第26話 ニレーゼの塔

 うわーっ、俺はパラウェリの木を登ってたら変な植物にバウザスごと吸い込まれてー、そのあとすぐ吐き出されてー、大空に放り出されてー、バウザスはしばらく気絶してー、地面に着くギリギリのところで気づいてー、必死で羽ばたいたけどー、結構派手に地面にぶつかったー、なんて説明的な文章ーー!


 あいてて……ん、う! うわあぁぁ~

 へび! へびが、2、三匹いっぺんに這いつくばってるー

 あわわわわわ


「あーっはっはっは、あんた、ほんと、おもろいーー」


 あーっ!


「へびあたま! おまえの仲間か!?」


「あんた、あたしを初めてみたときの、あの驚きよお、おっっもしろーくってさ、もっかい見たくてさー、やっぱさいこおー!」


「お、おまえそんなののために俺を使うな。だいたい、なんで落ちたらすぐおまえがいるんだ」


「あら、待ってたんよ。そろそろ落ちてくるかなーって、サーイさんに追っ払われるだろおなーって」


「ああ、追っ払われたさ、間接的にな。あいつがちゃんと魔物をやっつけてくれりゃー、あんなことには……」


「まあ、ざんねんね。で、これからどおするつもり?」

「ちょっとなんか食って回復したら、またあの木へ……」

「それ、展開としてどおかとおもうよ」

 へびが展開云々を気にしよる。


「あんたにはぴったりの道があるからさ、ついておいで」


 へびあたまは、俺をつれてあのでかい木より北東の方へ連れていった。


 ものすごい高さの建物が見えていた。上の方は霞んでみえない。


「さぁてと、ここをのぼっていきな」

「おい、無茶いうな、こんな高いやつを登れだと……」

「しかもアレよ、3分以内でよ」

「まじか! 急いで登るぞ!」


 中に入ると、狭い。真ん中に扉があるだけだ。階段もないし、どうやって登るんだ?

 扉の前に来ると、なんか勝手に開いた。中はさらに狭い。こんな狭いところに入って閉じ込められたら大変だから絶対入らないようにしようと心掛け、中に入ったら、わっ! 勝手に閉まった、閉じ込められた。


 あれ、なんかトゴリーティスよろしく文字が浮かんできた。


 行先(1-200)?

 1 2 3 4 6 7 8 9 0


 え? 行先? そ、そりゃー最上階だろ! 200だ200。


 といって、スライタスで2、0、0を押すと、すごい勢いで登り始めた!

 やった! これで3分以内に上まで行ける! ぬるい!


 200階。


 あ、いつぞや見た浮島群だ。わーい、これで追い付いたぞっと。あ、すこし浮島より高いな、数階降りるか。


 198階。


 浮島と同じ高さ。あつらえ向きに出口まであるのだが、なんかでかい魔物がいる。門番っぽい。

「おい、おまえ、ちゃんと謎は解いたか?」

 などと言ってくるから、

「はい、ちゃんと登れましたから、いいですよね。出ます」

 といって出ようとしたら、

「ふざけるな!」

 と言うや否や、こん棒みたいなので殴りかかってきた!

 うわっ!


 俺は、めのまえが まっくらに なった!


 ……あれ?


 気づいたら、塔の一階にいた。


「しまいまで聞かずに飛び出すからよー、あわてんぼさんっ」


「あ、おい、へびあたま、ここは何なんだ!」


「最初からそお聞けばいいのに。ここはね、『ニレーゼのとお』。人間が通るためには、謎をとかなきゃきけないのっ」


「謎ってなんだ、謎なこと言いよって」


「ここには……ある大魔ほお使いのぼお険がね、階ごとに分けられて記録されてるんよ。あんたは今からそのぼお険を追体験するんよ、3分以内に」


「3分以内じゃなかったら? ……さっきみたいに、『めのまえが……」


「死ぬよ」


「な……!」


「ほんとはね、あんたさっきもブンなぐられて死んだんだけどー、死んでも『めのまえが まっくらに な』るだけでやり直せるよお特別に設てえしといたからねっ♪ うふっ、あたしってやーさしい!」


 うふ、じゃねぇよ、あと軽々しく「死ぬよ」とか言うな。そもそも死んでもやり直せるとか、いくら魔法の世界でもいいかげんが過ぎるぞ、おかげで助かったけどよ。


「はい、あらためてスタートゥ」


 1階。


 よくみたら、立て札がある。


 【大魔法使いの記録】

 私はイーの祠に来た。さて、どこに行こうか?

 ヒトパの町→18階へ

 ヨンパーの神殿→48階へ

 イマルツの草原→102階へ


 よくわからんが、これのどっかの階に行けということらしい。

 あ、立て札の隣に杖もある。俺使えるかどうか知らんがもらっておこう。


 よっしゃ、とにかく上に行きたいから、上の階へ!


 102階。やっぱり立て札がある。

 【大魔法使いの記録】

 イマルツの草原に倒れている人がいる。

「魔物に襲われてこのざまだ。薬を持っていないか?」と言われた。


 もってませーん。ええと、1階に戻るしかないのか?


 1階に戻った俺は、立て札をもう一度読んで、別の階に行った。


 48階。

 【大魔法使いの記録】

 私の前に強敵ヨンパーが現れた。


 って、おーい、立て札読んだら本当に魔物が出てきたじゃねぇか! さっきの杖で撃退……効かねぇ! やっぱ所詮俺! 逃げろ!

 ふー危なかった……でもなんか発射はされたな、俺でも使える魔法か?


 で、どこ行こうか……1階の立て札に書いてあった階。あと1個なんだっけな……えー、忘れた。1階に戻って見直し……うっ!


 俺は、めのまえが まっくらに なった!



「はいー、3分過ぎたね! 死んだね! やり直しー」


 というへびあたまの声が。

「ああ、丁度よかったぜ! 1階に戻ろうと思ってたからよ!」


 で、また1階の最初からやりなおし。立て札を……おう、そうだった、18階か。……あれ? 死んでも前世の記憶はあるんか。


 18階。


 【大魔法使いの記録】

 私はヒトパの町に来た。さて、どこに行こうか?

 シヨの村→44階へ

 ワンマルキュの城→109階へ


 またかよ。じゃあこんども高いところから、と。


 109階。

 【大魔法使いの記録】

 私の前に強敵ワンマルキュが現れた。


 うわ、またなんか魔物が。杖、使えるか? お! 今度は当たった! やっつけたぞ!


 魔物は何か落としていった……あ、杖だ! これでさっきの当たらなかったヤツを……あれ? あいつ何階にいたっけ?

 えーと、また1階に戻るのかよ。


 1階でまた階を確認……と、ヨンパーの神殿? 48階。


 よし! 今度はアイツをギッタギタに……あれ? やっぱ当たらん! うわっ、炎とばしてきた! 喰らった!


 俺は、めのまえが まっくらに なった!



「はい、本日三度目~」


 またやり直し。たしかに記憶は残っているがそもそもの記憶力が乏しい。あとどっか行ってない階なかったっけなーって、また上下して探すこと2分、やっと見つけた。


 44階。


 【大魔法使いの記録】

 薬を見つけた。


 立て札から本当に薬が飛び出てきた。あ、薬! さっきどっかで倒れていた人がいた(と、立て札に書いてあった)。どこだっけなーえーと……あっ! 3分!


 俺は めのまえが まっくらに なった!


「あたしの台詞もうなくていいよね、いか略~」


 よし、次はまず44階に行って薬を確保。さて、倒れていた人はどこだっけ? 思い出せなくて探すこと2分。


 102階。

 【大魔法使いの記録】

 イマルツの草原に倒れている人がいる。

 薬を飲ませた。

 「ありがとう、お礼に杖のありかを教えよう」

 サパーの洞窟へ行く→38階


 あ、38階なんて聞いたことないぞ。行ってみよ……あっ! 3分!


 俺は めのまえが まっくらに なった!



 よし、38階に直行しよう。


 【大魔法使いの記録】

 サパーの杖を見つけた。


 あ、杖、これで誰か倒せる! えーと何階だっけ、ってまた探して、「めのまえが まっくらに な」ること2、3回。48階の魔物、ヨンパーに効くことがわかった。

 そいつは、やられ際に

「ぐはぁー! ニフ様~」

 とか言っていた。


 ニフ? それって何階だろう……ってすぐわかった。22階だ。

(※そもそも、【大魔法使いの記録】に出てくるネーミングが、読者の皆さんが現実世界で接している言語に由来しているのは変に見えるだろうが、これはおそらく俺には違う名前で見えているのだろう。エグゼルアで使われている言語の数字に置き換えてもいいんだけど、面倒だし。ついでにいっておくと「3分」という単位も、皆さんの世界とは違う単位だろう。もっとついでにいうと、今までに出てきたいい加減なネーミングの魔法とかも……)


 よし、22階に行こう。残り時間がないのでもう一度「めのまえが まっくらに なっ」ておこう。


 22階。


 【大魔法使いの記録】

 私の前に強敵ニフが現れた。


 あれ、当たらん! あー、またどれかの杖が有効なのか、めんどくさいな。


 探すこと2分、最初に倒した「ワンマルキュ」が落とす杖が有効らしい、とわかったところで強敵ニフの攻撃を喰らって、めのまえが まっくらに なった。


「さあ、そろそろ決めてちょーだい」


 おう、わかったぜへびあたま! 結局これだけでいいんだ:

 (1)まず、109階に行ってワンマルキュを倒して、杖を手に入れる

 (2)次に、22階に行ってニフを倒す。


 はやっ! 1分で倒せた。


 倒したニフは、何か巻物を落としたようだ。あっ、もしかして、巻物で魔法を発動してさっき上にいた門番をやっつけるのかな?


 198階。


 あれ?


「へびあたま! あれ、バウザスもいつのまにここに?」

「あー、だって、魔物はノーチェックで通過できるもん。これは人間のための試練だから」


 さっきのいかつい門番が、満面の笑みで話しかけてきた。

「おめでとう!  君は見事謎を解いたんだ! 君を我々の仲間として認めよう」

「えええ、なんでですか?」

 へびあたまと門番がこっち見て不敵な笑みをうかべた。

「だってー、あんたさー、道端に倒れている人がいるってのに、彼の大事な杖のありかだけ聞いたら、助けもしないで盗むしー」

「しかも、ご主人様の名前を叫んで死んでいく忠実な部下をスルーして、いきなりやられてしまうラスボスも可愛そうだよな……そういう残虐非道なところ、俺たちの仲間にふさわしい!」


 ってそうしなきゃ3分以内なんて無理だろ。


 ともかく、浮島に出ることができた。


 再びバウザスに乗って、俺は勢いよく飛び出た。よし、向かうぞ


 ……ルカンドマルア 、へ……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る