第32話 逮捕するMagic Loader
住民たちがえらいテンション高くなっている。
王宮のほうに集まるよう命令が出たっぽい。みな、王宮前の庭に押しかけて行った。
庭に着いた連中は、王宮の最上階を注目している。
そこに、ベルツェックル、クペナが現れた。一気に歓声があがる。
俺は、みんなに気づかれてバカにされないよう、脇の茂みを通っていった。結果、王宮の前には着いたものの、彼らを真横からみるような悪い角度の位置取りになった。
「今日は、皆にとてもいいお知らせがある」とベルツェックルが野太い声で切り出すと、群衆は一旦静まり返った。
クペナが後ろを振り返って目配せすると、……出てきた。ガイトゾルフの新入り。
さっきよりけたたましい歓声があがった。
クペナが話し始めると、ふたたび静まり返った。
「この者の名はサーイ。私が、ずっと探し求めていました。なんと、浮遊大陸のずっと下、奈落の底の淋しい村で、じっと耐えて待っていたのです……今日の栄光を受ける日を」
……栄光受けたがってたっけ? と俺は心の中で思った。
「彼女の魔力は、他のガイトゾルフの比べ物にならないほどです」
……なにげに、他のガイトゾルフの皆さんをディスってないか? と俺は心の中で思った。
「その力は、遥か遠くにいた私からも感じ取るができました……彼女は、奈落の底よりももっと遠く、地球という異世界からやってきたのです」
あ、この話って一応転生ものだったのか、あれ? この場合は召還だっけ? とか俺は心の中で思った。
「自らのその魔力を、魔物を滅ぼすために役立てたい、そう志願してきたのです」
……なんか違くね? と俺は心の中で思ったが、その瞬間、群衆からすごい歓声と拍手があがった。『サーイ様、万歳!』などと叫ぶ輩もいやがる。
で、その後クペナとベルツェックルは、なんかしらんがいろいろ演説をしたあげく、最後にこう言った。
「サーイよ、あなたからも、ガイトゾルフになったことへの報告を、これから、己が切り開く未来を、民の前で宣言するのです!」
うわ、自分で抱負を言わされるパターン。俺だったらスゲくやな展開。俺魔法使えなくてよかったー。
またも歓声の後、しばらくして静かになった。皆、第一声を固唾を呑んで見守っていた。
「……」
しばらく沈黙が続く。
あーあ、時間の無駄だなこりゃ。そんなことより、さっさとじーさんを見つけてほしーんだけどなー、と俺は心の中で思った。
思ったんだって。
いや、心の中でだって。
絶対、そんなことないから。まさか、心の中で思ってたことを言っちゃうなんてさ、ハハハそんなことするわけないじゃないか。
言ってたー! 俺、たまにやらかすんだー!
ああ言ったさ。
「あーあ、時間の無駄だなこりゃ。そんなことより、さっさとじーさんを見つけてほしーんだけどなー」
ってな、しかも結構な声量で。みんな黙ってたから響き渡ったんだよー!
だから、第12話らへんでカルザーナに出身地がバレたときにもそうだったと思ったんだけどな、ってそんな昔のことを回想してる場合じゃない。群衆はこぞってこっちをギロリと見て、
「なんだこいつは!?」
「サーイ様になんてことを言うんだ!」
「あ、あいつじゃないか。あの魔法も使えない、役立たずのデクノボー!」
「何て無礼な! お前にそんなこと言う権利があるものか!」
とまあ、これらは抜粋で、他を書くと豆腐メンタルの作者が筆を折るくらい、罵詈雑言のバリエーションがすごいのなんの。
怒った群衆は俺を捕えようと集まってくるが、そのとき、ベルツェックルがこちらに降りてきて、野太い声で言った。
「皆の者、待ちたまえ! ともかく、この男はガイトゾルフ、民衆、国を侮辱した。罪状が確定するまで牢屋に入れることにする!」
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