第8話 秘密の約束
彼がくれた指輪をうっとり見つめていると、その手が優しく包まれた。
「ナタリア、僕と一緒に暮らそう」
「え……」
「さっき君のおばあさんに言われたことはちゃんと守る。奥森以外にも探せばあると思うんだ」
私は握られた手をそっと離した。
「王様を説得することは出来ないの?」
彼は唇を噛む。
「それは……、そうしたいけれど、父は身分にこだわる人で……」
そう言ったっきり彼は下を向いてしまった。
「わかった。逃げましょう!」
私の言葉に彼は顔を上げた。
「いいのか?」
「うん。ただし、今日は帰って荷物を色々と準備しましょう。それで明日またここに来る」
「ありがとう! そうしよう」
「そうと決まれば早く帰りましょう。特にエデンさんはお城までかなりかかるし」
ブルーの瞳に映る花畑は何とも幻想的で、夢なのではないかと錯覚してしまいそうだった。
「そうだね。最後に家族の顔も見ておきたいし」
彼はさっと立ち上がると、フォリンのいる方を見た。軽く手を振っている。フォリンもそれに気が付き、ゆっくりと飛んできた。
「グおん」
「ねぇ、フォリン。もし私たちが駆け落ちするって言ったら、ついてくる?」
上空では離れすぎていて聞こえないのか縮めてというように首を近づけてきた。さすってあげると、二人の間にちょこんと座る。そして、私はもう一度同じ質問をした。フォリンはすぐに、
「グおん! グおん!」
と、元気な返事をした。
「よかった。フォリンもついてきてくれるって」
彼は優しく微笑んでフォリンの頭をなでる。フォリンは最初は戸惑っていたけれど、私の嬉しそうな顔を見て落ち着いたようだ。
「明日はね、クインの実を採りに行かなきゃなの。お母さんに頼まれているから」
どちらもうなずいて聞いてくれる。
「だから、荷物をまとめたらフォリンにお願いしてもいい?」
フォリンは得意げに鼻を鳴らした。
「頼もしいな」
彼の言葉でフォリンはさらにいい気になったようだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます