第42話 邪悪の顕現
魔法陣による転移が終了すると広い場所に出た。どうやらボスのフロアに着いたようである。
「……ここか?」
リアが一歩前に出る。魔法陣の周囲を見ると……なぜだかそこには剣や杖やら……冒険者の装備品が転がっていた。
「なんだこれ……なんでこんなに……」
俺も理解できなかった。ただ、メルはなぜか青白い顔で周囲を見ている。
「……ねぇ、私……最悪な想像ができちゃったんだけど」
「え……最悪な想像って?」
「……ここにこんなにたくさん装備が転がっている理由……アンタは?」
装備がこんなに転がっている理由……考えられるのはここで多くの冒険者が倒れたということだ。
俺は落ちている剣の一つを手に取ってみる……それは、駆け出しから中級の冒険者が装備しているような剣だった。
ほかを見てみると杖も防具も……大体同じようなレベルの装備である。
「……まさか……!」
「おい! 早くボスを探すんだろ! こっちへ来てくれ!」
と、すでにリアは俺の前方に立っていた。俺は慌てて走り出す。
「リア! 早くこっちへ!」
「え? どうして――」
と、リアがそう言った瞬間だった。
リアの胸元からいきなり……剣の先端が飛び出した。俺も、そして、リアも意味がわからなかった。
「あらぁ? ま~た、経験値さん達が来たのぉ?」
ねっとりとした声が聞こえてくると共に、リアの胸元から剣が引き抜かれる。
「リアぁぁぁ!」
俺は慌てて駆け寄った。リアは完全に剣先で胸を貫かれていた。
「メル! 早く回復を――!」
と、俺がメルの方を向いたときだった。メルは……眼の前を見たまま完全に硬直してしまっている。
「あらぁ? 誰かと思ったら……仲間を置いて逃げ出したヒーラーさんじゃなぁい?」
そして、俺もメルの視線の先を見る。現れたのは……4つの人影だった。
3人はそれぞれ、勇者、戦士、魔法使いの装備をしている……しかし、その目は腐った魚のように濁っており、肌も死人のように……というか、どう見ても死体の色だった。
つまり、その3人はすでに死んでいて……メルが言っていた元仲間たちだということは瞬時に理解できた。
「もしかして、一人で寂しくなっちゃったぁ? でも言ったでしょぉ? アナタの仲間は私がもらったんだ、ってぇ」
そして、最後の一人は……ドレスを着た女性だった。大きく胸元と背中が開いた黒いドレスを着た、異様に肌が白い女性……
「あれが……ネクロマンサー……」
メルの因縁の敵は、俺達がすでに最悪の状況に片足を突っ込んでいる状況でついに現れたのであった。
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