第376話 承諾

「で?西園寺の嬢ちゃんよ……その頼みに俺はどう答えると思う?」


 不機嫌そうに親父はつぶやく。その瞳をにらみつけながらかなめは笑顔を浮かべた。


「受けるね、アンタは。アンタはそう言う人だ」


 かなめはそう言って再びどんぶりを手に取った。


「俺も随分お人よしに見られたもんだな」


「じゃあ断るのか?」


 かなめは矢継ぎ早にそう言った。


 親父は目をランに向けた。小さなランは不敵な笑みを浮かべながらにらみ返す。


「アンタの腹はこの娘等が来た時から決まってたんだろ?」


 レイチェルはそう言ってほほ笑んだ。


 親父は苦笑いを浮かべつつ静かにうなづいた。


「しゃあねえね。ランと西園寺の嬢ちゃんとの仲だ。引き受けてやるよ」


「よし!」


 ランはそう言うと店の中を見回して、黙ってやり取りを見つめていた誠達一人一人を目で確認した。


「世話になったな。それじゃあ用はしまいだ。出るぞ」


 そう言ってかなめはそのまま店の出口に向かった。


「西園寺……」


 カウラは心配そうにかなめの背中を見つめた。


「ベルガー……まあいいや。全員食い終わったみたいだしな。大将!旨かったぜ」


 それだけ言うとランもまたかなめの後に続いた。誠とカウラ、アイシャはお互い顔を見合わせてそのあとに続く。島田、サラ、茜、ラーナもあわててそれに従った。


 誠達が店を出るとランがそこに立っていた。


「狙撃手が……」


 そう言いながら島田があたりを見渡す。


「馬鹿野郎。そんなことしてると本当にやられるぞ。行くぞ」


 そう言うとかなめが先頭を切って繁華街に向けて歩き出した。


 誠達も島田同様、あちこちのビルに目をやる。誠から見てもどのビルからスコープと銃口が見えるのか気になった。カウラが立ち止まっていた誠、島田、サラの肩を順番に叩いた。すでにかなり遠くに行っていた、かなめ、ラン、アイシャ、茜、ラーナに続くように促すものだった。


 気が付いた誠達は急いでかなめ達に追いついた。


「この先にカラオケボックスがある。さっき押さえた。そこ行くぞ」


 かなめはそう言ってそのまま歩みを速めた。

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