温泉7
「怖い空間だあ。俺は一体何を見せられているんだろう」
「ここであまり俺とか言わないほうがいいとは思うよ。さっきあんなこと言った手前言いにくいけどさ」
「それはつまり……」
「世間体だよ。いくら私たちが良くてもよくないと考える人は山ほどいるってこと。くだらないよね」
それはその通りだ。だがそれを荒川と抱き合った状態の奴が言うことはできるセリフなのかは疑問しかない。そっちの方がよほど世間的に良くないだろう。一言いいたい。痴女ではないかと。
「お前ら痴女ってやつなのか」
そして言うことをやめることはできなかった。仕方ない。
「痴女上等」
とんでもないことを言うやつがいた。美海よりぶっ飛んでいるのか。
「三浦からも何か言ってくれよ」
そのとき助け舟を期待した俺がバカだった。
「グッジョブ」
何だよそれ!! この状況を看過していいとでもいうのか。
「この状況最高にたぎるじゃないか! あたし的には静観しているのが一番すきなんだなこれは」
「ちょっと何言っているのかわからないんだけど!?」
「じゃ、わかりやすく説明するとね、あたしはこのような状況が生まれることを望んでいるってこと」
全然説明になっていない説明だな。それ以上を求めても無駄かもしれない。と、そう思っている間にも2人は抱きしめあっている。いい加減にしろよお前ら。いくら人が全然いなくてもいないわけじゃないんだから。
「そろそろ恥ずかしいよ。ひーちゃん、はなしてよ」
「確かに。そろそろ限界かもしれない。ここに人が全くいなかったらもう少しできたかもしれないのに残念」
「いやあたしはいいもの見させてもらって満足したぜ」
この三人思った以上にアブナイ人たちなのかもしれない。襲われるかの心配が美海だけでい。荒川と三浦にも襲われる気もしてきた。怖いんだけど。
ここで襲うなよなんて言えないしな。どうしよう。俺、さっきからどうしようしか言っていない気がするな。ここはさっさと出てしまうのが吉だ。
「も、もう出てもいいかな。少しのぼせちゃったみたい」
「そっか。じゃ、私たちも出ようか。もう十分楽しんだしね」
というわけで4人とも出て着替えたわけだが体はぽかぽかになった。いやいい気分だな。
「風呂上がりには牛乳だよな」
「その通りだ。花崎わかっているじゃないか」
風呂上がりのいっぱい。これが大人になったらビールになるのかな。
「ここには自販機あるのか?」
「脱衣所から出たらすぐにあるよ。買ったら休憩所で飲みましょう」
美海が教えてくれた。というわけでさっさと着替えていこう。
「君もブラ付けるの慣れてきたのかな」
「な、突然何を言っているんだ!?」
美海はとんでもないことを聞いてくる。多分好奇心からなんだろうけど、唐突すぎてむせそうだ。
「手つきがいいからさ慣れたのかなって思っただけ」
「そ、そうなんだ。確かに少しは慣れたとは思う」
考えてみればもうあって当たり前の存在になってきている。なれって怖いな。どんなものでも、ってことはないだろうけどある程度のものならすぐになれるのだから。
「ま、それに関しては早くなれたほうがいいだろうしよかったね」
まったくその通りと荒川と三浦はうなずいている。そんなものなのかな。
とりあえず牛乳を買って休憩所に行って腰を下ろした。
「やっぱり風呂上がりの牛乳は最高だな!」
豪快に牛乳を飲んだ三浦は心底楽しそうだ。俺も飲んでみるけど、美味しい。これだけは不変であり普遍なのだろう。でもちょっと語感が悪いから口には出さないでおこう。でも気に入った表現かもしれない。
「それでだな、美海。少し聞きたいことがあるんだけど大丈夫か?」
「聞きたいことは分かっているから言わなくても大丈夫だよ」
――――――――――――――――――――――――――
少し遅くなりました。今回でやっと温泉回も終わりです。次からは美海のお話です。これは1話で終わります。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます