第34話



 ――再び跳躍した東条は、続いてカネオヘ湾の港場へと音も無く着地する。

 周囲にいた観光客達が、ギョッとした顔で彼らを見た。


 ここには天国の海とも呼ばれる、アメリカ最大のサンドバーがある。


 東条達も数人の同乗者とフェリーに乗り込み、談笑しながら海風を切り進む。


「まぁ可愛い、お菓子食べる?」


「ん」


「お嬢さんはどこから来たの?」


「あっち」


「あっちは、ワイキキかしら」「新大陸じゃない?あははっ」「こんな美人さんだもん。あり得る〜」「違いないわ」


 ノエルが囲まれる中、東条も貰った酒を飲みながら男共と笑い合う。


「しっかしスゲェ身体だな、兄ちゃんハンターか?」


「ぷはっ、おうよ!昨日、なった!」


「マジかよ、頑張れよ。あの職は競争率激しいからな〜」「出身は?中国か?」


「センキュ!日本だよ」


「ジャパン!俺日本のアニメ大好きなんだよ!無事だと良いんだけどな」


「おお、俺も大好きだぜ。And,メイビー、日本は無事。心配しなさんな」


「そうか?あんたが言うならそうなんだろうな!」「おい兄ちゃんもう1本いるか?」「着く前に飲み干すなよ?」


「「「ダハハハ!」」」



『雰囲気良いなぁ』『見てて癒される』『分かるぅ』『おいADもっとノエたそに寄れ!』『花園に寄れ!』『草』『この2人ってコミュ力高いよな』『ね』『羨ましい』『すごいよな』『物怖じしない性格だからだろうな』『カオナシの英語拙いけど、ちゃんと会話出来てるし。マジで気持ちって大事よな』『見習お』『学ぶことが多い』



 談笑する乗客達を映すAD、をチラリと見る船長。


「……お前さんは行かなくて良いのか?」


「ピー、ピピ」


「……そうかい。……最近のロボットはすげぇな」


 チョコン、と座るADの持つパソコンの中。

 今この船に5千万人が乗っているとは、つゆも思わない船長であった。



 抜群の透明度に、どこまでも続く浅瀬。深い所でも大人の腰程しかない。

 クリアブルーとホワイトのコントラストが、太陽を反射しキラキラと輝く。


 天国に行ったことはないが、こんな場所があるなら行くのもやぶさかではない。


 東条は男達と海の中にテーブルを置き酒盛りの準備を始め、ノエルはぷかぷかと浮かび流されてゆく。



『おいノエル流れてくぞ!』『綺麗だなー』『めっちゃ良い景色』『最高じゃん』『旅行行きてーーー』『ノエルたその水着一生見てられる』『うーうーうー』『お巡りさんこっちです』



 日向ぼっこしたり、海亀と一緒に泳いだり、

 やはり自分は海の方が好きだ。そう東条とノエルは思うのだった。


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