第4巻 1章 首都行軍
幕間 ps.読者選考終わってて草。
§
――男は吹き抜ける薫風を鼻から吸い込み、溜息交じりに吐き出した。
見上げる青天井には、ふわりふわりと綿雲が揺蕩う。
さらに上を飛ぶ金烏は、冷涼な空気をキラキラと照らす。
男は柔らかな眩しさに目を閉じ、もう一度大きく溜息を吐いた。
「……帰りてぇ」
静かに、切に、唱えられた愚痴は、季節が運ぶ雪解けの様に、儚く、薄く、穏やかな空へと吸い込まれていった。
国により急遽増築されたこの部隊は、5.56mm小銃に耐え得る身体強化を纏える者のみで構成された、言うなればモンスターを殺すことに特化した新設部隊である。
未だ全国から手が離せない中で、東京近郊から集められた選ばれし彼等は、この日の為に常日頃から特区に入り戦闘訓練をしていたのだ。
先日協力者からの情報提供もあり、遂に今日、行軍と同時に初めてその存在が公にされた。
隊服はトレントに溶け込むよう着彩された、濃い緑と茶色の迷彩柄。
部隊を率いる三人の隊長格の腕には、白い布地に真赤な太陽、金の叢雲が刺繡された腕章が、力強く存在を主張していた。
そして気怠気に溜息を吐きまくるこの男もまた、そんな三人の中の一人なのである。
「千軸隊長、そのオタク全開のTシャツ隠してください。あと隊服は前も閉めてちゃんと着て下さい」
「あぁ、ごめんなさい。暑くて」
「ならcell切って下さい」
「それだと寒くて、」
「……もぅ。そろそろ出発ですから、準備しといてくださいね」
やれやれ、と去って行く女性隊員。
不甲斐ない上司でごめんなさいと心の中で謝りつつ、千軸は一度上げたファスナーを再び下げ、美少女Tシャツを風にはためかせた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます