第52話 ハッピーバースデー

 緊張する。

「ここまで、長かったな。」

「・・・うん。」

並んでベッドに腰かけている俺たち。準備は全て整った、はずだ。後は海斗に任せておけばいい、よな?今となっては、海斗があのマークに色々習っておいてくれた事が有難い気さえする。もう、怒っている場合ではない。

「岳斗、改めて、俺、お前を幸せにするから。」

もう、何か言葉を発する余裕はない。心臓がバクバクして、手が震えている。

「大丈夫か?震えてるぞ。」

「う、うん。大丈夫。」

「お前が嫌なら、やめるぞ。」

「バカ、今更やめられるかよ。それに、俺だって、したいし。」

ガクガクしながらも、そう言う俺。

「岳斗、可愛いな。もう、絶対離さない。」

ガバッと海斗が俺を抱きしめた。そのまま、倒される。

「俺、ずーっとこうしたかったんだ。お前と。」

海斗が俺の顔を撫でながら言う。

「いつから?」

「お前が中一の頃から。」

え、六年も前?

「よく我慢したね。」

「まったくだ。」

海斗はふふっと笑った。

「ハッピーバースデー、海斗。」

俺の、全てをプレゼントするよ・・・なんて、恥ずかしくて言えなかった。


 思えば物心ついた時から大好きで、十年近く一緒に暮らしていたのに、俺の記憶が失われていた事もあって、恋人同士になったのは二年半ほど前。その後すぐに一緒に住めなくなって、忙しい海斗と時々しか会えなくなり、更にこの一年は遠距離恋愛。ようやく、また一緒に暮らせるようになった。

 海斗は相変わらずどこへ行っても目立って、好かれて、人気者で、心配は尽きないけれど、俺は海斗を守る。俺たちの関係も守ってみせる。俺は、海斗を愛しているから。

 モテる兄貴を持つと・・・恋に堕ちる!(俺の場合)


                 完

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