ショッピング2
「お、おいここアクセサリーショップだよな。今日は服を買うんじゃなかったのか?」
隣にあるのは時計屋と靴屋で間違えているとも思わないが、一応確認しておこう。
「何も服だけじゃないよ。だって君を着飾るって言ったじゃん」
姉のように問題行動を起こすことはないだあろうが、それでも美海の鼻息が荒いこともあり不安だ。周囲を見てみる。三浦と荒川は隣にもういない。どうやら店に入っているようだ。品物を選んでいる二人が見える。俺も店に恐る恐る入ってみた。
「二人ともなんかいいのはあった?」
「いやあたし的にはこれがいいんじゃないかって思うんだけど、陽菜乃はこれがいいんじゃないかって分かれちゃったんだよ」
「それなら本人に試してもらうのが一番いい。私はう~んと、これ!」
美海は気に入ったアクセサリーを手に取ると俺につけてきた。それは首飾りだ。さすがに本物の宝石を使っているということはないはずだからガラスか何かなのだろう。色は青く、海を連想させるみずみずしさだ。これは男であってもつけていてもおかしくないデザインだ。紐を変えればつけたいものだ。
「紐を変えられる?」
「これだからいいと思うんだけどなあ。でもまあ、変えられるとは思うけど。その分少し値段は高くなると思うし」
「と、とりあえず荒川は何を?」
「私はこのイアリング。やっぱり花崎君には青が似合うのかな。私も青にしたんだ。でもイアリングは試すことはやめたほうがいいし少し近づけて合わせてみよう」
俺としてはこれがどの程度にあっているかとか、いいものなのかおしゃれなのかとかまったくわからない。それに耳に穴をあける気はないぞ。
「イアリングはよくわからないな。でも人から見て青が俺に合う色だってことは変わらないことは分かったよ」
「ははは、イアリングなぞ選ぶからだ。その点私は安心だぞ。指輪だからな。これはどうだ花崎」
そういって三浦が差し出したのは派手でもない指輪だった。色は銀色。ごてごてした装飾もなく普段使いしてもよいアクセサアリーに入るだろう。でも指輪は抵抗がある。
「いい指輪だとは思うけど、これをつけるのは何というかなんか違和感がある……気持ち的に」
「それなら慣らしていく意味合いも込めて三つとも買おうよ」
美海は想定外の提案をしてきた。断ろうともしたがそれいいなといった三浦と目を輝かせて賛同した荒川、そして顔を近づけてにっこりと笑みを浮かべて圧力をかけてきた美海の三人に碌にモノを言うこともできずに購入する流れとなった。これで本当にいいのだろうか。
「せっかくだし、花崎君そのネックレスだけでもつけてみたら?」
「確かにそれもそうだな」
この首飾りをつけたからと言って何かが変わることはないだろう。しかしこれをつけることで意識を少しだけでも変えることはできる。俺はまだどうしていいかはわからない。いくら名前を変えたところで中身が変わることなんてあるのだろうか。
「ねえ、今、すごく難しいこと考えてたでしょう」
「美海……、どうしてわかったんだ。その、俺が考え事してたこと」
「顔を見れば分かるよ。だって、だってさ君、すごく真剣で悲しそうな顔をしていたんだもん」
俺はそんな顔をしていたのか。意外というか、そこまで顔に出ていたんてどうしたんだろう。不思議としか言いようがない。
「何か悩みがあるなら相談には乗るけど?」
「いや、これは誰に相談してどうこうできる問題じゃないし、自分だけで決着をつけないといけない問題だから」
「……少しくらいは……」
そのあとは聞こえなかった。本当は何か言うべきなのだろうが、あえて何も言わなかった。聞こえないふりはしていない。
「何、二人してみょうちくりんな顔してるんだよ。ホラ次の店に行くぞ」
飲み物を買いに行っていた二人が戻ってきた。
「そうそう、次のお店はあそこだよ」
三浦が人差し指で指したのは一つ下の階にある靴屋だ。あれ、靴屋は隣にもなかったかな。少し目線を横にやると確かに横に靴屋がある。しかし三人はその靴屋には目もくれずに、一階下の靴屋の照準を合わせている。どういうことだ。
「あの、美海さん靴屋なら横にもあるんだすが……」
「横の店には私たちが求めている靴の種類が少ないのよ。どちらかというと運動靴とか革系統のサラリーマンの履いているような靴が多いの」
「それで、下の靴屋はあそことは毛色が違う靴があるとそういうことか」
「そういうこと。わかればよろしい」
俺たちは下の階におりて靴屋に入った。スニーカーも沢山おいてあるし、結構品数も豊富ないいみせだ。ここで靴を買ったことも一度ではない。
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大変お待たせいたしました。しばらく書くことができていませんでしたが何とかかくことができました。これからもよろしくお願いします。
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