第12話 同室の新人3 side サミュエル
朝食後に新人を連れた奴らが裏庭へ集まる、騎士になる為には身の回りの事を自分で出来ないといけないが、ここに入る迄に洗濯をした事がある奴自体少ないだろう。
この寮には食堂はあるが洗濯は人を雇っておらず、
「よし、皆集まったな。 俺はアルバン三十六歳の訓練官だ。 お前達がウチの長男と同じくらいの年齢だからって事で去年から訓練官の任についている。」
アルバン訓練官が新人達に挨拶する、去年は訓練官になったばかりで気合いが入っていたが、今ではユル…肩の力が抜けている。
「早速だが新人で水魔法が使える奴~?」
聞かれてクラウスが手を挙げる、水属性持ちか。
さっきからクラウスをジッと見ている奴も手を挙げている、敵意や殺意は感じないから見ているだけなんだろうが、知り合いか?
「ふむ、今年は三人か…。 この三人は
事前に準備されていた桶を新人達の前に置く。
「水魔法使えるやつは皆の桶に水を半分くらい溜めてくれ」
その言葉に水魔法が使える奴らが手分けしてウォーターボールを唱えて次々桶に水を溜めていく。
どうやら新人の一人は属性は持っていても魔力操作ができない様だ。
クラウスにひと通りの洗い方を教えると、しばらく何やら考え込み
「サミュエル先輩、ちょっと
目をキラキラさせて聞いてきた。
「お、やる気だな、いいぞ試してみろ」
頷いて促す。
失敗しても汚れが落ちないか濡れた衣服がそのままになるだけだ、一度で成功すればかなり優秀だ。
クラウスが目を瞑って集中する。
「
ホワリと仄かな光が衣類を包み込む。
「おお、スゴイじゃないか! 一発で成功したな!」
クラウスの手にある洗濯物は見事に綺麗になって乾いていた。
オレの声にアルバン訓練官が気付いて寄ってきた。
「お、もう
「とりあえず魔法は覚えるまでイメージと練習あるのみだ、水魔法使えない奴も洗濯の仕方をしっかり覚えておけよ、じゃないと将来的に朝イチでパンツだけ
思わずクラウスの耳を塞ぎそうになったが、まだ意味がわからなかった様でキョトンとした顔で首を傾げている。
やっぱり見た目通り中身も幼いらしい、いつかその時が来たら……カール様に報告して性教育をする様進言すべきか?
もしかしたらヨシュア辺りが明け透けに教えるかもしれないな、アイツは獣人という事を差し引いても性的な事に恥じらいというものをどこかへ落として来た様な奴だし。
洗濯指導が終わってオレ達は学校へ向かう、今日のクラウス達の訓練内容を考えると少々可哀想だが通過儀礼として頑張ってもらうしかない。
学校から戻って寮の部屋のドアを開けた瞬間花の様な香りがした、どうやらもう風呂に入ってきたらしい。
オレ達が普段使ってる物とは格段に品質が高いとわかるその香りをこっそり堪能しつつ、今日の事を色々報告してくれたり質問されたりしてからシャワーを浴びに部屋を出た。
シャワーを浴びてからまだクラウスが部屋に戻ってなかったので食堂へ向かうと、違う階段を使って戻ったのかすれ違う事なく食堂にも居なかった。
さっさと食事を済ませて部屋に戻ると、既に眠た気なクラウスがギリギリの状態で起きていた。
眠気覚ましにと話をしていたら点呼の時間になった、今日は何とか起きていられた様だ。
目は半分閉じてるしユラユラ揺れてるからすぐにでも寝そうだが。
フロア長のマックス先輩も点呼を済ませると部屋に戻る様に促した。
「おやすみなさい」
マックス先輩に挨拶をして部屋に戻ると、既にクラウスが寝息を立てていた。
掛け布団の上に倒れ込んでいたので起こさない様に布団を掛け直して寝かせておいた。
翌朝、予想はついたが痛い痛いと言いながら筋肉痛でまともに歩けないクラウスを見かねて思わず声を掛けたが断られてしまった。
後から現れた新人もクラウスと同じ様にまともに歩けていない、きっと昨日話に聞いたライナーだろう。
その後ろに居たゲルト先輩と目が合い、チラリとプルプルしている二人を見て苦笑いを浮かべる。
食事しながらゲルト先輩が治癒魔法を使ってはいけないなどの注意をしていた。
獣人のオレは魔法が使えないから興味を持てなくて詳しくないので教えてやってくれる人がいるのは助かる。
食後はゲルト先輩とクラウスが洗浄室に向かい、ライナーは一人で大丈夫だと言うので学校へ行く準備の為に部屋へ戻った。
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