第10話 レースの結果は?

しかし、僕はそこで衝撃的な光景を目にした。


「えっ? 一郎……??」


その部屋の簡易ステージの上に一郎と茜が肩を寄せて立っている。そして二人の指には一郎が運ぶ予定だった指輪がめられている。

僕に続いて戻って来た和幸もその光景に目を見開いている。


茜が僕達に気付いて手を振った。

「拓也君、和幸君。お疲れ様。2位と3位だね!」

茜が満面の笑みを僕達に向けている。僕は起こっている事実を理解出来ず口を開いた。


「茜、ちょっと待ってくれ。一郎の機体ではこの時間で戻って来れない筈だ……。どうして?」


茜が首を傾げて口角を上げた。

「ごめんね。二人とも。一郎君とは同じ大学でとっくに付き合っていたの。だけど彼がレースで勝てない事が分かっていたから、このレースのルールを上手く使って、彼を優勝させたの……」


僕は未だ理解出来ていなかった。

「ルールを上手く使うって……?」


「アクセサリーは貴方達三人と私しか触っちゃいけなかったでしょ。だから指輪は別荘に置かずに私がここに持ってきたの。そして一郎君に渡した。ルールは逸脱していないでしょ?」


僕と和幸は余りの衝撃にその場に座り込んでしまった。


そして、そのシーンは集まったメディアのカメラを通して世界中に配信されてしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る