なんとなく歩いてたらダンジョンらしき場所に居た俺の話
TB
第一章 ダンジョン黎明期
第1話 なんとなく歩いてたら……
今日は世間一般ではお盆休みの真っ只中。
かくいう俺も派遣の工場勤務なので、九連休の四日目、絶賛暇を持て余し中だ。
西日本の方では、まだちょっとシーズンには早いんだけどな? って思うんだが、そんな事関係なしに、結構な大きさの台風が迫っている事をテレビのニュースが繰り返してた。
まぁ俺の住んでる辺りは直撃は避けられそうなんだけど、それなりに天気は崩れる予想だから、今のうちに食料の買い出しでもしておこうと思い、愛車の軽自動車で近所のスーパーに出掛けた。
連休中という事もあり、スーパーの駐車場は凄く混雑しており、随分店舗から離れた場所にしか停められず『暑いのにめんどくせー』と思いながら、スーパーに向かって歩き始める。
すると、にわかに空が真っ暗に曇ってきて、ゴロゴロと雷の音が近づいてきた。
雨に降られたら大変だと思い、小走りに走り始めた次の瞬間、横にあった大き目の街路樹に向かって雷光が走った。
ビックリして尻餅をつきながら、落雷を受けた街路樹を見ると、ポッキリと折れて焦げ臭い匂いを放っていた。
興味本位で近づいて見ると、人一人がなんとか入れる程の穴が開いており、中を覗き込んでみると何かが 動いているのが見えた。
俺は「雷に撃たれた人がいたのか?」と、ちょっと焦り「大丈夫ですか?」と声を掛けてみた。
その時足先に当たった小石が穴に転がり動いてた何かに当たった。
それきり穴の中の何かは動く事なく次第に黒い霧に包まれた。
ビックリした俺は、腰砕け気味に後ずさる。
黒い霧が晴れて、穴のあった場所を見ると、何もなかったかのように穴も塞がっていた。
残ったのは折れた街路樹だけ。
「今のはなんだったんだ?」と、思いながら立ち上がると、脳内に無機質な女性っぽい声が響いた。
『始まりのダンジョンの討伐を確認しました。特典を選んで下さい』
「え…… 何今の声?」周りを見回すが誰もいない
俺は趣味らしい趣味と言えばギャンブルが好きな事と、ネット小説を読み漁るくらいで、お陰で四十を過ぎた今の略歴は、バツ二、子供一人(別れた嫁さんに引き取られてる)親戚との連絡も、ここ十五年以上取った事も無い。
現在は気楽な派遣社員で、いても居なくても社会になんの影響も無いような男だ。
でも…… なんとなく解る。
(この展開は俺のターン来た?)
脳内で尋ねて見る
『特典って今すぐ選ばないとダメですか?』
するとまた脳内に
『二番目の討伐者が現れ、特典を先に選ばれるまでは有効です』
『二番目の討伐者って、すぐ現れる感じですか?』
『次のダンジョン発生予定まで百六十七時間五十七分三十二秒です』
との答えが響いた。
これはあれだ。
即断即決で決めると、絶対後で後悔するパターンだ。
とりあえず家に帰ってじっくり考えよう。
結局俺は買い物をする事もなく、速攻で家に帰って、取り敢えずインスタントコーヒーを淹れて落ち着いた。
そして脳内会話で話しかける。
『あのー?』
『はい、なんでしょうか?』
『特典を一覧とかで見せてもらう事は出来ますか?』
『了解致しました。只今から作成して三分後には閲覧可能な状態に致しますので、それ以降にお呼びかけ下さい』
『っともう一つ! ずっと貴女と会話は出来るのですか?』
『私は、始まりのダンジョン専属のコンシェルジュですので、討伐者の貴方様に今後お仕えする事になります』
!!!
これはかなり有利な状況かも? と思いながらゆっくりとインスタントコーヒーを飲み込んだ。
約三分が経過した後に『一覧は纏まりましたか?』と呼びかけた。
『こちらをご覧ください』と言われた直後に……
ナニコレ? 謎スクリーン‼
的な、透明スクリーンにいくつかの樹形図の様に整頓された五百種類程のスキル? 的な物が書き表された物が眼前に広がった。
この人メッチャ有能だなー! と、思いながらスクリーンをチェックし始める。
どれも魅力的な項目が並んでいる。
ここで又ふと疑問点が浮かんだ。
何故こんなに、携帯小説である様な王道スキルが当たり前の様に並んでるんだろう?
『聞いていいですか? 何でこんなにゲーム的なラインナップが揃っているんですか?』
『お答えします。大衆の意思が集約された現象が、スキルという形で具現化されていくのです』
『なるほどなー』と何故か簡単に納得して再びスクリーンに目を移す。
もちろんノートとボールペンを手に興味を引いた物をチェックしながら……
うーん欲しいのは、こんなとこかな? と一通りのチェックをし終えて……
『今後ダンジョンって、どんどん現れたりするんですか? それって人類? ってか、この世界にどんな影響を与えていくのかな?』
と、尋ねる。
『お答えします。今後百五十五週間に渡り、百六十八時間に一つの割合でダンジョンは発生して行きます。発生する場所は世界中どこでも可能性はありますが、人々の意識が強く影響する為、人口が多い場所、文化としてダンジョンを認識しやすい社会、主に日本に発生する事になります』
中々に衝撃的な内容だ。
『次に影響ですが、人々が望む物が現れるという性格が強く、恨みや憎しみなどの悪意がモンスターを産み出し、それに対して欲の部分である、いわゆる宝物的な物や魔導具と呼ばれる物。未知の資源等が討伐報酬として現れます』
なんか大変な事になってきたなぁ……
今一つ実感がわかないままに質問を続ける事にした。
『ダンジョンを討伐しないと、どうなるの?』
『ダンジョン発生から六週間で、ダンジョン外にモンスターを排出する状態、いわゆる
『そのモンスターは普通に倒せる強さなのかな?』
『五階層迄のダンジョンでは、現状存在する武器や物質による駆除が可能です。それ以降の階層では、スキルの習得による現象やダンジョン産素材による武器でしか倒す事がが出来なくなって行きます』
『レベルや熟練度なんて概念はあるの?』
『人々の思念から発生しているので、それを信じる考え方が出来る人にはレベルや熟練度が上がって行きます。信ずる事が出来ない方は同じ行動を取ってもレベルは上がりません』
なんかオタク系な人が、どんどん強くなりそうな感じだなぁ……
『ところで特典っていくつ選べるのかな?』
『始まりのダンジョン討伐者の貴方は、八個のスキルを選ぶ事が出来ます。このスキルは全て世界に一つしか存在する事が出来ません。今後人々の思念が一定量に達し、似たような効果が発現するスキルが生み出される事はあっても、同じ物が存在する事はありません』
思ってた以上に最初の選択は重要だな。
『追加のスキルの習得の方法とかはあるの?』
『今後発生するダンジョンの攻略による獲得ができる他、アイテムドロップでの低確率での習得も可能でございます』
んー…… 大体聞きたい事は聞けたかな?
じゃあ取り敢えずスキルを選ぼうか!!
スキルの詳細は、スクリーンをタッチすると表示される便利仕様だった。
さすが思念を実現するって言う仕組みだなー
まずは
【アイテムボックス】
容量は持ち主のLVとスキルLVに応じて、時間経過無し、重量体感無し、自動整頓、出し入れの位置指定もスキルLVにより範囲が広がっていく。
お約束便利スキルだよね!
ん? LV? そうだお約束のステータス機能ってどうなってるんだろ
『ちょっと教えて、能力値とかはどうなってるの?』
『思念から発生した機能ですから貴方の思った通りで表示されます。ステータスオープンと心で唱える事で表示されます』
早速試してみる事にした。
【ステータスオープン】
岩崎 理
JOB 設定無し
ポイント 10
LV 5
HP 50
MP 50
攻撃力 5
守備力 5
敏捷性 5
精神力 5
知力 5
運 5
スキル 【アイテムボックス】LV1
こんな感じだった。
LVはきっと始まりのダンジョンの討伐をした事になってたから、それで上がったんだろう。
てか…… 偶然落雷で瀕死になってたダンジョンボスに当たった小石が決定打になって討伐?
って事だよね?
まーただのおっさんだからな!
普通にモンスターなんか現れたら戦える気が全くしないぜ。
ここでもう一つ疑問が生じた。
JOBかぁ、どうやって選ぶのかな?
「JOBの選び方をおしえてもらってもいいかな?」
「JOBリストオープンと念じてみると表示されます。これもイメージが大事で、そのJOBが具体的にどんな動きをして、どんな成果を成し遂げる人なのかが、きちんとイメージ出来た物が表示されます。当然これは人それぞれに違うイメージなので千差万別なJOBが表示されます。JOBに付く事によって、能力値にプラス効果が現れますが、出現したJOBにより、それぞれ獲得するためのポイントが必要になります。必要とされるポイントによって、そのJOBの有用性が大凡予測出来ます。複数のJOBの獲得も当然可能ですが、JOBLVを上げる為の経験値も、それだけポイントも必要になって来ますのでご注意下さい。JOBにより独自の特技が発生して行きますが、これは便利な物ですと、スキル並に有用な物もございます。また特技は、スキルと違い同じ物を他の方が習得する事が可能です」
んーちょっと頭の中を整理だ。
重要な事は……
①これから先、週に一つのペースでダンジョンが発生する。
②ダンジョンは、討伐しなければ六週間でスタンピードを起こす。
③スタンピードで溢れたモンスターは人間を襲う。
④現在人類が扱う武器等は、通用しなくなって行く。
⑤スキルは同じ物が存在しない。
⑥JOBはイメージ次第で強力な物が出来る。ただしポイントがないと獲得出来ない。
⑦複数JOBの獲得も出来るが、獲得しただけ経験値は余分に必要になる。
現状はこんなところかな?
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