第378話 バーコードバトル 前編
「町内会バーコードバトル?」
「はい、概要これです」
俺は雷火ちゃんから、町内会が発行しているチラシを受け取る。
そこには町内の町興しで、ゲーム大会が行われる旨が記載されている。
「バーコードバトルって、昔そんなゲーム機あったよね」
「はい、バーコードリーダーでバーコードを読み取り、ステータスを付与して戦わせるものですね」
「ウーロン茶とかカップ麺のキャラがいるんだよね。かくれんぼ大会といい、いろいろやる町内だな」
「従来のものと違って、バーコードを5枚読み取った合算で戦うそうです。また同じバーコードは使用できないそうです」
「なるほど、それなら皆同じバーコードってことになりにくいね」
「景品はバーコードバトルで使用したものが、そのまま貰えるそうです」
「へーってことは、車のバーコード使ったら車もらえるのかな」
「どうでしょう? 車にバーコードがあるのかもわかりませんが。あとルールは3人1チーム制みたです」
「結構面白そうだね、静さん辺り誘ってやってみようか」
その後静さんからはあっさり了承がとれ、俺達はバーコードバトルに参加することになった。
イベント当日――
駅前広場に集まった人間はやはり若者が多く、大体80人ぐらいいるんじゃないだろうか。
町内のイベントらしいが、外部からも参加OKらしく、そのおかげで賑わっているようだ。
しばらく待つと、町内会会長がメガホン片手に姿を現す。
「それではルールを説明します。まず皆さんのスマホにバーコードバトルアプリを入れていただきます。このアプリを立ち上げると画面にモンスターが表示されます。このモンスターはバーコードを餌として成長します。餌のあげ方はカメラを立ち上げバーコードをかざして下さい。アプリが自動で餌データを作成しますので、強い餌だと思ったらモンスターに食べさせて下さい。最大5枚までバーコード餌を食べさせ強化することができます」
俺は説明の間にバーコードバトルをインストールする。
アプリを起動すると、説明通り卵の殻を被ったひよこみたいなモンスターが生成された。
試しに持っていた、コーヒーのペットボトルのバーコードをカメラにかざす。
すると攻撃力500、体力1500、敏捷500の餌が出来上がった。
どうやらこれを食べさせるとモンスターが成長するようだ。
一旦キャンセルして説明の続きを聞く。
「ここからがゲームのミソですが、バーコードは全てこの町内のお店から選んで下さい。自分で持ってきたものはダメです。また使用したバーコードは手に所持して下さい。例で言うと、ボールペン、消しゴムのバーコードを使用したら手に持ち、服や靴なんかを使った場合は身につけて下さい」
なるほど、手に持てなかったり身に付けられないものは賞品とはならないわけだな。
「またチーム内で同じ種類のものは一つとします。チームメイトが少年ジャソプのバーコードを使用したら、他のメンバーはジャソプは使えません。別のマガジソなどは大丈夫です」
強いバーコード一つ見つけたら、絶対皆で回しちゃうもんな。
「バーコード集めの時間は今から2時間、それが終わったらこの広場に戻ってきて自由対戦会をします。対戦会で3勝すれば、使用したバーコードの商品は全て差し上げます。ただし一度でも負けると失格、商品は没収となります」
とりあえず強いバーコードを5枚探す。使用した商品は全て身につける。モンスターを育て上げてから対戦会と。
「それではスタートです!」
会長がホイッスルが鳴らすと、参加者は弾かれたように町内の商店街を漁る。
「悠介さん、まずどこから探します?」
「かさばらなくて重くないもの、尚且つ賞品となって嬉しいもの。ゲーム店から行こう!」
「賛成です!」
「悠君、お姉ちゃんは画材屋さんに行ってきてもいいかしら?」
「OK、静さんは後で合流しよう」
俺と雷火ちゃんは商店街のゲーム店へと入る。
すると同じ考えをした参加者が無数にいた。
「先越される前に俺達もバーコードを調べよう!」
「はい!」
俺と雷火ちゃんは、パッケージ裏のバーコードを次々に読み取っていく。
しかし、そのどれもがパッとしない。
「攻撃力1000、体力500、敏捷1000。弱いなこれ……」
「こっちも攻撃力2000、体力100、敏捷1000です」
「体力数値が極端に低い。プレイヤーがオタクだから、お前ら体力ないだろ? ってことか?」
「どうします悠介さん、もしかしたら強いのもあるかもしれませんけど、大体どれも似たりよったりですよ」
「仕方ない、一旦ここを出よう」
俺達がゲーム屋の外に出て、次どこに入ろうかと考えているとコンビニから参加者らしき声が聞こえる。
「やったぞ、このカップ麺攻撃力2万2千、体力1万9千だ!」
くっ、やっぱりカップ麺が強いか。なぜか昔からカップ麺が強いんだよな。
「我々もカップ麺行きます?」
「いくら強くても、賞品にカップ麺はなぁ」
「勝っても嬉しくないですよね」
わりとこのシステムよくできてる。強いバーコードならなんでもいいじゃなくて、ちゃんと貰って嬉しい高価なものにしないとけいない。
「悠介さん、ここどうですか?」
雷火ちゃんが指差すのは、PCパーツのジャンク屋。
「掘り出し物はありそうな気がする」
ジャンク屋に入り、雷火ちゃんはすぐに当たりを見つける。
「うわ攻撃力2万5千、体力1万、敏捷5万、見つけました!」
「えっ、すごっ! なにが強かったの?」
「新型のCPUですね」
「なるほど、処理速度が早いから敏捷が高いのかもしれない」
「こっちのセキュリティソフトは体力6万あります」
「すごい、あっ俺も強いの見つけた!」
アプリには攻撃力4万、体力6万が表示される。
なんだこれはと思ったらエロゲだった。
「やっぱりエロは強いんですね……」
「そうみたい。俺はこれだけにして、あとは雷火ちゃんがこの店漁ろうか。君のほうがパーツの目利きがきくし」
「わかりました、PCパーツでビルド組みます」
俺はエロゲ片手に雷火ちゃんと分かれ、次はスポーツショップへと向かう。
「バットとか多分強いだろ」
そう思いバットのバーコードを読み込むと、敏捷は高かったが今ひとつ伸び悩んでいる。他にもラグビーボールや、テニスラケットなど強そうなものを読み込んでみるもイマイチ。
そこで俺の目に入ったのが、ゲートボール用アイアンハンマー。
「意外とこういう老人が使うものが強いのでは?」
そう思いバーコードを読み取ると、攻撃力1、体力1、敏捷1という凄まじい数値を叩き出す。
「一番弱いバーコード探せ部門だったら1位とれたかもしれん……」
何かいいものは無いかと探すと、サイクリング用指ぬきグローブが攻撃力4万、体力5万とかなりの高水準だった。
それとスポーツ用の頑丈なフレームメガネも攻撃力3万5千、体力4万と強い。
「よし、これで3つ」
次は服屋にしてみるかと思い、ブティックへと向かう。
そこでは静さんが服のバーコードを読み込んでいるところだった。
「静さん」
「悠君」
「強いバーコード見つかった?」
「マンガ用品はあんまりだったの。何が強いのかしら?」
「う~ん、ランダム性が強いからほんと宝探しだよね。あれ? 静さん上の服かわった?」
最初長袖のブラウスだったはずだが、ノースリーブに変わっている。
「うん、これは強そうだったから。でもちょっとサイズがあってないの」
確かに静さんの胸周りはかなり苦しそうで、ボタンがはちきれんとしている。
「大分やばそうだね」
力んだら多分ボタンが吹っ飛ぶだろう。
俺は適当に服のバーコードを読み取る。
すると攻撃力8万というバカみたいに高い数値が出てきた。
「はっ? なにこれ?」
驚いて布切れを広げる。それはところどころ透けたセクシーな黒の下着だった。
サイドはヒモで、後ろのヒップ部分には薔薇が刺繍されている。
こんなのエッチな動画でしか見たことないが、やはりエロは強いという情報は正しそうだ。
ちなみに値段は12万円。
「たっか……えっこの布地面積で12万ってマジ?」
また別のガーターベルトも同等の数値を叩き出す。
「静さん、これめちゃくちゃ強いんだけど使う……?」
「で、でも、さすがに下着の着用はマズイよね?」
「ちょっと運営に聞いてみるよ」
運営に問い合わせてみると、負けた時に買い取るのであればOK。衣類は必ず身につけて参加してもらうとのこと。
また下着であれば、着用していれば別に見えていなくてもいいとのこと。
「というわけなんだけど、どうしようか。負けた時買い取りのリスクが大きいけど」
「悠君、このバーコードって強いの?」
「めちゃくちゃ強いと思う。多分一枚で強いカード2枚分くらいの強さがある」
「じゃ、じゃあ使おっか。プライベート用に持っててもいいと思うし」
彼女は試着室に入って、下着とガーターベルトを身に着けて出てくる。
「ど、どうかな?」
「どうと言われても見えない」
彼女の格好はノースリーブの白のブラウスに、黒のロングスカート姿で下着は見えない。
「確認してもいいわよ。結婚してるわけだし……ね?」
「…………」
頬を染め、自身のロングスカートをつまむ静さん。
まぁ確かにここは旦那権限で確認しておかなければならない。
ないとは思うが着用してなかったら不正だしな。
俺は静さんと一緒に狭い試着室に入り、ロングスカートをたくし上げて中を確認する。
鋭いVカットのエグいパンツだ。大丈夫、ちゃんとガーターベルトも着用している。
ブラの方は白のブラウスから透けて見えているので見る必要はないが……いや、一応確認だけはしておこう。
・
・
・
「大丈夫、不正はない!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます