第80話 彼の因縁
「いやぁ、驚いたぜ。まさか、アンタらで、あの吸血鬼をどうにかしちゃうなんてよ」
……コイツは一体何をしにきた? てっきりアッシュのパーティに戻ったのだと思っていたが、なぜここにいるんだ?
「……アッシュのパーティには戻らなかったんですか?」
「アッシュ? あぁ、アイツね……アイツのことはどうでもいいんだよ。俺が探してたヤツじゃなかったしな」
「アナタが、探してたヤツ?」
俺がそう言うとライカは、ぐいと俺の方に距離を詰めてきて、その右目だけで俺のことを見てくる。
「あぁ。俺が探しているのは……『救世の勇者』だ」
そう聞いて俺は思わず身構えてしまう。コイツ……なぜこの話を俺の前でする? もしかして、転生の腕輪のことに気付いていたのか?俺は思わず右手の腕輪を隠してしまう。
「……そうですか。しかし、この街には彼はいないと思いますが」
「あぁ。ヤツは先代の魔王を倒したあと、どこかへ姿を消した……そして、今の今までどこにも見つかっていない……だが、俺はヤツが今もどこかにいると確信している」
ライカはまるで俺に語りかけるかのようにそう話し続ける。俺としてはそれにどう反応していいのかわからず、困りながらも黙っていることしかできなかった。
「そうですね。もしかしたら、彼はまだ今もどこかで生きているかも知れない。俺もそう思いますよ」
「……あぁ、そうでないと困るからな」
そう言ってライカは今一度俺の方に視線を向ける。俺は今すぐにでもこの場を立ち去りたかった。
「……話は終わりですか? 俺はこれで――」
「『救世の勇者』は最低の人間だった」
いきなりライカはそう言った。俺は思わず立ち去ろうとして動かして足を止めてしまう。
「ヤツは自分がこの世界で最強で、何でもできると思っていた。そして、仲間さえも疎ましいと思っていた……だが、俺はそんなヤツのことが好きだった……最強だったヤツのことが……」
俺は思わずライカの事を見てしまう。コイツは……一体何を話している? というか、コイツは一体誰だ?
「奴に一度殺された今でも、その気持は変わらない……アンタならわかるだろ?」
その言葉を聞いて俺は思わず目を見開いてしまう。
いや、しかし、今たしかにライカの言っていることが真実だとすれば、このライカという人物は……
「お前は……まさか……!」
と、俺がそれ以上言おうとしたその時、なぜかニヤリと微笑んだ。
「……また会おうぜ。昔の仲間のよしみで、な」
そう言ってライカの金髪が発光したかと思うと、バチッと大きな音を立てて、ライカの姿はそこからいなくなっていた。
一人残された俺は、ようやく理解する。
けじめをつけなければいけないのは、リアだけではない。俺自信もそうなのである、と。
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