テイマーになったはずが女の子が懐くことになってしまいました

ゆに

第1話 テイマーになったと思ったんですが

「ここが精霊の泉か」


「幻想的な雰囲気だね」


「さっきから固まってるぞ、何緊張してるんだよ、ロジカ」


「パルマだって、声が上ずってるだろ」


「しょうがないよ、私達がずっと憧れてたテイマーになれるかもしれないんだから」


観葉植物が生い茂り、水滴が上に登っていく非現実的な空間で俺達は姿の見えない精霊を待っている。


俺は友達のパルマ、ノリスと一緒にここで精霊からジョブを授かりに来た。


俺達は小さい頃からテイマーに憧れていてようやくここに来ることができた。


俺の将来の夢はテイムしたモンスターに囲まれて生活することだ、モンスター牧場を構えて、モンスターじいさんと言われたい。


パルマは最強のモンスターを育てるのが夢で、紅一点のノリスは可愛いモンスターを捕まえて育てていきたいらしい。


目標はそれぞれ違うけど俺達はモンスターが好きだからテイマーを希望している、それだけはずっと共通していた。



ー ようこそいらっしゃいました。あなたにジョブを授けます ー


姿は見えないが精霊のやさしい声がする、耳ではなく心に直接響いてくるみたいだ。

いよいよジョブを決められる時が来たんだ。


「テイマーになりたいです!」


パルマが待ってましたとばかりに迷いの無いでかい声で宣言した。


ー ふふ、元気ね……いい魂をしています ー


パルマが褒められてちょっと悔しいけど、俺だって気持ちなら負けてない。


「お、俺もテイマーになりたいです!」


「私もなりたいです!」


パルマに負けじと俺とノリスも精霊に宣言した。


「おいおい、マネするなよぉ」


追いかけるように宣言した俺とノリスのことをパルマは嬉しそうにイジってきた。


「私もテイマーになりたいのに、パルマだけ宣言するなんてズルいんだから!」


「みんな一緒になろうよ」


「まあそうだな、精霊様! 俺らはテイマーになれますか?」


少しの間精霊の返事は無く、木々のざわめきとやさしい水の滴る音が響いた。


数秒だったとは思うが何時間にも感じるような沈黙が続きようやく精霊の声が届く。


ー 問題ないわ……3人ともテイマーの素質は十分みたい ー


俺ら3人はお互い顔を見合わせて安堵のため息をついた。


ついに夢の一歩を踏み出せる、最初にテイムするモンスターはどいつにしようかな……


「ロジカ、嬉しそうだな」


「私達の中でも一番テイマーに憧れてたのはロジカだったもんね」


「へへへ、そりゃ嬉しいよ、ずっと待ってたんだからさ」


テイマーになる喜びで俺の心は弾んでいた。


ー おや……あなたはちょっと変わってますね ー


「えっ?」


俺が驚いたことについてパルマとノリスは不思議そうにしている、精霊は俺にだけ話しかけたみたいだ。


「変わってるっていうのは……? テイマーになれないってことですか?」


ー そういう訳ではないのですが…… ー


「なんだ、テイマーになれないのかと思った! ちょっとしたことなら全然問題ないんでテイマーになりたいです!」


ー いいんですね? ー


「はい! お願いします!」




「ロジカ、大丈夫か? テイマーになれないのか……?」


「ちょっとパルマ……ロジカに限ってそんな訳……」


2人も心配してるけど、大丈夫、俺に迷いは無い!

ずっとあこがれていたテイマーになるんだ!


俺達の身体がぼんやりと光だした。



ー わかりました ー


意識が遠くなってく……


ー これから……あなた達……は……テイマー…………です…… ー



◆◇◆



気付くと俺達は精霊を祀っている祭壇の前で倒れていた。


そっか……俺達はジョブを授かるためにここで祈りを捧げてたんだった。


もう、テイマーになれたのかな。

特に大きく変化したようには感じないけど……


「すげぇ!」


祭壇に似つかわしく無い大きい声でパルマが叫んだ。


パルマは祭壇の窓越しから見える鳥を眺めて驚いていた。


「これがスカウトサーチか」


『スカウトサーチ』というのは、テイマーの初期スキルで、テイムできるモンスターや動物達のスカウト可能度合を可視化させる能力だ。


「すごい……でも全部真っ赤でここの動物達はスカウトできないみたい……」


ノリスもスカウトサーチが使えてるみたいだ。

サーチされたものは色が表示され、赤だとスカウトは困難で青になっていくにつれてスカウト可能度合が上がっていく。


2人ともスカウトカラーが見えてはいるが、ここの動物達をテイムすることは難しいみたいだ。


「ロジカ、お前はスカウトサーチできたのか?」


パルマ嬉しそうだな、2人とも見えてるんだ、俺だけ何も見えない訳……


「あれ……」


何も見えない……


2人と同じように外の鳥を眺めているが、自分だけに見えるはずのサーチウィンドウが出てこない……


「ロジカ……どうしたの?」


おかしいな……


目をこすって何度も鳥を見てみてもウィンドウは出てこない。


「嘘だろ……」


「ロジカ……まさか……」


「なんで、ロジカだけ……?」


何で俺だけ……

まさか、さっき精霊が言っていたことと何か関係があるのかな……


「もしかしたらさ、スキルが使用できるようになるのには個人差があるのかもな」


言葉ではフォローしてくれているがパルマはスキルが使えるようになったことにウキウキして俺のことなんてそこまで重く捉えてなさそうだ。


「スカウトサーチはテイマーの初期スキルだからすぐ使える筈なのにね……」


そのはずなんだ……ノリスが言うように2人が使えるなら俺もできるはずなのに……


《スカウトサーチを使用します》


頭の中で声が聞こえた。


「おっ! これは!?」


目の前に俺だけが見えるウィンドウが開いた。


「おっ、なんだロジカも見えたのか?」


「よかった、ロジカだけテイマーになれないのは寂しいもんね」


「……あれ?」


なんでだ……?

サーチウィンドウがノリスに表示されている……

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