4章 海の魔物
第60話:島の開拓。
島に戻ってきて半月。
留守番をしてくれていた船乗りたちも無事に故郷へと帰って行った。
騎士はそのまま、次の交代が来るまで住人の護衛だ。
『持って来てやったぞ』
「ありがとうゴン蔵。悪いけど箱の中に突っ込んでくれるか?」
町の建物を新しく建て直すのに、建材の錬成をしまくったおかげでレベルが上がっている。
今の『錬金BOX』のレベルは31だ。一辺の長さは160センチになった。
俺の身長が170を少し超えているぐらいで、箱の高さは160センチ。
あとレベルが3、4上がれば俺がすっぽり入ってしまう……。
箱に入りまーっす。
あっという間に錬成されて、超絶イケメンになりましたー!
……ってこわっ!
え、整形手術できちゃうの?
まぁそのうちモンスター使って検証してみるか。
ゴン蔵が持って来たのは森の木だ。
爪を使って器用に枝を削ぎ落し、丸太状にしてくれた物を箱に突っ込んで貰う。
大きなものは途中で入らなくなるから、そこでスパっと切って貰って──
「10×20の、長さ6メートルでしたか?」
「はいっ。梁に使うのもので、えぇっと──二十五本お願いしますわ」
「了解です」
文字の読み書きもちろん、計算もできるエアリス姫が羊皮紙片手に補佐してくれる。
大工職人がサイズを指示し、その通りに俺は木を錬成する。
ただ錬成するだけじゃない。
建設に使う木材は、一度濡らして乾かしてという工程があるそうなんだが、これもまとめて錬成で終わらせた。
大工職人は、俺が用意した建材を組み立てていくだけ。
それでもこの半月で完成したのは、俺たちが住む宿の修復と、もう一軒分だけ。
職人とその家族には屋根のある宿に住んでもらい、冒険者はテント暮らしだ。
たまにうちの食堂で雑魚寝することもある。
「暑くなる前にある程度建物が完成するといいな」
「暑く、ですの?」
「あぁ。テントだと中に熱がこもって、熱中症とか気にしなきゃならなくなるでしょう?」
「なるほど。皆様のこともお考えになってなのですね。んふ、ルーク様はお優しい方ですわ」
「そ、そうかなぁ……あ、次に必要な木材はなんです?」
犬用のハーネスを大きくしたものを取り付けた荷車がある。
錬成し終えた木材をそこに乗せておけば、ボスが来て頭をずぼっと突っ込んで大工職人の所まで運んでくれた。
たまに木材の量が少ない時は、息子のボリスにやらせているようだ。
「ボリス、手伝ってくれてありがとうな。あとで枝豆茹でてやるからな」
『ンペッ!? ンペペペェ~♪』
『ベェーッ』
おいおい、息子にやらせようとしたくせに、慌てて自分が首突っ込んでやがるぞあいつ。
大人げない奴だなぁ。
「ウークゥ。ご飯だよぉー」
「お、もうそんな時間か」
「あら、お昼ですわね」
エアリス姫と一緒に空を見上げ、太陽が高く上っていたことに今さら気づいた。
「姫、先に戻ってください。俺はゴン蔵が戻って来たら休憩するよう伝えるので」
「えぇ、分かりましたわ。では枝豆を茹でておきますわね」
「……それはドワーフの奥さんにお願いしてください」
姫にそんなことさせられない!
じゃなく、王侯貴族のお嬢様が料理をするとどうなるか──というネタを体現している方だから。
前に野菜炒めに挑戦した時は、中華料理じゃねーぞってぐらいファイアーして真っ黒に焦がしたからな。
タマネギの皮むきを頼めば、剥けるからって全部剥いてしまうし。
茶色いところだけ剥けばいいのに、まさか白い所まで剥いてしまうとはビックリだよ。
「ん? シア、どうしたんだ。先に帰ってもいいんだぞ」
「あのね、ウーク。こえ持って来たの」
そう言ってシアがポケットから取り出したのは、ステータスの実コーンだ。
トウモコロシの実を乾燥させ、それにステータスの実を付与したもの。
食べるときはフライパンで焙ってポップコーンにする。
が、他の人に見られないようにしなきゃならないので、意外と難しいんだよ。
「今日は箱に入れて錬成するか」
「あいっ」
プチ・ファイアーを付与した石とトウモコロシの実を入れる。
箱の中の温度を上げることを想像しながら錬成っと。
蓋を上げるとポンっと弾けてポップコーンになった。
この状態でも付与の効果は消えない。
ぱくぱくと二人で二つずつ食べて──
『ンベェー』
「お、お帰りボス。昼食にするから、お前たちも休め」
『ペェーペェー』
「わっ。なんだよっ」
ボスとボリスがまとわりつく。
「ぽっぷこーん、欲しいって」
「ステータスの実が目的だろ?」
『ベェ』
にまぁっと笑うボス。
そこへゴン蔵がバッサバッサと戻って来た。
不思議と風が巻き上がることもなく、下りてくるんだよなぁ。
『また食べておるなぽっぷこんとやらを』
「いやポップコーンだって」
ステータスの実のことに関して知っているのは、俺とシア、シープー一家とゴン蔵親子だ。
この前ゴン太に食べている所を見られて、質問攻めにあった結果教えることに。
「ゴン蔵も食べるか?」
『ふんっ。我はそのような物食べずとも最強の生物だ。食べよう』
どっちだよ!
まぁ口を開けて待っているから、食わせろってことなんだろう。
ゴン蔵の背中に乗っていたゴン太も下りてきて、僕も僕もと雛鳥のように口を開ける。
結局全員分のポップコーンを錬成し、雌シープーの分はボスに小さな包みを咥えさせて持って帰らせた。
『しかしお主よ。いったいどんなステータスになっておるのだ?』
「ん? 俺のステータスか?」
島に戻って来てから、何かと人目もあって食べれない日も多かったからなぁ。
そんな俺のステータスは──
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