何が?」
「ふぐの刺身」
その意味を少し考えたケンジはカッチの言葉を思い出し、とても面倒くさそうな顔をしました。
「おばさん、なんか飲むか?」
ミゲロがそう聞くと、おばあさんは喜んで頷きました。
「ゆずか?」
ミゲロが瓶を掲げながらそう聞くと、おばあさんは「うんうん」と頷きました。
「そうか。よし!」
ミゲロは声を上げると、卓袱台の上の吸い飲みにゆずのジュースを入れてゆきました。
夢の想い
夢は昔、自ら命を絶った子供達の存在を知り、想いを文章にした事がありました。その文章を抜粋し、改訂し、記しておきます。
子供達へ
この世界には、72億の人間がいます。
世界中の人間と仲良くなれるか? 無理。
世界中の人間と意気投合出来るか? 無理。
他人と関わらないし、知らないからこそ助け合える事もある。
全てのものの幸せを願う事が出来る。
でも直接関わるとなると違う。
好きになれない人もいる。
それでも何人いるだろう。自分と意気投合し仲間になり親友や恋人になれる可能性のある人間の数は。
『学区』
ほんの数キロ圏内に住んでいるだけで集められた子供達。
何の価値観や趣向などの共通点も無い、ただたまたまそこに住んでいただけで集められた子供達。
そんな状況で集められて皆と仲良くなれる? 無理。
同じ価値観を持てる? 無理。
似た環境と世代で共通項は作れてもいずれ違いが生じる。
こんなにたくさんの人間がこの星に住んでいるのに、たった僅かな地域で区切られた住人と無理に仲良くなる必要なんて無い。
学校とは、いかに自分と違う人間とコミュニケーションをとる能力を付けるか。
自分と違う価値観を持つ人間と、お互いが傷付け合わずに過ごせるか。
無理なら関係を作る必要なんて無い。
仲良くなる必要なんて無い。
苦しむくらいなら学校に行かずに独学で勉強すれば良い。
自分の中に引きこもらず、自分の可能性を潰さず、自分の未来の為にあらゆる選択をすれば良い。
道はある。
たった数キロ圏内で集められた集団。
絆なんて作る必要は無い。
社会に出れば、世界に出れば72億の人間がいる。
その中のたった数人。大切な人が見つかればそれで良い。
周りを見ろ。世界を見ろ。この星が世界だ。学校が世界じゃない。学校が全てじゃない。
いじめてくる相手と戦えば良い、逃げれば良い、どっちでも良い。
世界を見ろ。
小さな小さな世界に囚われず、この大きな世界に羽ばたけ。
この世界は、君たちを必要としている。
羽ばたけ。
生きろ。
大人は君たちを守るべき存在。
自分もいつか子供達の力になれる存在になってみせる。
頑張れ。 生きてくれ。
この想いを投稿した後日、最後の行の、頑張れ、という言葉を別の言葉に変えようかと夢は考えていました。頑張れという言葉が、別の意味で伝わってしまうんじゃないかと思ったからです。しかし、人がこの言葉を使う時、必ずしも辞書で出てくるような意味で使っているとは限らないのです。応援しています、見守っています、期待しています、心配しています、助かってください、幸せになってください。人にはそれぞれ様様な想いがあるのです。言葉のその奥に、時には違う心もあるのです。
夢は考え、このまま残す事にしました。
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