剣と魔法のVRMMORPGで【拳銃】に存在価値を持たせる10くらいの方法

ポンデ林 順三郎

プロローグ

 『Ken & Maho Online』、それは剣と魔法の世界で冒険するVRMMORPG。

 その運営はKMOの世界を愛していた。


 故に、妥協の産物である銃カテゴリ――その1属1種の汚点武器【拳銃】を、既にKMOの世界の一部となったそれを、にする気はない。

 ただ只管に冷遇するだけだ。



 【拳銃】は使腕力STR知力INTのステータスに依存しない、固定威力だから。

 最大弾数6発、1分に1発自動で弾丸が補充される飛び道具は、ゲームの最序盤レベル10帯までなら護身に役立つこともある。

 ちょっと進んだ辺りレベル20帯までなら牽制に使えなくもない。

 もう少し進んだ頃レベル30帯までになるとカスダメが限界。

 現時点の最前線レベル80帯では人型MOBにも無慈悲に弾かれるのみ。


 今や【拳銃】を武器として使う者はいない。その実装を運営に提案した者達ですらだ。

 精々、コスプレの小道具として使うか、ユーザイベントの開会時にクラッカーとしてか。



 その状況に疑問を持ち、異を唱える者がいた。

 それは1人のDEX極振り無課金生産職プレイヤーだった。


「全ての武器には価値がある。私はそれを証明したい」

「本音は?」

「今更STRやINTに振りたくないし、どうにか固定威力が使い物にならないものか」


 そしてあわよくば、今一度【拳銃】がブームを巻き起こし、余った最下級アイアンインゴットで無駄に大量生産した在庫の【拳銃】が捌けないものか――と。

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