24話

 


「ん、ぅん」


 場所は浪速危険区域のとあるネカフェ。

 寝袋からゴソゴソと出た彼女は、寝ぼけ眼でシャワーへと向かう。


 彼女は腰からハンドガンと組合謹製サバイバルナイフを抜き、ビニール袋に入れ浴室に持ち込んだ。その危機管理能力の高さは、それなりの時間を危険区域で過ごしたという証である。


「……ふぅ」


 ボブヘアから、スタイルの良い細身の身体を伝って、眠った肌を温かい水流が起こしてゆく。

 髪を掻き上げ、整った顔立ちをシャワーに晒し、今日もモンスターを狩る一日が始まった。


 スポーティなブラとパンツを履いた彼女は、両手に武器を持って寝袋へと戻る。

 リュックから服を取り出そうとした、


 その時、近くから微かな物音が響いた。


「……チッ」


 彼女は威圧的な三白眼を細め、武器を持ち、壁に背を当て少しだけ扉を開ける。


 外にいたのは一匹の獣。ずんぐりとした身体に、ボサボサの尾、血に濡れた前歯。

 リス型のモンスター『骨齧り』。


 カサカサと足を忍ばせ、しきりに鼻をひくつかせる骨齧りに、彼女は溜息を吐く。あれはすばしこくて面倒なのだ。


 溜息の音に反応し二足で立った骨齧りの前に、彼女は扉を開け堂々と出る。


「……」


「キュ?」


 一瞬の戸惑い。直後、

 骨齧りは彼女目掛けて跳躍した。


 ガキン!と閉じられた前歯に、しかし彼女の影はない。


「キィッ⁉︎」


 代わりに背中に走る激痛。反転し前歯を振るうも、やはり彼女はいない。


 焦り、辺りを見回す骨齧りは、


「……」


 今更自身の頭の上に、彼女がしゃがんでいる事に気付いた。


「――ッ‼︎ッ⁉︎」


 身を捩り振り払おうとするが、何故かその瞬間、全身が硬直し身動き一つ取れなくなる。


 押し付けられる銃口。動かない身体。骨齧りの中に混乱と焦りが渦巻く。


 彼女は顔色一つ変えず、引き金を引いた。


「……」


 脳天をぶち抜かれ倒れた死体の上から、彼女は飛び降りる。リュックを開け、スポーティなタイツ、短パン、インナー、パーカーを取り出し着替え、寝袋を仕舞った。


 その際、ポケットからカードケースが落ちる。



 ――十五夜じゅうごや 紫苑しおん―― 十七歳 二級調査員



 彼女、紫苑はカードケースを拾い、組合証と一緒にはみ出した写真を押し込む。


 今の銃声で、すぐに近くのモンスターが寄って来るだろう。


「……」


 紫苑の見ている景色が、ランニングシューズを履き終わると同時に切り替わる。


 吹き抜ける風が髪を撫で、照り差す太陽に目を窄める。


 ネカフェの屋上に立つ紫苑は、遠方の土煙を目にし、パーカーを被った。


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