最果て蕎麦
サービスエリアで食べる蕎麦は何故こんなにも沁みるのだろう。
海老天にしようか、山菜でもいいな。悩んでいると隣で彼が両方乗せればいいじゃんなんて言ってラーメンを頼んでいる。
分かってないなぁ。私は山菜蕎麦を注文して窓際のテーブルにつく。
この後の道はどう?
答えの分かりきった質問をすると彼はチャーシューを頬張りながら眉をひそめた。
「何もないよ。ここが最後だって言ったろ」
真っ直ぐに続く高速道路はそのまま最果てまで行くと何もない空間に辿り着く。ただひっそりと、道路幅の黒い空間が空までそびえ立っている。
最果てに行って帰ってきた者はいない。
ここはその空間の目前にあるサービスエリアだ。
ぽつりぽつりとちらつく人影は、皆何を思ってここに来たのだろう。
彼が戻るか? なんて聞いてくるものだから、無視をして蕎麦をすする。沁みるなぁ。窓から見える最果ての先を考えると、醤油色のつゆにぽたりとひとつ涙が落ちた。
人生最期の食事なんてものはきっとこうやってなんてことなく済んでしまうのだろう。
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