10巻最終話



『GG』『GG』『GG』『オリビアもよく頑張った』『俺もケルベロス飼いたいな』『GG』『楽しかった』『これ修繕費やばそうだな』『こいつら何か壊してないと気が済まないのか?』



「……ケホ。……3人共、お疲れ様」


 爆散したガラスの破片で傷だらけの支部長が、瓦礫を上り下りしながら3人に近づく。


「これで試験は終了だ。今日から君達も正式なハンターとなる。……くれぐれも、節度を持って、行動してくれ」


「ん。乙」


 頼むから、と念を押す支部長に背を向け、さっさと去ろうとするノエル。

 その後ろからオリビアが抱きついた。


「ンみゅ」「わーノエル待ってよぉ!この後暇?ご飯でも行かない?」


「待てオリビア」


 しかし支部長がそれを制する。


「君にはまだ仕事があるだろう」


「えー、別に明日でもいいでしょ。代表だって許してくれるって!」


「ダメだ。仕事は最後まで……失礼、」


 支部長が携帯に出て、数秒後、


「……明日で良いそうだ」


「やった!流石代表、愛してる!」


 生きてる監視カメラに投げキッスを送るオリビア。


 胸から抜け出したノエルは、そのままADの前に座る。


「今日はここまで。皆乙」



『えーーーー』『んな殺生な⁉︎』『乙〜』『乙〜』『楽しかったよ〜』『ノエルたん可愛い』『もっと見てぇ〜』『次いつ?』『久しぶりに見れて最高だった』『乙〜』『オリビア好き』



 とそんな時、


「ばフゥ、ワフルっ」「ぐるるる」「バウっ」

「おーしおしおし、ここがええんか?ここがええんか〜」


 ケルベロスの腹をワシャワシャしてた東条に、


「キ〜リマサっ」


「ん〜?」


 スキップで近づいたオリビア。


 瞬間、


「えい!」

「ぶむっ⁉︎」


「「「「「「「「「「⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎」」」」」」」」」」

『『『『『『『『『『⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎』』』』』』』』』』


 東条の顔面が、その豊満な胸に押し当てられた。


「⁉︎っ!ふがふが!」


「アハハっ、あ〜んくすぐった〜い」


 東条はもがいているフリをしながら、その香りと柔らかさを堪能する。これは不可抗力、そう!不可抗力なのだ‼︎


「あの野郎オリビアの胸を⁉︎」「俺だって揉んだことねぇのに⁉︎」「誰がお前なんかに揉ませるか」「許せねぇ!」「俺達のオリビアをよくもッ」「殺せ!」「殺せ!」「行くぞ野郎共ッッ」「……男って何でこうなの?」「バカなのよ」


 ハンター達が武器を引き抜き、観客席から飛び降り猛ダッシュで迫ってくる。


「キャっ」

「ヒャハハハッ、来いや有象無象がァアア‼︎」


 そんな男共を前に、東条はオリビアの肩を抱き寄せ、舌を出しながら自分の首をバッドサインで切り挑発。


「「「「テメェええええ‼︎」」」」


 逃げる支部長、乱れる爆炎、爆風、剣線、お姫様抱っこされ爆笑するオリビア、気分最高にハイな東条。


 そんな光景から、バカバカし、とノエルは目を逸らす。


「じゃ乙」


『嘘でしょ⁉︎』『んな殺生な⁉︎』『頑張れハンター!』『ぶっ殺せぇえ!』『見せてノエ――


 ノエルはカメラとパソコンを受け取り、ADを土に戻す。



「……お腹すいた」


 色とりどりの魔法の爆発をバックに、ホテルへと帰るのだった。





          §




「…………」


 新大陸の森の中、絶賛戦闘中であるにも関わらず、彼女はスマホ見たままその動きを止める。


「……どうした紗命?」


 葵獅も彼女に寄り、スマホを覗き込む。


「っおい2人共⁉︎俺に全部押し付けッ、何やってんだ⁉︎」


 亜門が叫びながら数10体のモンスターを捌く中、……画面の中で高笑いしながら鼻の下を伸ばす東条。


 葵獅は掌で顔を覆い、


 瞬間、


「っぶな⁉︎」


 周囲の地面が、木々が赤紫色に変色し、暴れていたモンスターが絶叫し溶解する。


「……紗命殿、環境破壊は」




「先を急ぎます」




「っ、生態系の調査がま」


「先を、急ぎます」


「……」


 真っ黒な紗命の瞳に、亜門は牙を閉じる。


「すまないな亜門、こうなったらあいつはテコでも動かん」


「……文句は東条殿に言うことにする」


 阿修羅を纏い、白い光を散らす紗命。完全に獣化した2人。


 1人の乙女と2匹の獣が、地を蹴った。





          §





「…………」


 新大陸の高山地帯、絶賛戦闘中であるにも関わらず、彼女はスマホ見たままその動きを止める。


「……どうした灰音?そっち行ったぞ」


「ゴルルッ」


 灰音を襲おうとしたモンスターを食ったネロが、そのスマホを覗き込む。……画面の中で高笑いしながら鼻の下を伸ばす東条。


 あ、主人のつがいだ!ネロは思い出す。


「ゥルルル!」




「……うん、そうだね。僕の旦那さん」




「ゴル、っ⁉︎」


 真っ黒な瞳で笑う灰音に、ネロは1歩引く。


「……行くよネロ」


「ゴ、ゴア!」


「おい」


「焔季も、もう調査は十分でしょ。乗って」


「……ったく」


 2人を乗せたネロが、周囲のモンスターを吹き飛ばし飛び上がる。



「……?」


 山の麓、真面目に植物のサンプルを採取していた朧は、見慣れた影が飛び上がるのを発見。


「おーい朧ー、行くぞー」


 そして響いてくる紅の声。



 ……1秒……2秒



「は?……は⁉︎」



 理解。


「――クソがッッ」


 全力で駆け出した。






 10巻〜New World~

  Fin

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