2章 蘇った太古の楽園

旧支配者の再誕

 


 ――那覇へ向けて走り続け、数分。気付けば、2人は足を止めていた。


「…………こりゃぁ……すげぇな」


「…………(ほぁ〜)」


 東条もノエルも、目の前の光景に口を開け、顔を上にスライドする。


 沖縄の中心街。


 熱帯雨林と人工建造物の融合。


 そこは特区と比べても、緑化の次元が違った。


 見上げる程大きなトレントがそこら中に生え、その幹には呑み込まれた建造物がチラホラと顔を出している。

 外観的にはもろファンタジーで見るエルフの集落だ。


 路面のコンクリートはほぼ緑に隠れ、草の隙間から辛うじて息継ぎをしている。


 ツリーハウス化を逃れた建築物も、漏れなくツタや花で飾り付けられている。


 そして極めつけは、


「……」

「……」


「キュァ?……キュっ」


 2足歩行の爬虫類染みたモンスターが、2人に首を傾げ、そのまま去って行く。


「……」

「……」


 デカいトレントの更に上を見上げれば、長いクチバシを持ったモンスターが、皮膜をはためかせ空を飛んでいる。


 東条はあれに似た生き物を、小さい頃に見たことがあった。


「マサマサ、あれ図鑑にいた」


「ああ。俺でも知ってる」


 そう、図鑑で。



 約1億4500万年前。温暖で湿潤な、進化の最盛期。


 地上を支配していたのは、人ではなかった。


 彼等が冠するのは、紛れもない竜の異名。


「……ファンタジーの次は、タイムスリップかよ」


 場所は現代、時代を白亜。


 地球の歴史上、最大で最恐の生物群が、今この地に蘇った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る