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「うまく纏まったようで良かったぜ」
この会合を取り付けた毒島も、一安心と椅子に背を凭れた。
「んで毒島、悪いんだけど」
「分かってる。これから色々話し合うんだろ?俺は出てくさ」
「助かる」
見た目に寄らず空気の読める男に、東条は感謝する。本当に何でチンピラなんてやってるんだか。
そんな毒島は教室を出る際振り向き、東条に釘を刺した。
「契約も結ばれたんだ。絶対に俺達助けろよ」
「ああ。必ず。お前らがこの一週間で死なない限り、外に連れてってやるよ」
「ダハハッ、そんときゃ全力で助けに来い」
「気が向いたらな」
毒島は去り際に手を振り、扉を閉めた。
「うし、ノエル、すらいむにはどこまで任せるつもりなんだ?」
「動画の編集、サムネ、広告の作成、お金の管理、依頼の仲介、マスコミの対応etc.」
「おま……、いいんですか?」
自分が今まで適当にやっていた雑用を、全て押し付けようとするノエル。ブラックにも程があるが……。
一応彼女に確認を取る。
「ふふふっ、やってやろうじゃないですか(ボソッ)こうなったら馬車馬の如く働いてやりますよ(ボソッ)依頼は金になりそうなのだけ通して、マスコミは全部無視すればいいんですよね?(ボソッ)簡単じゃないですか(ボソッ)」
事前にノエルから聞いていたのか、まあ強ち間違ってはいないが。
「ん。それと報酬とは別に、動画の為なら収入の十%を好きに使っていい」
「そりゃまた、思い切ったな」
「な、なんですかそれ。最高じゃないですか(ボソッ)動画の為、動画の為、動画を作るの私ですし、私の為になるのは動画の為ですよね、ふへへ(ボソボソッ)何買おうかな、新しいゲーミングチェア欲しいなぁ。あとマウスも古くなってきたし、ノートパソコンも買っちゃおうかなぁ。うへ、うぇへへへへへへへへ」
「……大丈夫かこれ?」
「ん。従業員の環境を良くすれば、比例して仕事の質も上がる。すらいむはコンピューター関連の物しか欲しがらないし、一石二鳥」
「ほ~。なるほど」
腕を組む少女は宛ら、人の扱いに長けた敏腕社長だ。
「……でも気を付けた方が良い。私利私欲の為だと判断したら、問答無用で魔獣共の餌にする」
涎を垂らし妄想に耽っていた有栖は、ビクリ、と固まり、高速で首を縦に振る。
ノエルの恐ろしいところは、やると言ったら必ずやるところだ。有栖とは長く付き合っていきたい。どうかはっちゃけないで欲しいものだ。
「そういや今朝国から電話来てたよな」
「ん。準備できたら折り返してくれって」
「国から電話って何ですか⁉(ボソッ)」
今まで話を聞きたいと何度も連絡があったにも関わらず、口座を用意しろだの、金を準備しろだの、眠いだの言って、悪気はないが先延ばしになってしまっていたのだ。
流石にこれ以上焦らすのは申し訳ないし、タイミングも悪くない。
「丁度いいし、ここでやっちまおうぜ。毒島が人来ない所選んでくれたし、すらいむへの説明も省ける」
「ん。じゃ掛ける」
「あ、え、ちょまっ、相手国ですよね⁉(ボソッ)」
話についていけない有栖が、あたふたと机を並べ始める。
「この動画を見たら、晴れてすらいむも俺達と運命共同体。一緒の罪を背負う仲間だ!」
「罪⁉貴方達何やらかしたんですか⁉(ボソッ)」
「そう緊張するな。国だろうと何だろうと、情報を売りつけるのは俺達だ。終始強気でオラオラ言ってりゃいいのさ」
「そんなことできるの貴方達だけなんですって!(ボソッ)」
二人でわちゃわちゃしていると、ノエルのスマホからピっ、と音が鳴る。
『はい。私総理秘書の我道 美見と申します。お電話お待ちしておりましたノエル様』
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