第4話 マネージャーと体力テスト

入寮日から一週間が過ぎた入学式の翌日、レン達はようやく正式に野球部に入部する事ができた。これで彼女達新入生も本格的に野球部員として活動できる。


 そして部員は寮のミーティングルームに集まっていた。

 そこで早織先生が口を開く。


「皆さん。今日はありがたい事のマネージャー志望のが二人入部してくれました。二人共入ってきてください」

「「失礼します」」


 先生の合図が掛かると、二人の生徒が入室してくる。

 入部した二人は早織先生の横に並び、レン達に向かい合う形で立っている。ちなみにレン達は椅子に座っている。


「二人共、自己紹介をしてください」

「は、はいっ。私は小林こばやしひとみです。野球が好きで、野球に関わりたくてマネージャーになりました。なので、皆さんを精一杯サポートしていきたいと思います! よろしくお願いします」


 右側の快活そうなが小林瞳というらしい。


「私は、山本やまもとのどかです。瞳が心配なのでついてきました。マネージャーをやるからにはしっかり皆さんをサポートしたいと思います。私、料理が好きで専攻学科も調理科なので、食事などは遠慮なく言ってください。腕を奮いますので」


 左側の温和そうなは山本和というようだ。


(二人とも可愛いので大歓迎だよ)


 レンは心の中でそんな事を思っていた。


 まぁ調理師免許を持ったお姉さん達をパートとして雇っているが、住み込みでいる訳ではない。

 なので、和の存在はとても助かるのだ。


「瞳ちゃんは野球好きなら、野球はやらないの?」


 瞳に亜梨紗はお得意の質問をする。


「小学生の頃に一度やってみたんですけど、私壊滅的に運動神経悪くて、案の定野球センスも壊滅的で諦めました」

「そ、そっか。何かごめんね」

「いえ、その代わり野球の戦術を勉強したり分析したりする事にしたら、ハマってしまって、そっちにシフトチェンジしました。学校でもスポーツ科学科を専攻しているので、そちらの方面で皆さんをサポートしていけたらと思っています」


 スポーツ科学科はトレーニングやコーチング理論について学んだり、マネジメント、スポーツトレーナー、スポーツ栄養学、スポーツ心理学なども学べる学科だ。

 何をどれだけ学ぶかは個人で選択出来る。


 この鎌倉学館は数多の学科を設置している。なので部活は関係なく、一般の生徒も日本中から集まる。これがマンモス校たる要因である。


 ちなみに、レンとセラは外国語科だ。

 そして、飛鳥は特進科で、春香は進学科、涼と恵李華と慧と亜梨紗は普通科で、千尋と純はスポーツ科学科、静は歴史文化学科、澪は地学科、真希は商業科、攸樹は造園科である。


 この他にも、数多くの学科が設置されている。

 今は割愛するが、必要になったらその時改めて紹介しよう。


 この学校、一学年二六クラス、A組~Z組まであり、一クラス四〇人程もいる。

 A、B組は特進科でC組以降は各科バラバラだ。共通科目の授業はクラスの教室で受け、専攻学科の授業は各自学科毎に教室を移動する仕組みになっている。


「この後、体力テストを行うので、各自準備するように」


 早織の合図で各自準備に取り掛かる。


「小林さんと山本は私の手伝いをしてください」

「「はい」」


◇ ◇ ◇


 体力テストでは三〇メートル走、五〇メートル走、ベースランニング、遠投、握力、腕力、背筋力、動体視力、柔軟性などを測定する。


 そして、どんどん体力テストを消化していく。


 全ての体力テストを終えると、再びミーティングルームに集まった。結果を皆で確認する。

 走力、パワー、肩力、動体視力、柔軟性の項目毎に順位をつけるとこうなった。


走力

一番・進藤慧

二番・ヴァレンティナ・ヴィルケヴィシュテ

三番・佐伯静

四番・椎名飛鳥

五番・杉本恵李華

六番・可児純

七番・市ノ瀬澪

八番・岡田涼

九番・セラフィーナ・ニスカヴァーラ

十番・守宮千尋

十一番・加藤亜梨紗

十二番・鈴木真希

十三番・宮野春香

十四番・武内攸樹


パワー

一番・可児純

二番・武内攸樹

三番・岡田涼

四番ヴァレンティナ・ヴィルケヴィシュテ

五番・セラフィーナ・ニスカヴァーラ

六番・進藤慧

七番・佐伯静

八番・市ノ瀬澪

九番・宮野春香

十番・杉本恵李華

十一番・守宮千尋

十二番・椎名飛鳥

十三番・鈴木真希

十四番・加藤亜梨紗


肩力

一番・ヴァレンティナ・ヴィルケヴィシュテ

二番・守宮千尋

三番・佐伯静

四番・可児純

五番・岡田涼

六番・進藤慧

七番・市ノ瀬澪

八番・宮野春香

九番・武内攸樹

十番・鈴木真希

十一番・杉本恵李華

十二番・セラフィーナ・ニスカヴァーラ

十三番・加藤亜梨紗

十四番・椎名飛鳥


動体視力

一番・可児純

二番・セラフィーナ・ニスカヴァーラ

三番・ヴァレンティナ・ヴィルケヴィシュテ

四番・椎名飛鳥

五番・武内攸樹

六番・守宮千尋

七番・岡田涼

八番・進藤慧

九番・市ノ瀬澪

十番・宮野春香

十一番・杉本恵李華

十二番・佐伯静

十三番・鈴木真希

十四番・加藤亜梨紗


柔軟性

一番・市ノ瀬澪

二番・セラフィーナ・ニスカヴァーラ

三番・加藤亜梨紗

四番・鈴木真希

五番・ヴァレンティナ・ヴィルケヴィシュテ

六番・椎名飛鳥

七番・可児純

八番・宮野春香

九番・佐伯静

十番・杉本恵李華

十一番・守宮千尋

十二番・進藤慧

十三番・岡田涼

十四番・武内攸樹


 といった感じになった。


(私は何とか全て五番以内に入れたよ。柔軟性はギリギリだったけど)


 好成績を残せたレンは一安心する。


 走力はレンも自信はあったが、慧が速すぎた。

 慧の足は次元が違う。あれ、陸上の短距離種目で世界取れるんじゃないの? と思わせるくらい速い。もちろん専門の練習は必要だろうが。

 レンはアメリカでも同世代であんなに速い人は見たことないと思っている。


「慧ちゃん。足速かったね」

「足に自信あると言っていたもんな」


 亜梨紗の言葉に涼も追従していた。


「まぁね。足だけは誰にも負けられないよ」


 慧、私、静、飛鳥、恵李華の五人は足を売りに出来る走力だ。

 純も水準以上の走力しているし、澪もそこそこだ。まぁ澪は投手なので無理な走塁する必要ないのだが。


 パワーでは純が飛び抜けていた。

 攸樹も相当なパワーだったし、涼はレンの少し上くらいだ。

 セラと慧は水準以上はある。


「可児さんの力も凄かったですね。武内さんより凄いとは驚きました」

「正直私も負けると思ってなかったから悔しかったよ」


 春香が純を褒めると、攸樹が悔しがる。


(いや、攸樹も充分凄かったよ。うん)


 レンは心の中で攸樹を褒める。


 肩力はレンが一番だった。彼女は肩に自信がある。

 二番の千尋も凄い肩していた。高校でも千尋より強肩の人いるのかな? ってくらいにだ。レンは例外だが。


(まぁ私は肩には一番自信あったから、流石に負けられないよ)


 静も中々の強肩だ。この三人が飛び抜けているだろう。

 純、涼、慧も良い肩している。投手陣が肩良いのは当然として。


「私、静より肩強い人初めて見たかも。U-15代表でも静より肩強い人いなかったと思うし」


 飛鳥のその言葉に、私と千尋に視線が集まる。


「正確に測った訳じゃないけど」


 あくまで目測での感覚らしい。


「まぁ、肩には自信あるからね」

「私も」


 視線が集まる中、レンは端的に答えると、千尋も追従した。


 動体視力はやっぱり純が凄かった。

 セラやレンも結構良い筈だが、それを更に上回る。

 順番を付けたが、総じて皆動体視力はそれなりに良い。悪いという人はいない。


「動体視力も純ちゃんが凄かったよね。まぁ、私からしたら皆凄かったけど」


 亜梨紗がそんな自虐をかます。


「加藤さんも悪い訳ではありませんよ。一般的には平均くらいですよ」


 早織が亜梨紗をフォローする。

 実際亜梨紗も動体視力が悪い訳じゃない。


「そうなんですか?」


 フォローされた亜梨紗は早織に疑問の声をあげる。


「えぇ。それに動体視力も鍛えられますから」

「私、頑張ります!」


 彼女のポジティブな所は良い所だ。

 何より可愛いし。とレンは思っていた。


 柔軟性は澪が図抜けていた。レンは軟体動物かと思った程だ。可動域が素晴らしいのだ。

 二番から四番までも高い柔軟性を誇っている。

 正直五番から下は、そこまで差はない。皆スポーツをする上では充分な柔軟性だ。


「皆さん、柔軟性はこれからも大事にしてくださいね。怪我の予防になりますから」


 そこで早織の注意が入る。

 確かに身体が硬いと怪我をしやすいので、これからもストレッチなどはしっかりやらないといけない。


 体力テストを行ったが、野球はこれが全てじゃない。あくまでも目安の一つとして参考にする程度の物だ。


 だが、このチームメンバーは総じてポテンシャルは高いだろう。


 ちなみに皆が体力テストを行った後、瞳も試しにチャレンジしていたが、レン達は彼女が野球を諦めた理由を垣間見たようだ。柔軟性はそこそこだったが。

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