8時限目【続々・天使部の初仕事】


 ◆◆◆◆◆

 学校中を探し回ったが、シャムシエルのおっ○い付きキーホルダーを見つけられなかった天使部一行は一度部室へ戻り休憩を取ることにした。

 ◆◆◆◆◆


「中々見つからないっす……」

「疲れたの〜」

「ほんと、見つからないんですが?」

「困ったね〜」




 ☆☆☆☆☆




 俺は双子天使の証言を元に、ロリエルを捜し出し、一度部室、いや、俺の部屋に戻ることにした。

 部室……俺の部屋のドアを開けると、魂の抜けた天使部のメンバーと、それを申し訳なさそうに見つめるシャムシエルの姿が見てとれた。


 鍵は見つからなかったのだろう。

 それもそのはず、


「ロリエル?」


 俺が白天使ロリエルの背中を押すと、玄関先で佇んでいたロリエルがシャムシエルの方へ歩いていく。そして、ポケットに手をつっこみ、


「これ、落ちてたよ」と、頬を染めた。


 ロリエルは小さなシルバーの家鍵、しかもおっ○いキーホルダー付きの家鍵を取り出した。ソレは、まさにシャムシエルの探していたおっ○いキーホルダーの付いた鍵だ。


「あっこれっ! 私のおっ○い!」


 いやそれは違うぞシャムシエル!


 ロリエルはシャムシエルに鍵を手渡した。


「そ、そそ、それじゃ……」


 ロリエルは鍵を返すと、一言呟いては部室、ではなく! 俺の部屋から去っていってしまった。


「あ、行っちゃった」


 シャムシエルはその鍵を大事そうに握りしめた。


「おいしいところ全部ロリエルちゃんに持ってかれちゃったっすね。でもでも、見つかって良かったっすね、シャムシャム!」


 マールの笑顔に、シャムシエルも不器用な笑顔をお返しした。


 今回、鍵を拾ってくれていた、ロリエル。

 基本無口であまり人と関わりを持たない少し謎めいた天使だ。真っ白な髪は腰の辺りまで伸びていて、白い肌に濃いめの紫の瞳、背丈はガブリエルと似たり寄ったりといったところだ。


 俺が廊下で彼女に声をかけたところ、下駄箱でこの鍵を拾ってシャムシエルを捜していたと。

 一目で分かるキーホルダーが付いているから誰の持ち物かすぐに分かったのだと彼女は言った。


 何ともあっけない幕切れだが、何はともあれ、鍵は無事に見つかった。

 シャムシエルは嬉しそうに泣きながら、皆んなにお礼を言っておっ○いをぶら下げて、——おっ○いキーホルダー付きの家鍵をぶら下げ帰っていった。


 今更だが、何だそのキーホルダー!


「先生、知らないんすか? 今、おっ○いキーホルダーが密かにブームらしいっすよ? シャムシャムは時代の一歩先を行ってるんすよ!」


 そうなの? 俺の中で天界のイメージがどんどん崩れていく気がした。

 と、頭を抱えていると、疲れたのか、部員達がその場で眠りはじめた。


 寝顔だけ見てれば可愛んだがな。


 って、寝てんじゃねーよーー!?


「お前らも早く帰れぇっ!」


 ——

 やっと一人になれた。

 やれやれ、先生も楽じゃないな。

 これはきっと、悪魔でも天使でも、変わらないんだろうな。それでこそ、やり甲斐がある仕事なんだろうが、身体がもつかな。



 ◆◆◆◆◆

 フォルネウスはまだ知らない。

 部室、あ、失礼、フォルネウスの部屋の窓ガラスが再び破られていることを。

 何はともあれ、一件落着! この先も窓の修理代がかさむだろうが、それもまた、教師の醍醐味であると開き直るのだ!

 ◆◆◆◆◆





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る