第22話

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「やられちゃったね。まあさっきのドリブルは、敵ながらあっぱれって感じだけどさ」

 同点ゴールの直後、モンドラゴンに近寄ったオルフィノは平静に声を掛けた。

 腰に手を当てるモンドラゴンは、鬼気迫る表情で地面の一点を注視している。何やらぶつぶつと呟いているが、オルフィノの慰めの言葉に返答する気もない風だった

(やっぱりこうなるか。だからモンドラゴンはだめなんだよね。屈強でクレバーな選手なんだけど、精神的に脆くて崩れだしたら止まらないんだよ)

 オルフィノは呆れつつ、モンドラゴンに届く言葉を頭の中で探す。

「でもまだ同点だ。こっちは一人多いし、悲観するような状況じゃあない。僕が点を取ってくるから、モンドラゴンは守備メインで頑張ってよ」

 返事を待たずに向き直り、オルフィノは定位置へと歩き始めた。

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