息子が言った、とても重要なこと
「ぬ~ん……」
「どう? 直りそう?」
家族よりも長い時間共に生活している仕事仲間達との、涙ながらの別れを経験し、私は家へと帰宅した。
いつもより早い帰宅に、同僚は何かあったのかと心配してくれる。
いや、はっきり言って何もない。
強いて言うなら、朝からとにかく眠くて、何度もかっくんしていたからとっとと帰りたいだけで。
願わくば、電車の中で座れるならしばしの休息が欲しいだけだ。
だが。
家に帰ってきて、最初に伝えられたのは、「おかえり」の声ではない。
家に帰ると、本当に何かが、起きていた。
それが、冒頭の、私と嫁の、会話だ。
「この電子レンジ、結構古いからなぁ」
嫁と結婚してから使い続けていた電子レンジ。
それが、ついに――
「パパ上、知ってる?」
「ん? なんだ?」
何かに気づき、妙にドヤ顔の息子が私の肩に手を置く。
なんだ。息子より長い付き合いの電子レンジについての回想をものの見事に壊しおって。
もし変なことを息子が言うようなら、私の必殺技『
にこやかスマイルの息子は、私の肩をぽんぽんと軽く叩きながら、とても重要なことを言った。
「機械はね」
「いつか」
「壊れる」
うん。知ってる。
溜めて言うことでもないわ。
いつだって。
我が家は、平和だ。
さあ。
皆さんも、心に留めましょう。
「機械は、いつか、壊れる」
と。
とりあえず。
息子の坊主頭を、じょりじょりの刑に処しておきました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます