登校2
「病院にいったら、性転換症候群っていうのにかかってるって言われた」
「それ、聞いたことがあるぞ。性別が突然変わる奇病で元も戻る方法も原因も不明だって」
「おおむね、それであっていると思う」
「それは大変なことになったな。困ったことがあったらいつでも俺たちに言ってくれよ。みんなもそうだよな」
蓮が俺の周囲にいた奴らに確認した。そうだいつでも頼れよと言ってくれた。このクラスの人は暖かい。
「ありがとう」
そんなの顔が緩くならないわけがないじゃないか。
「それで……どう女の子になった気分は?」
「確かにーそれ、私も聞きたい」
「美海、よく聞いた」
美海の側にいた女子がグッジョブと美海を褒め称えた。デリカシーのない奴だ。
「どうも何もすごく困ってるとしか言いようがないよ。ちょっと想像してみろよ、目が覚めたら性別が変わってるんだぞ。それで混乱しないほうがおかしいし、どうしていいかわからないじゃないか」
「確かにそれはそうね。それならどうして女子の制服なんて着ているの?」
「姉ちゃんのがあって、今の体格だと俺の制服は大きいから借りたんだ。ついでに言うと、昨日は姉ちゃんに着せ替え人形にされて散々だった」
「それは私も見てみたかった」
「はあ?」
どうして美海が悔しそうな顔をするんだ。美海も姉と同じような気質を持っているというのか。
「だって、そんな恥じらう女の子は見てみたいに決まってるじゃない」
ダメだこの人。
「俺はどこに救いを求めればいいんだ」
「俺に救いを求めてもいいんだぜ」
蓮はそう言ってくれるが、目つきが怖い。明らかに俺とは別のほうを見ている。それはどこかというと、美海のほうだ。美海も美海で蓮のことをすごい表情で見ているどういうことだこれは。
「あのー、お二方ともどうされました?」
二人とも、俺とは接点があったけど、二人での接点はそこまでなかったはず。それなのに急にどうしたんだろう。
「いや、このいかがわしいことを考えている女を見ているだけだが」
「奇遇ね、私も下賤な目を向けるあなたを見ていたのよ」
何この二人、目には見えないけれど、威圧間満載のビームを打ち合っているような感じだ。それに当たったら、命がとられることはないけど、ただでは済まないだろう。
「あなたは恵也をそんな目で見て、恵也にとってどんな存在なのかな?」
「親友だ。昔馴染みで幼馴染ということになる。そういうお前は恵也のなんなんだよ」
そうだ、蓮とは幼稚園の頃からの付き合いだ。そのころに家が近いことがわかってからは、よく遊ぶようになった。本当に信用できる友人の一人だ。
「私と恵也は中学校からの付き合いだけど、友情に期間は関係ないわ」
美海とは中学の頃に出会い、互いの家も知っているほどの関係だ。と言っても恋愛感情を抱いたことはない。そのころは男女の差異なんてそこまで気にしていなかった。そのままこの関係が続いている。一番仲のいい、異性だ。
「二人とも、俺の顔に面じて喧嘩みたいなことはやめてくれないかな。ほら、二人とも知り合うことができたわけだし」
「ちっ! ここは恵也に免じて引くけど、今度何か変なことをしたら警察に突き出すから」
「それはこっちのセリフだ。お前が恵也に何かしたら、俺は絶対に許さない」
二人は険悪になりながらも、引いてくれた。だが一触即発な状況には変わりなく、発言には最新の注意を払う必要があるだろう。
この状況になった理由を誰かに説明してほしいものだ。
「はあー、もう嫌だ……」
まだ一限目も始まっていないというのに、すごく疲れた。帰りたい。
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