意地悪な日本語
@8EMON
第1話 起承
「話したいよー」
夏期講習で予備校の横の席に座っている女の子が、机の上に上半身を倒して伸びをし反対側に座る女友達に向かってささやいたのを私は聞き逃さなかった。
何と、そうだったのか!私は中高一貫の男子校の高校に通っており、予備校の夏期講習に参加して久しぶりに、そう小学校以来の女子との隣り合わせの席に緊張気味であった。もちろん、小学生も高学年になると結構大人じみた女子もいたが、高校生にもなるともはや立派な女である。この予備校では2週間、指定席で彼女と隣り合わせに座ることになっている。ちょうどお気に入りの女優に似ていて、少しうれしい反面、彼女に嫌がられないように気を使っていた。毎朝、シャワーをし制汗剤をしっかりと塗る。半袖から出ている腕の毛はしっかりと剃る。もちろん、お口エチケットは完璧である。
今日は、金曜日で1週間目の終わりであった。なかなか、話すチャンスがなかなかつかめずにいた。授業中に講師たちが飛ばす下らないおやじギャグに乗っかって、笑いながら目でも合わないかと彼女の横顔を見た。いつも彼女は正面や反対側の女友達の方を見て、決してこちらを見てくれることはなかった。休憩時間には、机に突っ伏して寝たふりをしながら、彼女の話に聞き耳を立てていた。どうやら、彼女は女子高に通っており、多分に希望的憶測もあるものの彼氏はいない。少なくとも今は。
そうか、そうか、彼女も私のことを意識していたのだ。好意は無言でも伝わるというか、彼女の方も私の好意を察して嬉しかったに違いない。そうだ、今、話しかけたら、うまく行く。いや、今、話しかけなければならない。
さあ、その時だ。私は高鳴る鼓動を感じながら、
「あのう」
と、彼女に声をおそるおそるかける。
「え?」
驚いたように私の方を振り向く彼女。表情が何か険しい。あれ?何かおかしいぞ。どういうことだ。
「次の授業でひとまず今週は終わりですね」
頑張って話を続ける。彼女は少し泣きそうな顔になって、うなづく。
うん?もしかして、かなりのオクテ女子?
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