第62話

「という訳なんだ。あの岩山、ゴン蔵の力で壊せないかな?」

『たやすいこと。だが我があれを粉々に破壊した場合、岩が海に落ちて余計に浅くはならないか?』


 ゴン太の晩飯用に岩場で糸を垂らし、引きを待つ。

 その間にゴン蔵に相談してみたのだが、思わぬ答えが返って来た。

 

 粉々に粉砕って、どういう感じでやるつもりなんだ?


『上空より我の自慢のブレスで』

「あぁー……ブレスね。はい、粉々ですねそれは」

『うむ。もしかすると、あの辺一帯の海岸をえぐり取ってしまうかもしれぬな。がっはっは』


 止めて。それだけは止めてっ!


『あの岩山から直接町へ向かうルートを作りたいのだろう?』

「まぁそうなんだけど──っかしいなぁ。全然ヒットしない」


 竿を上げるが、餌は付いたままだ。

 前世で釣なんかほとんどやったことないけど、一匹ぐらい釣れたっていいだろう。


『ではアレでどうだ?』

「あれ?」


 後ろを振り向いてゴン蔵を見る。

 ゴン蔵は砂浜を指さし、そこにはゴン太とボリス、そしてシアが砂山を作って遊んでいた。

 ボリスが短い角をその山に突っ込んで──あぁ、トンネルを開通させているのか。


 ん、トンネル?


「岩山を破壊するんじゃなくって、穴を空けるのか!?」

『爪でごりごり削れるだろう』

「……人間には無理だ」

『誰もお前にやれとは言っておらん』


 そう言ってゴン蔵は飛び立った。

 岩山に向かって飛んでいき、まずは海側に着水? してしゃがんで何かやっている。

 

 ドギャッゴリッっと、物凄い音が聞こえてきた。

 あぁ、こりゃあ釣りは無理だな。

 あとで網でも錬成して、投網でもやってみるかなぁ。


 釣りを止めシアたちの所へ行って「ゴン蔵の所に行ってくるよ」と伝える。

 するとひとりと二匹もついて来ると。


 みんなでゴン蔵の所に到着した時には、既に陸側からごりごりする作業に移っていた。


「近づくとごりごりした破片が飛んで来そうだな」

『父ちゃん、頑張れー』

『ンペェー』


 ゴン太とボリスが応援すると、ゴン蔵が一瞬振り向く。

 その顔が緩んでいるように見えたが、きっと気のせいじゃないな。


「ウーク。岩」

「ん、岩がどうした?」

「岩、お船が来るところに置く」

「岩を? あぁ、桟橋の補強か。そうだな……」


 地球だと、船着き場ってコンクリートで固めてあるよな。

 あの桟橋は木製で、海底に丸太をブッ刺して固定してある。

 あれを取っ払って、岩を沈めて──あのまま沈めたんじゃあ、歩きにくくて危険だ。


 なら箱で真四角に錬成すればどうだ?

 

『出来たぞ』

「え、もう!?」


 行ってみると、縦横5メートルぐらいの穴が開通していた。

 壁も天井も凸凹だが、大きな荷馬車も十分通れる穴だ。


「ありがとうゴン蔵! これだけ大きければ十分だ。あとは町まで一直線に道を作って完成だな」

『木が邪魔なら、建物を作るための資材にするために引っこ抜けばいい』


 普通そこは「切り倒す」って発想なんだけどな。

 さすがにドラゴン。規模が違う。


「それもお願いしたいんだが、もう一つ別のことを頼まれてくれないか?」

『よかろう。だが明日だ。今日は働きすぎた』

「はは、そうだな。じゃあ明日頼むよ。やって欲しいことは、今砕いた岩を、『錬金BOX』に入れて欲しいんだ」

『それぐらいか? ならゴン太、ルークエインを手伝っておあげ』

『僕!? 僕がやっていいの!? うん、やる。僕やるよーっ』


 こちらも嬉しそうにはしゃぐ。

 ボリスもペーと言って跳ねていた。


「シアもお手伝いするおー」

「よし、じゃあ父ちゃんには休んで貰って、俺たちで頑張るか」

「『おーっ』」『ペェー』


 箱を50センチサイズにして、片手で持って砕けた岩をほいほい詰め込んで行く。

 片手だとあまり大きなものも掴めないが、そこは数でカバーすればいいよな。

 あぁ、このサッカーボール大の岩を持ち上げられればなぁ──と、持ち上げて・・・・・観察。


 ん?


 今俺、持ってるじゃん。


 あれ?


 なんかそんなに重くない。


 もうちょい大きいのを……持てるんですね。


 これってやっぱり、筋力ステータスのおかげか!?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る