異世界ラジオ、実況中！

異世界ラジオ『滅びゆく世界から』

「さて、『異世界ラジオ、実況中！』が本格的に始まったよー！」

「……何だかんだで承諾はしましたけど、本当に始まってしまいましたか」

「まぁまぁそう言わないの、天使ちゃん！　さて、パーソナリティーを務めるのは万能神のこの俺と！」

「……？　万能神様、こっちを見てきていますけど、なんですか？」

「いや、ここは天使ちゃんの挨拶だよね！？　ほら、天使ちゃんが一緒にやるって言ったんだし、そこはちゃんとしようよ！？」

「……なんだか少し釈然としませんが、まぁそれは一理はありますね。もう一人のパーソナリティーは駄目な万能神の秘書を押し付け……ゴホン、務めさせていただいている天使の私になります」

「え、天使ちゃんって秘書を押し付けられてたの？」

「誰もやりたがらないからですよ！」

「あ、そうなんだ。それはご愁傷様」

「元凶が他人事なのは何でなんですか！？」

「さてと、記念すべき第一回の世界はどこにしようかなー？」

「スルーですか、そうですか。……ところで何故ルーレットとダーツを用意しているんです？」

「え、これで実況する世界を決めるからだけど？」

「そんな決め方なんですか！？　ちょっと待ってください、それなら私の方で確認が必要な世界をピックアップして選んできますから！」

「あ、そうなの？　それじゃ次回からはそれでいくとして、今回はこれでいくからねー」

「……今回だけですよ。次回からはちゃんと用意してきますからね」

「うん、よろしくー！　それじゃエイヤッ！　あっ……」

「……そこで外してどうするんですか」

「ふっふっふ、天使ちゃん、どこが外してるって？」

「そりゃダーツの矢がルーレットに当たらずに見当違いな……って、あれ？　普通に刺さってますね」

「この俺に失敗なんてないのさ！」

「……転移させましたね？」

「ひゅー、ひゅー」

「口笛吹けてないですし、思いっきり誤魔化そうとしてますよね！？」

「まぁまぁ、それは良いじゃん！　という事で、今回の世界はこちら！」

「……まぁ良いですけど……って、この世界、滅びかけてるじゃないですか！？」

「あらま、戦争中でやばいのぶっ放しまくってるねー。うん、これならそう遠くない内に滅びるだけだし、見てて面白くもないから他のに変えて……」

「他のに変えてって、ちょっと待ってください！　これこそ、担当の神が放置してる世界じゃないですか！？」

「うん、そうだねー。管理不行き届きって事で、この世界の担当の神は更迭でいっか」

「いや、それはそれで必要なんですけど、滅ぶのは放置なんですか！？」

「だって、この企画って実況するだけだよ？　それとも天使ちゃんは、大勢の人が死んでいくのを事細かに、グロテスクに、残酷に実況をする方が良い？」

「……いえ、それは流石に遠慮しておきます。そういうのは邪神様や死神様の担当なので……」

「そうだよねー！　って、あれ？　今の世界からお便りが届いたね」

「……本当に割り込みをかけたんですね。そういう所は無駄に芸が細かい……」

「いやー、それほどでも？」

「褒めてませんからね！　それでどういう内容なんです？」

「んー、折角だから天使ちゃんに読み上げてもらおうかな。はい、これがお便り」

「あ、はい。えーと、この世界の巫女の方ですね。『いつからか聞こえなくなっていた神託が再び聞こえるようになりました。……正直、何がなんだか分かりませんでした。ですが神様がいるのでしたら、この世界をお救い下さい！　私はどうなっても構いませんから、罪のない人々が生き残れる希望を……どうか！　どうか、お願い致します……』って、無茶苦茶切実な願いじゃないですか！？」

「えー、でもそんなのよく聞くやつじゃん？」

「……まぁそう言われるとそうですが、それを聞き届けるのも神の役目でしょう！？　この世界の担当の神は一体何をしてるんです！」

「あー、今確認したけど、兵器の動力源として囚われてるっぽいぞ。うっわ、この世界の担当は二柱なのに、別勢力にそれぞれ捕まってんじゃん。神が何やってんだよー」

「何やってんですか、この世界の人類はー！？　神を動力源にって、罰当たりにも程があるでしょう！？　っていうか、シレッと過去視を使わないで下さいよ」

「いや、だから罰が当たってんじゃん。ほら、そういう暴走を止められなかった神もあれだけど、そういう人類は滅んでも仕方なし。あ、天使ちゃん、人類以外は助けといて、頃合いを見計らって世界の再生しといて」

「それはやりますけど、自己犠牲の巫女さんとか、罪のない人々はどうするんですか！？」

「ん？　助けないけど？」

「いやいや、助けましょうよ！　折角の初の願いのお便りですし！」

「えー、神を動力源にした兵器で殺し合ってる人類なんか助けたら、それこそその神達がキレてくるし、知り合いの神もブチ切れるよ？　まぁその対応するの俺じゃなくて、天使ちゃんだけど」

「それでも構いませんから、助けてあげてくださいよ！？」

「おーし、その言葉に二言はないな、天使ちゃん？」

「……えぇ、二言はありませんよ！」

「んじゃ、ほいっと！」

「あ、担当の二柱の神を捉えていた兵器が吹き飛び……って、世界まで余波で吹き飛んだじゃないですかー！？」

「いやいや、よく見なって、天使ちゃん」

「あ……、世界が再生……していく？」

「さっきのお便りの巫女の子を神格に上げて、再生を担当させたから。あー、巫女ちゃん、聞こえるー？　指令はさっき出した分を頑張ってね」

「あ、驚いてますね。まぁいきなり神格に上げられたら驚きますか」

「俺の力で巫女ちゃんを神にしたから、先輩の二柱の荒神を抑えるのが初仕事な。それが出来なきゃ、滅ぶだけだから頑張れー！」

「新神に無茶な事を言いますね！？　あ、私の方でフォローをしていただける神の方を手配しておきますので、巫女さんはお気を確かに――」

「……天使ちゃん、そう言ってるとこ悪いんだけど、向こうに声を届かせるのは俺しか出来ないからね？　神じゃない天使ちゃんには無理だからね」

「そういえばそうでした！？　こうしちゃいられないです！」

「あ、天使ちゃんが行っちゃった。とりあえず天使ちゃんの要望には応えたけど、実況としては見所がなくてイマイチだったねー。ま、それは仕方ないから、次回は実況に向いてる世界を見たいとこだよ」

「あ、万能神様、一応お礼は言っておきますね！」

「……なんか天使ちゃんにお礼を言われると調子が狂うなー。さて、今回はここまで！　リスナーのみんな、お便り待ってるよー！　それでは次回をお楽しみに！」