超兵器NEO

NEO計画

（NEO計画プレゼンテーション会議より）

　皆様ご存知の通り、我が日本は宇宙人の襲来という未曽有の危機を乗り越え、利式変換機を獲得して、世界一の超先進国家の地位を得ました。

　しかしながら、これに満足して進歩を忘れれば、その地位も遠からず脅かされるでしょう。我々はこの優位を永遠のものにする必要があります。だからと言って武力を用いるのはスマートではありません。かつての様に宗教や思想を用いるのも、いたずらに反発を招くだけでしょう。我々が択るべき手段は、より確実で永続的なものでなければなりません。

　そこで我々は人工知能による管理システムを確立させるべきと考えます。そのための第一歩が後続事象観測計画――Project_Next_Event_Observationです。その頭文字を取り、以後はNEO計画と呼称します。

　内容を簡単に申し上げますと、未来予測システムの開発です。発想自体は、そう突飛な物でも、新しい物でもありません。ビッグデータを利用して過去と現在の観測を積み上げ、数日後、数月後、数年後といった、超近未来の予測を可能にします。「Near_Event」から「Next_Event」へ！

　誤解を避けるために申し上げますが、これは何も全てAIの言う通りにするという意味ではありません。AIは可能性と対処法を提示するだけ。あくまで選択するのは我々人間です。そうでなければなりません。

　NEO計画の本体、後続事象観測機、Next_Event_Observer――「NEO」は人工衛星に搭載して、宇宙に打ち上げます。

　宇宙空間にてNEOは地球上と地球周辺の全データを回収し、全世界レベルから都市レベルまで、あらゆる範囲での未来予測を試みます。

　動力源には利式変換機、世間で言う所の「エルコン」を搭載します。メインに一機、サブに二機。エルコンの故障に備えて、旧式のソーラーパネルも設置します。

　NEOには自己修復機能が搭載され、動力源は全てが一斉に停止しない限り、相互に修復を行い、機能を補完し合います。

　NEO計画では局所的なシンギュラリティを目指します。シンギュラリティが発生するのは二点。観測システムの効率化と永続化、そして未来予測の正確さに関してのみであり、その他の分野――政治的な意思決定や科学技術の発展に直接介入する事はありません。

　重ねて申し上げますが、あくまで未来を選択するのは我々人間です。

　我が国の優位を絶対的なものにするため、NEOに干渉可能な人物は、一部の人間に限定します。その一部を誰にするかという問題は、高度に政治的な話になりますので、私の口から誰が相応しいとは申し上げません。

　ただ真剣に日本の事だけを考え、個人的な事情に利用しない、そういう人物が望ましいでしょう。