自由行動
最終日一日前。私と宗則は自由行動を選んだ。
特に見たい場所があった訳ではないけど、ツーリングでのソロキャンプってものを一度経験してみたかった。
網走や他にも回りたいところがあるという、ユキとヒロシとトモくんは朝食後すぐに出発していった。私と宗則はのんびり用意。支度をしながら、途中まで一緒に走ってそこから解散してお互い気ままに行こうということになった。
「どっか行きたいところあったの?」と宗則に聞く。
「孝子じゃないけどちょっと峠には行ってみたいってのと、ちょっといいにくいんだけど……」と、峠以外にもヒロシがもしかしたらユキの事を好きなのではと思って気を遣ってみたのが理由らしい。
「トモくんってこういうとき純粋に一緒に行動しそうよね」
「……計算外だった」
「けど、めずらしいね。宗則がそういうのに気をまわすのって」
「確信はないけど、なんとなくそうなのかなーってぐらいだから、まぁ田村が一緒でも別にいいか」とすぐにいつもどおりの宗則に戻った。
「キョウはどこか行きたいところとかあんの?」
「アタシはバイクツーリングでソロキャンプってのをやってみたくって」そう、これは中々踏み出せない。サークルのツーリングでキャンプってのもあるだろう(昨日がまさにそうだ)けど、ソロってのはなかなかにハードルが高い。私が一人で行けばいいだけの話なんだけど、やはり女性一人ってのは尻込んでしまう。なので今回の自由行動ありプランはデビュー戦としては大変ありがたい。
「さすがにこれだけツーリング客がいるから大丈夫だとは思うけど、場所決まったら一応LINEしといて。一人堪能したいならグループラインじゃなくて俺だけでもいいから。もし何かあった時にモザイク入りで、普段はおとなしい子でした、とか言いたくないし」
「いや、それだとアタシが加害者パターンだから!」
荷物がぐらつかないか確認し、お互いに出発する。途中、ユキとヒロシとトモくんを追い抜く。ユキが先頭でトモくんを挟んでヒロシがしんがり。まぁヒロシはいつも一番最後だが。ツーリング熟練者の二人に挟まれていればペースもうまく作れるだろう。
少し走ってから宗則とも別れ一人旅が始まる。一人を意識した瞬間、全ての景色がシールドに飛び込んでくる。一度シールドを開けて、空気の匂いを嗅いでからシールドをパタンと閉めてアクセルに活を入れる。ここからはマイペース! 私の速度で景色を感じたい。
北海道では本州を走っているときに比べ、すれ違いざまに左手を上げて挨拶をしてくるバイク乗りが格段に多いと思う。これは景色が開けているから、対向車線のバイクに早めに気づくからできることだと思う。本州でもツーリング中たまに出くわすことがあるけど、大抵の場合はこちらの反応が遅れて返事を返せない、気付いたときにはすれ違い終わっている。ここ北海道だとほとんど返すことが出来た。だけど今日、これからのハイペースな速度域ではきっと無理だろう。
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