第7話 「夏祭り」 パート3
「うわぁ、凄く人がいっぱい集まってるね」
「もっと早く来て置けば良かったのかなぁ・・・?」
「どうせ花火は夜空に打ち上がるんだ」
「どこで見たって綺麗に見えるんじゃないのか」
「適当に人だかりを避けて座れる場所を探そうぜ!」
「ねぇ、なるだけ2人だけで見れる所がいいわ」
「そんなこと言ったってこれだけの人が居るんだぞ」
「2人だけで見れる場所なんて無いと思うがなぁ・・・」
「お前がそう言うんなら向こうの方に歩きながらなるだけ2人で見れるような場所を探してみるか?」
「ありがとう!」
「折角、2人で初めて来たんだもんな!?」
「何とかお前の希望に叶うような所があるといいな」
「今日は随分、歩いてるけど足は痛くないか?」
「そこの小高い場所で子供の頃によく秘密基地を作って遊んでたんだが2人が並んで座れるぐらいの場所はたくさんあったように思うぞ」
「足が大丈夫なら行ってみるか?」
「うん! 行ってみる・・・連れてって」
「よし、手を貸せ! 俺が引っ張って行ってやる」
「・・・」
「ん・・・どうしたんだ?」
「何だかいつも大事な時は頼りになるなぁって」
「そう思ったら何だか・・・涙が出ちゃった」
「泣いたりして・・・ごめんなさい」
「いいんだよ、お前も素直な時は可愛いんだとわかって俺はちょっと安心したぞ!」
「さあ、登るからしっかりと握ってるんだぞ」
「すぐそこら辺だからな!」
「・・・」
「・・・」
「子供の頃はもうちょっと広かったような気がするんだが俺たちが大きくなり過ぎたのかな・・・あはは」
「何だかピッタリ寄り添ってるみたいでいいわ」
「それにここからだと花火も良く見えそう!」
「とってもいい場所がみつかって良かったじゃない」
「そうかな、でも喜んでくれて嬉しいよ」
「???・・・その声だと多分、喜んでるんだよな?」
「さっきからお面をつけたまんまなんでお前の喜んでる気持ちがイマイチ掴めないんだけど・・・」
「それにさぁ」
「いくらどらえもんのお面だからって声まで真似る必要はないんじゃないのか?」
「俺、吹き出しそうになるのをさっきから相当、我慢し続けてるんだけどそれって照れ隠しなんだよな?」
「これが無いとこんな近くであなたの顔を見ながら喋ることが出来ないじゃない・・・」
「あっ! 上がった」
「わぁー、すごく綺麗だよねっ!」
「こんな近くで見る、お前の顔はこんなに綺麗なんだ」
「えっ、何て言ったの?」
「花火の音が大きくて聴こえなかったわ」
「ワザと聴こえないように言ったんだよ!」
「えぇー!? そんなのズルいわ」
「あっ、花火に感動しちゃって忘れるとこだつた」
「まだ花火、終わんないよね!?」
「何を慌ててやってるんだ・・・」
「ん、シガーチョコが食べたくなったのか?」
「ち、違うの! これは・・・」
「何か理由が無いと唇ってくっかないじゃ・・・ない?」
「それに・・・チョコも大好きだって言ってたよね?」
「そっかぁ、だからあんなに急いでたんだ」
「まるで子供みたいな秘密の大作戦だったんだな?」
「・・・」
「でも失敗しちゃった・・・」
「キスする理由なら他にもあるぞ!」
「えっ、ホント!?」
「あぁ、俺はお前が大好きだからな!」
「あっ、お面を被らなきゃ・・・」
「嬉しくて・・・また泣いちゃいそう」
「!?・・・」
「ちょっと短か過ぎた・・・かな?」
「初めてだったからわからなくてごめんな」
「私も初めてだったから・・・」
「ちょっと待ってね」
「ん・・・何を探してんだ?」
「これよ!」
「今度はイチゴ味でもう一度してくれる?」
「・・・」
「お前の脳みそは一回、精密検査する必要があるな?」
「次はお前が理由を作ればいいじゃないか」
「そ、そうよね」
「私も・・・大好きよ」
「・・・」
「・・・」
綺麗な花火を見ながら2人の理由探しはこうして何度も続いて行くのだった・・・
恋に理由なんて必要ないのにね。
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